初めましての次は
「レージはずっと鏡の中にいるの?」
「いや、僕は君の中にいる。君が姿を見る時は媒介として映すものが必要みたいだ」
「ばいかい?」
「ルチアと僕がこうやってお話するのを手伝ってくれるもののこと。ルチアが自分の顔を見たいと思ったら鏡や水面が必要でしょう?」
「う、ん…レージのお話難しい……」
「大丈夫、そのうち分かるようになるよ」
そうして同じ顔で朗らかに笑ってみせるが、そこには何処か悪戯っ子のような楽しげな雰囲気がある。それに気がついてルチアは頬を膨らませた。
「レージ、いじわる」
「はいはい、ごめんね」
全く悪びれない様子で、態とらしく肩をすくめてみせる。次いで、そういえばといった雰囲気で話題を切り替えた。
「ルチア、僕は今起きたばかりで何も分からないんだ」
教えてくれない?玲司が言うと、ルチアは大きな瞳を一層キラキラと輝かせた。
この館でルチアはもちろん最年少、その為誰かに頼られたり教えたりといったことは初めてだったのだ。
「何でも教えてあげる!何が知りたい?」
「じゃあまずはこの国と君の家のことが知りたいな」
最初胸を張って尋ねたルチアは玲司の言葉を聞くとしょんぼりと項垂れた。
「……わたし、お外のことはあんまり教えてもらえないの」
「そっかぁ…じゃあ、ルチアのことを教えてよ」
「……っうん!!」
勢いよく面を上げ、輝きを取り戻したルチアが好きなものは嫌いなものは今日の朝食のメニューはと話し始める。玲司は眩しそうに双眸を眇めて相槌を打ち、時折楽しそうに笑い合う。
そんな和やかな語らいはメリッサの足音が聞こえてくるまで続いていた。