魔王の弱点
魔王には聖剣エクスカリバーでしか傷がつけられない。
それは、この世界の常識だ。
しかし、今代の魔王デスメタルは今まさに苦しんでいた。
勇者がエクスカリバーを手に入れる前に、自らの手元に入れたのだから彼を苦しめるものなど
ないはずだった。
しかし、現に魔王は苦しんでいた。
なぜか、それは…
「…はっくしょーい!」
魔王は風邪をひいていた。
魔王とて生物だ。風邪くらいひく。いかに生態系の強者といえ病には勝てない。
これまでの魔王の死因は勇者に倒されるよりも風邪をこじらせて肺炎になって死ぬことの方が多いくらいだった。
魔王の身体には聖剣以外では傷がつけられないが、それゆえに注射針も通らないのだ。
故に注射針もとおらず点滴も出来ない。
また、魔王はあらゆる体制も高いため薬も効きにくいのだ
こればかりは魔王自身もどうしようもないことだった。自己免疫に頼るしかないのが現実だ。
決して虚弱ではないが、病への対抗手段が魔王にはないのだ。
「寒い…頭も痛い……死が近づいているのか。私はこのまま死ぬのだな…。」
魔王デスメタルは冗談で言っていない。
「無理をするからです。エクスカリバーを掘り起こして担いで帰ってくる魔王など今までもおりませんでした。疲れて免疫も落ちたのでしょう。今はただの風邪です。無理をなさらず休まれますよう…」