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イエロ駅  作者: 淡雪
5/6

4日目 -2-

 



「――もしもし。(ほう)ちゃん」


七海(ななみ)。三つ目の駅に着いたんだな?』


「うん」


『黒い影。ちゃんと見たか?』


「うん」


『誰だった?』


「……………」


『七海』


「……………」


『七海』


(ほう)ちゃん。たぶん私、わかっちゃった」


『そうか』


「うん」


『降りられるか?』


「うん。大丈夫。ちゃんと見なかったから、真っ黒かったんだね」


『……』


(ほう)ちゃん」


『うん』


(ほう)ちゃん」


『……うん』


「降りたよ」


『うん。駅名は、何になってる?』


「えっとね……これ何て読むのかな」


『知らない漢字?』


「ううん。でも、このまま読んだら〝すてろ〟になるんだよね」


『すてろ?』


「うん。〝捨てる〟に道路の〝路〟で、何て読むか知ってる?」


『ああ、それはたぶん……捨路(いえろ)駅だ』


「イエロ?」


『うん』


「どういう意味?」


『そのままの意味だよ。様々な痛みを、捨てていく路』


「痛みを、捨てていく……」


『七海』


「うん?」


『乗客、降りてるか?』


「うん。降りない人もいるけど」


『どこに向かってる?』


「ん~……端は見えないけど、ホームの左側に列が出来てる」


『七海はどうする? 降りるか? それとももう一度乗る?』


「そうだね……降りなきゃ、だね」


『忘れ物はないか?』


「うん、たぶん、ない。――(ほう)ちゃん」


『うん』


「なんだか大切なものを忘れちゃった気がするんだ」


『そうか』


「でも、(ほう)ちゃんがいるし」


『うん』


「それから……えっと……」


『……………』


「……………」


『七海』


「うん」


『列に並んで』


「列に……そっか。うん、そうだね」


『心配するな』


「してないよ。だって(ほう)ちゃんがいてくれるじゃない」


『ああ』


「えっと……忘れちゃったけど、任せたよ?」


『ああ。任しとけ』


「じゃあ行ってくる」


『ああ。――いってこい。俺もそのうちいくから』


「あはは。急がないでね」


『勿論』


「うん。じゃあいいや」


『……………』


「……………」


『……七海?』


 ―――――プツリ。ツー。ツー。ツー。ツー。




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