2罪のハジマリ 第五章 02
数日後、僕と千秋は空港の搭乗ロビーにいた。
「まさか、遠くに行くっていうのが海外だったなんてね?」
「ハハハ、そうだね? でも、まあ、費用は持ってくれるって言うし、二人で旅行に行くと思えばいいんじゃないかい?」
「どうせなら四人で行きたかったんじゃない?」
「ハハハ、まあね? でも、それだとあっちでやることが天典達のためにならないらしいから仕方ないよ」
「むぅう」
千秋が頬を膨らませた。
まさか、機嫌を損ねたか!?
女の子って難しい!?
あれか、千秋は二人で行きたかったとか!?
どうすればいいかわからないのでとりあえず、原因を明確にしてみる。
僕の考えが間違っている可能性もあるからね。
「千秋は二人で行きたかったのかい? あれ、でもそれなら希望通りじゃないかい?」
言ってみて、新しい事実に気付いた。
だが、それでも千秋の不機嫌は治らない。
「そうだよ。そりゃ、四人でも行きたかったけど、二人でもいいなと思ったの。冬彦もそう思ってくれてるかなと思ったのに」
「僕だってそうさ」
「ホント!? って、それならそう言ってくれないと!」
一瞬、笑顔になるが、まだご不満のようだ。
「ハハハ、そうだね。初めての海外旅行が千秋と二人で行くものでよかったよ」
「えっ、そう? えへへ」
「そうだよ。さて、もう乗り込むみたいだね?」
「えっ? ちょっと早くない? もう少しゆっくりできるはずなんだけど……」
「でも……、って!? この便、僕達が乗る方向とは違う便じゃないかい!」
「えっ、嘘!? じゃあ、なんで、搭乗手続きが出来たの?」
「そうだね、比較的、自然に……って! まさか、千秋、異能を使った!?」
「使ってないと思……、そういえば、いろいろうるさいから、冬彦と話させてよって感じで何かした覚えが……なくもないかも……」
そういえば、手続きがやけに簡単に済んだ気が……。
一瞬、異能の誤作動の可能性も考えたが……、いや、ある意味、誤作動か……。そんなに意識せずに異能を使えてしまうなんて……。
とにかく、急いで正しい便に戻らないと! 飛行機を乗り逃したら大変だ!
僕達は急いで、正しい便に戻った。
余裕を持って来ていたおかげで、飛行機を乗り逃すことはなかった。
だが、千秋が期待していたほど、ゆっくりはできなかった。
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飛行機に乗り、離陸して、安定してきたら、千秋が少しイタズラをする子供のように提案してきた。
「ねえ、操縦室を見に行ってみない?」
「いや、そんなこと、できるはずが……。まさか、異能を使うのかい?」
「そうそう、さっきは失敗しちゃったから、名誉挽回♪」
「ダメだよ。そんなことをしては」
「いいじゃない。冬彦が行かないなら、私一人で行ってくるよ。異能に慣れないと……」
「千秋! はあ、わかったよ」
僕は先に行く千秋を追いかけた。
操縦室の前まではすんなり来られた。
「千秋、本当に入るのかい? ここまで来られたのだから、異能はしっかり使えているよ。戻るべきだよ」
「ダメダメ、操縦室がどうなっているかが気になる。じゃなかった。まだ、異能の性能が完全には検証されてないよ。普通なら入れない操縦室に入らないと……」
「でも、鍵がかかっているんじゃないかい?」
「えっ、あっ、そっか」
そんなことを考えていたら、人が出てきた。副操縦士かキャビンアテンダントだろう?
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
自然に挨拶を交わし、その人が出てくるのと入れ違いに操縦室に入る。
はあ、入っちゃったよ。
奥に進み、操縦席の近くまで来る。
そうすると、僕に変な感覚がくる。
なんだ?
少し頭が痛い。
フラっとよろけると操縦桿に触ってしまった。
「冬彦!」
「なんだ!? 急に機体が!」
機体が傾き、操縦士が焦る。
しまった!
だが、なんとか操縦士が持ち直す。
「ふう、なんとかなったな。風か? だが、機械の調子が悪いな……。誰かが携帯電話を使っているのかな……」
どうやら、千秋が異能を使ったためか、僕達がやったとは思ってないみたいだ。
「冬彦、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。もしかして、僕の異能、携帯の電源を飛行機の中で入れているような電波障害のようなものがあるのかな?」
「とにかく、ここを出よう」
「うん」
僕達は急いで操縦席から立ち去った。
「やっぱり、悪い事はするものじゃないね?」
「そうだね」




