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ウルトラガジェット・ファンタジア ~異世界空想科学兵器英雄譚~  作者: 王様もしくは仁家
地下迷宮の死霊と復活の古代魔法兵器・3
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第百三十七話 全範囲皆殺し魔法(腐食付与)を撃ち破れ!!!・3

 俺のビッグバンタンクは、ウラノスの眼前百メートル地点に着地した。

 エマリィを乗せた黄金聖竜は、そのまま距離を保ちつつ上空を旋回している。

 そして俺の両手で既に発射態勢を整えていた最強ガトリングガン・ヘカトンケイルがダブルで火を噴いた。


BRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!! 

BRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!! 


 11.4ミリナノマテリアル弾がウラノスに襲い掛かる。

 巨大な腐った肉団子のような図体と、表面をびっしりと埋め尽くしている無数の単眼と口。

 ナノマテリアル弾が単眼を潰し、或いは口腔の牙を叩き折り、ぶよぶよの皮膚を貫き引き裂いていく。

 一丁当たり一秒間に約三十三発、全弾五百発を僅か十五秒あまりで撃ち尽くした時には、ウラノスの巨体は蜂の巣ように無数の穴が穿たれてボロボロに変わり果てていた。


 しかし案の定傷口は神速治癒によってみるみるうちに塞がっていく。

 そして怒りに打ち震えるように全身がぶるりと波打つと、全身の口腔が一斉に牙を剥いて叫んだ。


ヴオオオオオオオヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!


 ウラノスの即死魔法だ。

 重量級のビッグバンタンクでも、さすがにこれだけ至近距離だと、声の圧力に押されてズルズルと後ろへ押し戻されていく。

 腐食している大地が更に茶色と黒色の斑に変色して、腐食が更に進行する。

 ビッグバンタンクの足元にも一気に腐食の波が押し寄せて、シールドモニターのHPバーが急速に減少していった。


 すると透かさず上空から暖かい波動が降り注いできて、HPバーが回復すると同時に腐食の状態異常が解消された。

 黄金聖竜は上空でホバリングしていて、その羽ばたきによって生じる風には体力回復と状態異常回復が含まれているらしい。


 そしてその背中で待機しているエマリィも、身を乗り出すようにして片手をこちらに向けているのを見ると、聖竜の羽ばたきはエマリィの治癒魔法も運んでくれているのだろうか。

 どちらにせよ、その甲斐甲斐しく献身的な小さな大天使の姿を見ていると、自然と胸の奥底から熱い奔流が漲って来る。


「こっちには守護天使が二人も付いてるんだからな……っ! 絶対に負ける訳にはいかないっての!」


 俺はヘカトンケイルを投げ捨て、両手にベルセルク・スクリームと背中に多腕支援射撃(アラクネ)システムを装備。

 更に前方へ躍り出ると、至近距離から一気に巨大肉団子を削りにかかった。


ウウウワギャン! ウウウワギャン! ウウウワギャン! ウウウワギャン!

ウウウワギャン! ウウウワギャン! ウウウワギャン! ウウウワギャン!

ズダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!


 両手の三メートル近い黒光りしている砲身からは、次々と特殊キャニスター弾が撃ち出されて、飛び散ったナノマテリアル製鉄塊が、着弾範囲を根こそぎ抉り取っていく。

 そして背中の多腕支援射撃(アラクネ)システムの六つのバルカン砲が、致命傷までは行かないまでもウラノスの全身にくまなく小さな血の花を咲かせ続けた。

 更に、


――こちらライラちゃん! 戦況をモニターしていましたが、ウラノス(そいつ)はただ者じゃなさそうなので、ライラちゃんの独断で五番(ナンバーファイブ)以外の全ナンバーズをそちらに回しました! 航空支援も只今より開始します! タイガさん、巻き込まれないでくださいね!


 と、ライラの気の利いた無線が飛んできた。


「――ライラ!? さすがオペ子だな、痒いところにしっかり手が届く。OK、俺の事は気にしなくていい。こっちには最強の後方支援が付いているからな! 思いきりやってくれっ!」


 直後、上空を二機のスマグラーアルカトラズが駆け抜けていくと、ウラノスの胴体上部で無数のナパーム弾が炸裂して火柱が次々に立ち上がった。

 さらに間髪入れずに、今度はグランドホーネットから飛んで来たミサイル群が一斉に着弾。

 目の前が激しい閃光に包まれて、ウラノスの巨体が爆炎に包まれた。

 そして俺の背後には、いつの間にか大小様々なタイプの戦術支援(タクティカルサポート)モジュール九機が集合していて、装備している火器で一斉にウラノスを攻撃し始めるではないか。


 この空想科学兵器群(ウルトラガジェット)の全兵力を投入した怒涛の攻勢に、俺の血も沸騰しそうな程に滾る。

 弾倉が空になったベルセルク・スクリームを放り出して、ヘカトンケイルを二丁持ち(トゥーハンド)で再装備すると、更に前方へ駆けだして引き金を引いた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 ウラノスの目と鼻の先で、最強にして最恐のガトリングガン・ヘカトンケイルが火を噴く。


BRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!

BRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!


 超速の弾幕は神速治癒の再生スピードを遥かに上回っていて、ウラノスの体積を確実に削り取っていく。

 更にグランドホーネットとスマグラーアルカトラズとナンバーズの支援攻撃が間断なく繰り広げられているので、明らかにウラノスは肉体の修復に追われて防戦一方に追い込まれていた。


「……行けるっ! このまま一気に追い込んでやる!」


 再度ベルセルク・スクリームに換装。

 引き金を絞る両手の人差し指にもつい力がこもる。

 そしてここが勝負所と思ったのは黄金聖竜も同じだったようで、ウラノスの上空に数十個の魔方陣が浮かび上がったかと思えば、そこから巨大な火球や稲光が放出されてウラノスに襲い掛かった。


「――まだそんな力が残ってるとか……本当に怪物かよ」


 俺は思わず苦笑してしまう。

 何せ黄金聖竜は相変わらず俺の後方上空でホバリングしながら、暖かい波動を絶えず送り続けていたのだ。

 治癒と状態異常回復の後方支援をしながら、同時に攻撃魔法を複数展開してみせているのだ。

 攻撃は任せてほしいと頼んだ手前、かっこ悪いことこの上ない。


「それでもウラノスを倒したらマイケルベイコールを一緒にしてもらうけどね――!」


 俺は気を取り直して攻撃に集中する。

 しかし――

 ウラノスの巨体がぐわんと大きく波打ったかと思えば、体の表面に無数に散らばっていた口腔がぞぞぞっと移動を開始した。

 そして瞬く間に前面に集結して一つの巨大な口腔へと変化するではないか。


「は――!?」


 背筋をもぞりと嫌な予感が駆け抜けた。

 刹那――


ヴオオオオオオオォォォォォォォオオオオオオエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーッッッ!!!


 これまでとは数段階強い叫喚が迸った。

 あろうことかウラノスは、口腔を一箇所に集約することで即死魔法を全方位から指向性へと切り替えたらしい。

 その威力は絶大だった。

 叫声が引き起こす波動は強力で、俺やナンバーズの体は強風に煽られた木の葉のように、後方へと吹き飛ばされて地面を転がった。

 更に波動はホバリングしていた黄金聖竜の巨体すらも吹き飛ばし、波動の直撃を受け止めた王都の城壁は共振を起こして音を立てて瓦解してしまう程だった。


「嘘だろ、そんな……!」


 あと一歩のところまで追い込めたと思ったのに、またしても状況が一発でひっくり返されてしまった。

 しかも今回は黄金聖竜の加勢があったにも関わらずだ。


「こ、こんな奴をどうやって倒せって言うんだよ……」


 頭が真っ白になってしまい、次の一手が浮かばない。

 目の前ではウラノスが相変わらず耳障りな叫声を上げながら前進を開始していたが、この化け物を止める術が残っていない。

 俺は後退して崩壊した城壁を乗り越えた。


「くそ、こいつを王都に入れる訳には……しかしどうすりゃいい……!?」


 俺は成す術がなく、ウラノスが城壁の瓦礫を乗り越えて王都へ侵入するのを黙って見届けるしか出来なかった。


ヴオオオオオオオォォォォォォォオオオオオオエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーッッッ!!!


 更に叫喚が響き渡った。

 ぞわわわっと腐食が王都の一部を染め上げた。

 ビッグバンタンクの装甲も黒と茶の斑に変色していく。

 更に意識が一瞬だけ遠のいていく感覚に襲われて、そこで初めて俺は異常に気が付いた。

 見上げると、黄金聖竜は羽ばたきが引き起こす波動を、俺だけでなく王都全体に届けるように羽ばたいているので、こちらの防御が手薄になっていたのだ。


「くそ、このままじゃ流石にまずい。俺も一旦黄金聖竜の背中へ避難すべきか……」


 唇から血が出そうな程の悔しさと無念を噛み締めつつ、俺は更にウラノスから距離を取ろうとすると、ヘルメットのスピーカーから怒声が流れて来た。


――圧倒的火力が絶対正義のジャスティス防衛隊が火力負けするなんて、随分無様な戦い方をしてるじゃないの!


 そして突然俺の横に舞い降りてくる深紅色(クリムゾンレッド)の影――

 それはミナセのビッグバンタンクだったのだが、俺が言葉を失っていたのには理由がある。

 何故ならその深紅のビッグバンタンクの上半身は、馬の首の部分から生えていたからだ。

 しかも普通の馬ではない。

 ビッグバンタンクと同じ深紅色の装甲に包まれた、メカニカルな装いの馬なのだ。

 これを見て驚くなと言う方が無理に決まっている。


「ミ、ミナセなのか……!? その下半身は一体!? なんでそんなケンタウロスみたいな姿になってるの!?」


 するとミナセはフェイスガードを全開にして、満面の笑みで一言。


「だって私、精霊だから――」


「い、いや、答えになってないし――!」


「それよりも今は目の前の敵を倒すのが先でしょ! いい? 助かった街の人たちの大半は今、中央の迷宮(セントラルダンジョン)に避難していて、ハティと姫王子様たちが見てくれているの! でもこの化け物にこれ以上街の中心に近付かれたら全滅してしまうわよ! だからこいつはここで食い止めなきゃ駄目なの。タイガ、私とあなたで食い止めるの! やれる!?」


 と、ミナセは凛とした表情で、俺の瞳の奥を覗き込むように問い掛けて来た。

 そう聞かれたことで少しばかりプライドが傷付けられた思いもしたが、それよりも彼女の復活に対する喜びと、逞しい姿に勇気付けられる方が大きかった。


「――誰に言ってんだよ。そっちこそ高レベル武器が使えないんだから足を引っ張るなよ」


「ふふん、言っとけ。精霊ミナセの底力を見て腰を抜かさないでよ? さあ、ショータイムの始まりよ!」


 ミナセの言葉を合図に、馬の胴体がガシャンガシャンと音を立てたかと思えば、脇腹から二つのスピーカーが飛び出してくるではないか。

 そしてその樽のような形をしたスピーカーから「真っ赤な魂」が大音量で鳴り響くと、ウラノスの叫声を圧倒しはじめた――

次回更新は金曜日の夜頃となります。

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よろしくお願いします。

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