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イエロ駅  作者: 淡雪
3/6

3日目




「あ、もしもし? (ほう)ちゃん?」


七海(ななみ)


「うん。今日もやっぱり座れなかった~」


『お疲れ』


「早く帰って(ほう)ちゃんのご飯食べたい」


『七海は下手っぴだもんな』


「失礼な。卵くらいなら焼けるんだから」


『スクランブルエッグな』


「卵焼きは卵焼きでしょうが」


『菜箸でぐちゃぐちゃにしたやつな』


「スクランブルエッグですぅぅぅ!」


『今日はハンバーグだよ、エリンギの入った』


「それ絶対美味しいやつぅぅぅ!」


『デミグラスソース切れてたから、ケチャップとウスターソースを混ぜたやつになるけど』


「全然いいよ! あ~お腹空いてきた~。さっきまで空腹感なかったのにぃ。おのれ(ほう)ちゃんめ!」


『はいはい、悪かったね。それで? 今日は会えた?』


「え? 誰に?」


『いつも乗り合わせる女の人?』


「え? 誰だっけ?」


『ほら、黒い影を見たけど気にしたら駄目って言った人』


「んん? え~と……」


『七海?』


「う~ん………………あっ! ああ、はいはい! ええと、なんだっけ……あ、駄目だ。名前をまったく思い出せない。ヤバい、私まだ二十代なのに、人の名前思い出せないとかヤバくない?」


『老化現象かな』


「ムカつく。それで、彼女がどうかしたの?」


『いや、だから会えたの?って』


「ううん。昨日も会えなかったし、やっぱり有休取ってるんじゃない? 旅行行ってるのかも。羨ましい」


『そういえば唯が生まれてから一度も遠出してないもんな』


「え?」


『え?』


「ああ……うん、そうだね」


『七海?』


「あっ、二つ目の駅。今日はいない」


『最初の駅と一つ目も?』


「うん。どっちもいなかった」


『ふ~ん……なんか、ずれてるね』


「うん?」


『駅を毎日渡り歩いてるみたいに』


「確かに……」


『他の乗客は相変わらず?』


「興味ない!って感じだね」


『窓の外は何か見える?』


「外? 外は……真っ暗で何も見えないね。まあ夜だしね」


『そりゃそうだ。乗客数は昨日より減った?』


「うん、確実に減ってる。なのに何で今日も私は座れないのか」


『若いんだから、文句言わない』


「言いたくもなるよ~。立ち仕事の後くらいは座ってたいぃぃぃ」


『まあそうだろうね。もうちょっとだ、頑張れ』


「がんばる……………あ、三つ目」


『いたんだな?』


「うん。いる」




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