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久しぶりの更新です。

「ーーおお、そうだ。サクヤ、お主オーガを倒したのだろう」


 いきなりの話題転換に朔夜は頭を上げ、リュウゲンに視線を向けた。なぜかリュウゲンの目は爛々と輝き、その様子はどこか前世の師匠を思い起こさせる。


「どのように倒したのか教えてくれぬか。お主は武器を持っておらぬようだし、気になってな。やはり魔法かの? いや、武器を持っていなくても体術があるか。ふむ、しかしお主の体格では……」


 朔夜を凝視したままぶつぶつ呟くリュウゲンの姿は、はっきりいって怖かった。朔夜は、頬をわずかにひきつらせながら、自分がどうやってオーガを倒したのか説明する。


 使用したのは鬼闘術·体と魔であり、簡単に言えば体術と術である。ただそれが鬼殲滅用に開発された特殊なものというだけなのだ。


 そしてオーガの首をはね飛ばした操布(そうふ)術である。基本は鞭術と同じで、得物が帯やひれといった布という違いしかない。


「ほぉほぉ、鬼闘術。それは魔法とはどう違うのだ」


「どう、と言われても俺にはわからないな。ただ鬼闘術は自身の持つ闘気を使って発動させるものということしか言えない」


「闘気? 魔力ではないのか。ーーまぁ、いい、儂が気になるのは、オーガの首をはねた操布術なるものだな。帯でオーガの首が斬れるとはまことなのか」


 術の話をする時より食いぎみなリュウゲンの様子を見て朔夜は、あ、これ脳筋の類いだと本能的に理解した。こういう輩には実際見せたほうが早いと経験的に知っている朔夜は、ポケットからハンカチを取り出す。


「これはいまはただの布だ。当然、何も切れないし簡単に破れる。だが、これを闘気で覆う」


 朔夜は肉体の延長線上で、ハンカチを闘気で覆った。見た目は何も変化しない為、リュウゲンにはどう変わっているのかわからない。


「リュウゲンさん、刃物持ってないか? ナイフでもハサミでもいい」


「小刀でいいか?」


 懐から小刀を取り出し、リュウゲンは朔夜に見せる。朔夜は頷き、ハンカチの両端を持ち目の前で広げた。


「それで布の中心を突き刺しーー」


 ガキンッ


 最後まで言わない内に手に衝撃が伝わる。視線を横にずらすと小刀の切っ先がハンカチに接触しているのが見えた。


 あまりの早業に内心、冷や汗をかいているとリュウゲンの驚いたような声が聞こえてくる。


「なんとっ、小刀が刺さらないとはっ、見た目は布なのに」


 まじまじとハンカチを見てくるリュウゲンに、朔夜は気をとり直し次の行動に移った。部屋の中を見回し、壁に荒縄がかかっているのを発見する。


「これを持ってもらっていいか」


 リュウゲンに荒縄を渡し、目の前でぴんと張ってもらう。朔夜は自然な動作でハンカチを荒縄の上へと振りおろした。


 なんの抵抗もなく切れる荒縄。布が荒縄を切るという非常識な現象を起こした朔夜は平然としている。


「これが闘気で覆った布の威力だ。攻撃にも防御にも使える。普段は首になど巻いておけば、剣など持っていなくても攻撃手段は十分だ」


「なるほど、なるほど、これならばオーガの首を斬れるな。ーーよし、サクヤ、儂と手合わせをするぞ」


「は?」


 すべての説明を終えた朔夜がほっとしたのも束の間、いかにも楽しげなリュウゲンが、外を指し示して出て行こうとする。まさか説明から手合わせの流れになるとは思わなかった朔夜は、マジかと顔を手で覆った。


 現代っ子である朔夜にとって、山を駆け巡りオーガ相手に戦っただけで、疲労感は相当なものになっていた。正直、もう動きたくないと思う。だが、目の前にいるのは脳筋だ。果たして話が通じるだろうか。


 朔夜が動くのを躊躇っていると、天からの助けがきた。



「ちょっと、じい様。いまからご飯なんだけど、どこに行こうとしているのよ」



 ベルメルだった。両手に持った盆には料理がのっており、リュウゲンをジロリと睨んでいる。


「ベルメルか、ちょっとサクヤと手合わせを……」


「馬鹿なこといってないで、座卓出してくれない」


「いや、だから手合わせ……」


「座卓」


「ーーーはい」


 ベルメルの威圧に負け、リュウゲンはすごすごと部屋の隅に置いてある座卓を取りにいった。なんとなくその背中が煤けて見えるのは、気のせいではないだろう。


 リュウゲンが持ってきた座卓を部屋の中央に置き、そこにベルメルが料理を並べていった。すべてを並べ終わり、朔夜を除く二人は各々の場に座る。


「ほら、サクヤも座って。ーーでは、準備もできたし、いただきましょ」


 ベルメルの言葉を合図に賑やかな食事が始まった。

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