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逃げると言っても表のドアから堂々と出てしまっては意味は無い。
しかし何も抵抗しないのも、それはそれでどうかと思い、雀の涙程度の抵抗を実行することにした。
玄関近くにある大小様々な家具を玄関のドアに立て掛けておいた。
まあ、これでなんとか時間を稼ぐことぐらいは出来ると思う。
しかし、近衛兵達はこんな簡易的な壁なんていとも簡単に崩してくるに違いない。
丸損になって終わりそうになりそうなのが目に見えるが、それでも今の状況では藁どころか蜘蛛の糸をも掴みたくなるぐらいだ。
「ふうぅ、どうすればいいのやら。」
「な、なんの………ことですか?」
恐る恐る聞いてきたサミュアを尻目に私は1人、考え事に耽ってしまう。
逃げ道は大きく分けて3つあり、1つ目は裏口だ。
この街、というかここら辺に限定されてしまうが結構な具合で入り組んでいて、裏路地から大通りに出て行こうとする大体迷う。
ただ、ここから逃げるのは良案とは言い難い。
確かにこの裏通りから大通りに逃げる時には迷うのだが、しかし所詮ここは1つの街の1つの裏路地にしか過ぎず迷路という訳では無いのだ。
それに今、相手取っているのはこの国の治安と王を守っている守衛兵であり、この街を知り尽くす、いわばプロフェッショナルなのである。
いくらなんでも相手が悪すぎるから却下だな。
そして2つ目の候補は2階の窓から隣の家の屋根にどんどん乗り移って行く方法だ。
しかしこれも候補として出してみたものの、実行するには至りそうに無い。
勿論それには理由があり、まあ問題は私ではなくサミュアにあるからで。
まだそうと決まったわけじゃないけど、多分あの体調とかを見る限りサミュアは運動はできる方じゃないはず。
偏見で決めるのは自分でも些か気に入らないのだが、そうとも言っていられない。
ここは結構家が密集してる方だけど、所々間があるし、大きな間もある。
屋根から落ちて捕まるか、それか追いつかれて捕まるかのどちらかだろう。
これで1つ目も2つ目も無謀なのが分かったのだが………
3つ目の候補は絶対に選びたくはなかったのだが……………んー。
しかしここでこうやって迷っているうちにも近衛兵達は接近してきているのだ。
どうこう言ってられないこの状況じゃもう、それを選ぶしかないのだ。
肺の中にある酸素を全て一新するぐらい大きく息をついてから私は、
「サミュア!逃げるよ!」
と、サミュアの手を引いてから走って私の自室へと走り込んだ。
サミュアは突然手を引かれたからか、体に力が入ってないのが分かり引っ張られているといった感じだった。
自室に入ってからドアをゆっくりと閉め、なるべく音をたてないようにして鍵をかけてからドアの近くにある家具をドアの前に移動させた。
それほど走ってもないのに、いや走っているとはいえないしどちらかというとただの駆け足で、しかしそれだけでサミュアは少し息が乱れていた。
それは長い奴隷生活によるものなのか、それとも元々の少女の体力が低いのか、どちらも当てはまりそうな感じはするが……
私はサミュアの背中を優しくさすり、少しでも落ち着くように促した。
少しずつドアを叩く音が大きくなっていき、それと同時に家具が所々に飛んでいく音が聞こえてくる。
時間の迫りはもう目と鼻の先のようだ。
私は自室に入ってから真正面にある机と椅子の近くでしゃがんで床を見た。
肉眼で見ることは困難であり手の感覚ではすぐに分かるぐらいの、ずれのある床板の押すとパカッと床が開いた。
サミュアを手招きし呼び寄せ先に入るように促す。
恐怖で怯えているのか、手が震えていた。
「大丈夫、私が近くに居るよ。」
サミュアの手の震えは軽減したが、怯えが取れたわけでもなさそうだった。
サミュアが入った後、続いて私も地下に入っていった。
床板を元に戻し、私の身長プラスアルファ程度の高さの地下は1つの方向にしか進めない。
地下は、私の家の床板の部分以外は洞窟のようになっていて明かりを灯さないと手を伸ばした先でさえ見えなかった。
しかし、私がそのまま進もうとしてもサミュアは一向に進もうとはしなかった。
暗闇に怯えているのは一目瞭然でそのまま私だけ進む訳にもいかないので、
「……………っ!」
サミュアの左手を右手で優しく握ってからゆっくりと進み始めた。
直ぐに目は慣れて、サミュアの方を見ると少しだけ頬が紅くなっていたが、何故赤いのか分かる事は無かった。
この小説を読んでいただきありがとうございました。
更新が少しどころかかなり遅れてしまいすいませんm(_ _)m
少しだけ言い訳をさせてください、お願いします!
実は、危険物取扱者乙4種の勉強をしていて全く執筆に手をつけられませんでした。
知らない方の為に簡単に説明すると、ガソリンスタンドでガソリンを扱ったりするのに必要な免許です。
そして、もう何週間かは更新が遅れてしまうと思いますが、どうかよろしくお願いします。