表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の居るトコロ  作者: 光坂影介
2罪のハジマリ 第六章 異能のチカラ
61/113

2罪のハジマリ 第六章 02

 今日、俺達は四人だった。

 四人でいつもの喫茶店に来ていた。

 冬彦に呼び出されたのだ。


「冬彦、どうしたんだ? 急に呼び出して?」

「それより、僕達に何か報告することがあるんじゃないかい?」

「えっ? あっ、えっと」

「私達、一緒にいることになって、完全に千秋ちゃんのライバルになりました」

「は、春美!?」


 俺が言いよどんでいると春美が先に言ってしまった。


「おめでとう、春美ちゃん、私の親友をよろしくね?」

「おめでとう、春美。やっと、前進したね?」

「うん、ありがとう!」


 千秋と冬彦が祝福してくれる。

 だが、俺は冬彦の言葉にひっかかる。


「やっと? 冬彦は異能か何かで知っていたのか?」

「何言ってるの? 天典? 天典にはそういう発想がなかったからわからなかったかもしれないけど普通、わかるよ」

「天典、本当に気付いていなかったのかい? 幾度かそれらしいことを言っていたよ」

「そういう発想がなかったんだよね? 春美ちゃん、本当に天典で大丈夫? 自分のことになると普通の人より鈍感だよ? さっきも、言いよどんじゃって、付き合う報告を女の子にさせて!」

「大丈夫だよ。天典くんは人のことしか考えてないから自分のことなんて発想がないだけだから……。それに責任感が強くて、言葉や気持ちを大事にしすぎちゃうから、言葉にするのに時間がかかるんだよ」

「そういうところも好きだと?」

「うん!」

「す、すごい! 少しも照れない! 私にはこのコが眩しすぎるよ!」

「千秋も俺と似ているところがあるな?」


 俺は冬彦に小声で指摘する。

 春美は照れていないように見えて、ものすごく照れている。

 少し、頬が赤いのに気付かないのか?

 でも、千秋には聞こえていたようだ。


「ちょっと、聞こえてるよ。天典。私が褒めるより、春美ちゃんが褒める方が嬉しいと思っての巧みな誘導尋問に気付かないの?」

「千秋、それは僕に対する浮気かな?」

「違うよ! 冬彦! 私は冬彦一筋だよ! 冬彦はそれ以上に素敵だよ!」

「素敵とは素の敵と書く」

「ちょっと、天典!」

「「「「フ、アハハハハ」」」」


 楽しい時間だった。

 ずっと続いて欲しいと願いたくなるほどの――永遠を望んでしまうほど楽しい時間だった。


「そうだ! ダブルデートしようよ! ダブルデート! きっと楽しいよ!」

「そう……だね?」


 春美の提案に対する冬彦の解答が鈍る。


「うん、いつ(、、)か(、)絶対しよう!」

「千秋……。天典、春美、実は――」

「待て、冬彦!」


 俺は気付いたら、そう口にしていた。

 他の人の声に――そして、なにより、冬彦の声に――良くない傾向を感じたから……。


「あっ、えっと、周りが俺達を気にし始めている。冬彦、お前――」

「じゃあ、私の異能の出番だね?」

「ああ、そうだね? 千秋、先にお願いするよ」


 千秋が俺の言葉を遮り、異能を使う。

 周りの人も俺達の行動を自然だと思い始めた。



 そして、楽しい時間は(ほころ)びをみせる。


「僕の異能で久しぶりに未来の映像が見られてね。これから、忙しくなるみたいなんだ」

「あっ、そうだったんだ? でも、また会えるよね?」

「春美が考えているほど、頻繁には会えないと思う」

「えっ!?」

「私達ね? 裁判教会の手伝いを主に海外ですることになると思うんだ」

「海……外?」


 千秋の言葉に春美が戸惑う。


「前の事件で国籍がバレたからか?」

「さすが、天典。驚かないね?」

「まあ、周りの声に異能者による警戒の気持ちが混ざっていた」

「そう、裁判教会は異能者の都市伝説レベルの知名度だけど、僕達が前の事件で一時期、指名手配されたのは事実だからね? 警戒されているんだ。日本にいなければ、国籍が違うから違う人物だと思ってくれるという可能性もあるしね?」

「ダブルデートは?」

「大丈夫、いつか絶対しよう? 春美ちゃん!」

「本当に? 本当にそう思ってる?」

「「本当だよ」」


 重なったのは俺と千秋の声だった。


「えっ? 天典くん?」

「千秋の言葉は本当だ。俺の異能が保証する」

「うん、ならせめて、今日だけでも楽しもう!」


 そこからも楽しかった。

 別れを知っても、想いゆえの揺るがない思考は、別れ程度で揺るがない。

 今を楽しみたいと思えば、それを無意識に忘れることだってできる。

 いや、むしろそれを知っている上で、それを忘れた時と同じように楽しめる。

 それは想いゆえの揺るがない思考にしかできないことかもしれない。



 俺はこんな楽しい時間を永遠にしたい。

 俺は永遠を目指そう!

 だが、俺の目指す永遠は維持でも、停滞でもない。


 悠久(、、)だ。


 その想いは罪ではないだろう!?

 

 たとえ罪につながるとしても、ハジマリの気持ちは――


 罪のハジマリは罪ではないのだから!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ