唐突な別れ
初投稿です。見切り発車です。
拙い部分も多いかと思いますが、よろしくお願いします。
激しい衝撃。
遅れてやって来た痛みに顔を顰める。
目前に迫った白。
巨大な車体は速度を落とす事なく進み続ける。
見える全てがスローモーションで、もうダメなんだなと思い当たるのに大した時間はいらなかった。
腕も足もきっと折れてしまっているし、口からは血が溢れ続けている。肋骨が折れて肺にでも刺さったのかな。息が苦しい。
自分はきっと助からない。ならばせめて。
動かない腕なら動かないままでいい。抱え込んだこの子が助かるなら。この、生意気で強がりで寂しがり屋の妹が生きて幸せになってくれるなら。安いもんだ。
運転手は父親の政敵にでも雇われたのだろう。でなければ酔っ払いか居眠りか。人を撥ねてなお進み続けるのだから、どちらにしろまともな人物ではないだろう。
ここは人通りが少ない。人を呼ばなければ。ポケットに入れておいたスマートホンは恐らく壊れている。どうにかして大通りに飛ばされるしかないか。
これだけの血が流れ、体が損壊しても痛みが来ない。思考も冴えている。
現実離れした感覚に、死の確信は強まるばかり。
無理矢理に体を捻る。大通りに向かって弾き出されるように、ボンネットを転がり、車体を蹴り飛ばす。
大通りまであと1メートル。
誰か通りがかってくれ。そろそろ意識が持たないかもしれない。
と、妹の体がビクリと震える。気絶から回復したらしい。こんな所を見せたくなかった。舌打ちしようとして舌が動かなかった。
焦点が定まっていき、目が合うと同時に妹の顔が歪む。傷が痛むのだろうが無理もない。無傷では済まないのは仕方がない。代わってやれたら。全部引き受けてやれたらよかったのに。
ああ、もうだめだ。
何も分からない、考えられない。
いつもは、生意気に睨みつけてくる瞳に涙が滲んでいる。
いつもは、休みなく動く唇が食いしばられ、小刻みに震える。
いつもは、隙あらば引っ叩いてやろうと狙っている両の手が固く握られている。
そんな様子の妹に対し、俺は何も言ってやれない。だから祈った。
どうか、どうか、幸せに。
最期の力を振り絞って、微笑んだ。