表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠のAI  作者: マスカット
1/1

彼との出会い、そして七夕

あの日、私たちは誓い合った。そして、それを支えに今まで生きてきた。

それは、離れ離れになっても変わることはない。

たとえ、彼がこの世からいなくなったとしても。


桜が舞い散る季節、私は彼と出会った。

彼は成績優秀、努力家だけれども天才肌で、それでいて私みたいな人にも優しく、決してバカにするようなそぶりもなく接してくれた。


そんな彼は私にとってあこがれであり、目標だった。「彼と一緒にいろいろな景色を見てみたい。彼と一緒にいろいろなことをしていきたい。そして、かなうならば彼の隣で彼を支えていきたい。」

今から思えば、もうそれはすでに恋の始まりだったのかもしれない。


七夕のちょっと前、仲のいいみんなで集まっていた時。もちろん彼はその中にいたが・・・

その時、七夕前ということもあって、私たちは短冊に願いを書いていた。

私はいったい何を書いていたのだろうか。確か、「大学生活が充実したものになりますように」だとか、「家族が健康かつ、いつまでも元気に過ごせますように」だとかそんな無難なことだった気がする。

そんな中、一人窓の外を何か寂しく見ている彼がいた。

もちろん、私がそんな彼を見逃すはずがない。放っておけばよかったかもしれない。でも、私はどこか悲しそうにしている彼を放っておけなかった。

「どうかしたの?」

もっとうまい言葉があったかもしれない。でも、彼と違って頭のいいわけじゃない私が絞り出したのは、そんな簡単な一言だった。

「ん?ちょっとね。」

彼は少し寂しそうな笑いを浮かべた後、何事もなかったかのようにみんなのもとへ行った。


そしてやってきた七夕の日、せっかくなのでササを飾り付けるついでに、天体観測をしようという話になった。

みんなで公園に寝転んで、夜空を見上げる。

周りの人から見たら、大学生の男女数人が講演で寝ている、ただの奇妙な光景に映ったはずだ。

「きれいな天の川だね…」

みんなして、そんな感想を口々に口にする。

そんな時、視界の端に映った彼の頬に、一筋の光が見えた気がした。


数時間後、解散の時に彼を呼び止めたのはなぜだろう。きっと、その光が気になったからかもしれない。

「ねえ。」

帰ろうとしていた彼が振り返る。

「さっき、星空見ながら泣いていなかった?」

どうしてそんな直接的に聞いてしまったのだろう。もっと言葉を濁せば、いや、オブラートに包めばよかったのに。そんなことを思いながら、彼の言葉を待った。

「天の川って、銀河系の中心を見てるようなもんだろ?正面じっと見ってられなくて、現実から目をそらしてた。」

どこまで本気なんだかわからない笑顔で、そんなことを彼は言う。

「目をそらしたくなるようなことでもあったの?」

「彦星と織姫はいいよなぁ…年に一度と言えども出会うことができて。」

「…え?」

突然のそんなセリフに、私の脳内は混乱してくる。

「まあ、あいつらはカップルだけどさ。もっとつながり深いのに、もう二度と会えなくなることもあるのにな…」

彼の声がどんどん儚くなってくる。

「俺はもう、家族に会えないんだ。父親は離婚した後消息不明、兄弟もなし、親族もなし、母親は…大学入った直後に、事故死した。」

「母親を助けたいと思って、この大学入ったのに、そんなすぐにいなくなるなんて、嘘みたいだろ。」

彼が吐き出す言葉は、私の同意を、理解を求めていない。そんな雰囲気だった。

「俺、この大学で、何したらいいんだろうな…」

それは、彼が初めて私に見せた、弱音だったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ