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私の過去を知っても私に向けて軽蔑をする訳でもなく、むしろ私に優しくしてくれたのは嬉しく思えた。
彼女はローラと言った。
彼女と初めて会ったのは街の隅っこにある小さなカフェだった。
私がきっかけだったのかローラがきっかけだったのか、それもよく分からなかった。
もしかしたら神様が私達を近づけてくれたのかも。とは思わないがそれでもローラといる時間は楽しいものだった。
後からカフェに来た方が、先にカフェにいた方に話しかけていて例え私がどちらだろうとそれは同じだった。
それからまもなくして、私達は結婚した。
周りからはおしどり夫婦なんてよく言われていた。
それは私達も実感していたし、どんな時でも仲が良かった。
ある日、私達は喧嘩をしてかなり争いあった。
しかし、次の日には互いに謝りあって前の日の喧嘩が無かったかのように解決した。
それだけ私達は、意気投合していて相性が良くて反りの合う仲だったのだ。
互いに互いを愛し、お互いが正直でいられて、お互いが楽しんでいた。
こんな関係が非日常ではなく日常になっていって、この関係がずっと続けばいい。そんなふうに思っていた。
しかし、それは思うだけで終わってしまった。
彼女は突然私の前からいなくなってしまった。
それに気付いたのはある手紙が家に届いていたからだ。
そこにはこう一言書かれていた。
私はもう行きます
これがどういう意味かは分からなかったが、でも私の前から姿を消すという事だけは分かった。
私は悲しみに体を沈める前に、なぜいなくなってしまったかを調べる事にした。
ローラの友達なり家族なり関係のある人を端から端まで、朝から晩まで聞き込みをして分かった事がある。
それは何も分からなかったという事だ。
分かった事が、何も分からない事というのは、意味が分からないと思われるかもしれない。
しかし、これは私が何も得ることができなかったという事なのだ。
私はショックで三日三晩部屋に籠もりご飯も食べず水も飲まず、やっと部屋から出て鏡を見たときは表情はおろか感情が体から抜け出してしまったのが分かった。
私はその日からローラの事は極力考えないように過ごすことにした、だから彼女を作ることは無かったし自分の友達や知り合いに女性はほとんどいない。
居ない訳ではないが居るのは一人、二人程度だけだ。
そこから少しずついつも通りの生活に戻っていった。
ローラの居ない生活に―――――