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産声
短いです。
ぎゃんぎゃんと館中に響き渡る産声。
母たる女性は安堵の表情で柔らかな枕に身を委ね、侍女達は産婆の指示に従い後産の為に慌しく動き始める。その間に赤子の身は清められ、血を拭われた体を産着が包んだ。
全てが終わり母の元へと渡された赤子に、皆が目を見張る。
黒の髪と金の瞳。
それは神話において始祖とされる魔族だけが持つ特徴。
始祖の血を引くとされる王室でさえ黒髪だけしか継承されていない、天上の色彩。
「名はルシア。ルシア・エディント」
母より名を告げられると、眠たげに落とされた瞼によって黄金は隠された。