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プロローグ1

初投稿です。わかないことも多々ありますが、よろしくお願いします。

「えーと、買うものは牛乳、チーズ、パン粉……」


 買い物のメモを見ながらスーパーの店内を歩き回る少年が一人。


 少年の名は桐生朔夜(きりゅうさくや)。自宅近くの高校に通うごく普通の少年だ。しかしそこに今世のとつく。


 実は朔夜には前世の記憶があった。前世での朔夜は退鬼師という鬼を退治する事を生業としていた人物だった。


 科学の発達したこの時代、鬼など架空の生き物のように感じられるが、朔夜の前世が生きた時代には、確かに存在していたのだ。


 前世の記憶の中には、退鬼師としての知識も当然含まれており、そこには鬼闘術(きとうじゅつ)という鬼を滅する為に編み出された術もあった。鬼闘術は特殊な印を結び、闘気という鬼を滅する力を用いて発動させる術である。闘気は退鬼師誰もが持っている力ではあったが、得るには師から弟子への力の譲渡しか方法がなかった。


 だから記憶があろうとも発動させる事はできない。朔夜はそう思っていた。思ってはいたのだが、試してしまった。純粋なる好奇心故に。


 その結果、できてしまった。


 前世の自分と同じように、なんの違和感もなく発動した術に朔夜は呆気にとられた。しばし、思考停止していた朔夜だったが、その後は普通に生活をしていた。


 興味本位で術を発動したが、それができたからといって現代を生きる朔夜には、なんの意味もなかった。いまは倒すべき鬼も存在せず、退鬼師の力は必要のないものになってしまったからだ。


 ただ退鬼師時代に培った体術は、現代でも何かと応用がきくので体力づくりだけはしている朔夜であった。


「これで頼まれたものは全部だな」


 メモに書かれたものとカゴに入っているものが一致するか確認した朔夜は、レジへと並んだ。精算を済ませ、スーパーの外に出ると暖かな陽気が降り注ぎ、青空が視界に入ってくる。


「良い天気だな、帰ったら昼寝しよう」


 欠伸を噛み殺し、朔夜は道をぽてぽてと歩く。足下は見ておらず、目は眠そうに細められている。


 だから、だったのだろう。


「ん?」


 次の一歩を踏み出した朔夜だったが、足裏に感じるはずだったコンクリートの硬い感触がないことに疑問の声を上げた。


 そして、感じる落下する時の浮遊感。そして、思い出す。自分の特技というか体質をーー。


「やばっ、また(··)落ちた」


 朔夜の体はマンホールの中へと落ちていく。遠ざかる外の光に、朔夜の意識は闇に沈んだ。




「ーーうっ、いたた……」


 意識が覚醒した瞬間、背中に走った痛みに朔夜は呻いた。背中を庇いながらゆっくりと起き上がるとはらはらと葉っぱが落ちる。


「しばらくは落ちなかったから油断していた。まさかマンホールの蓋が開いてるなんて……」


 朔夜の体質、それは落ちやすいということ。正直これを体質といっていいのかわからないが、とにかく落ちるのだ。


 近所の子供が作った落とし穴、マンホール。階段から落ちるのはしょっちゅうだし、川にも何度も落ちている。


 それは前世から続いていることで、もう呪いといってもいいのかもしれない。


「それにしても下水道にしてはずいぶんと明るい……」


 そこで初めて朔夜は周りにを見た。と同時に固まる。


 周囲は緑に満ちあふれていた。どこかの森の中だと言われれば納得してしまいそうな光景だ。


「…いつから下水道は森に変化したんだ?」


 まったく意味がわからなかった。自分は確かにマンホールに落ち、その先は下水道になるはずだった。なのに、どんな手違いがあれば落ちる先が森になるのか。


「とりあえず、歩くか」


 前世の記憶があるせいか、比較的不思議なことに慣れている朔夜は、すぐに自分を取り戻し歩き始めた。熊とか出たら嫌だな、と思いつつ歩く朔夜の考えが現実になるまであと数分ーー。

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