2罪のハジマリ 第三章 03
「感想は? 春美ちゃん?」
「へえ、いい話だね? 一瞬、『ノロケ?』とか思っちゃったけど」
「ハハハ、言えてる。千秋もわかってて聞くんだよな。あてつけかよって。女ってこわいよな」
そんな言葉で誤魔化しつつも俺は考えていた。あの時、冬彦じゃなくて俺が千秋と約束していたらどうなっていたか……と。
普段、俺が言うような言葉だ。むしろ、俺が言うのが自然だったはず……そうしたら千秋は……。
「あの約束、僕じゃなくて天典が言っていたらどうなっていたのかな? あの言葉自体、天典が言いそうなことだし」
冬彦が、まるで俺の考えを読んでいるかのように問う。
俺は意識を集中して千秋の言葉を待つ。
その数秒がとても長く感じられた。
どれだけ過ぎただろう? 数秒? 十数秒? もしかしたら数十秒だったかもしれない。
「うーん、変わらなかったと思うよ。最初に話しかけてくれたのは冬彦だし」
「……っ」
がっかりした俺の様子を見てか、冬彦に対する恋のライバルを減らしたいからか、春美ちゃんも俺の聞きたいことを問う。
「でも、最初に話しかけてきたのが天典くんだったら?」
「うーん、確かに約束は天典が言いそうなことだけど、話しかけるのは冬彦の方がしそうじゃない? ああ、もう、とにかく恋愛に『もしも』はタブーってことで!」
希望はなかった。なくなった。だけど、時間は非情にも動き続ける。
それに、そんなことを聞いても悪い気はしなかった。
だって、千秋は冬彦の中にいる俺も――つまり冬彦が俺に影響を受けたと思われる部分も好きになったのだから……。
「ねえ、それより、次はどこに行く?」
「じゃあ、あの搭のある公園に行かない?」
「……そうだね、いいんじゃないかな」
春美ちゃんの提案に少し戸惑いを感じてから、冬彦が答える。春美ちゃんが自殺しようとしたところだからだろう?
でも、俺はそんなに驚いていなかった。春美ちゃんの声で春美ちゃんがもう大丈夫なことはわかっていたから……。
千秋が驚かないのは、同じ人を好きになっているから、春美ちゃんの気持ちがわかるのかもしれない。
いや、そんなことがなくてもわかっただろう? だって、春美ちゃんは今、こんなに楽しそうなんだから。冬彦にわからなかった理由は・・・・・・多分、春美ちゃんが自殺しようとしたことがある種のトラウマになっているのだろう。
俺達は喫茶店で会計をすませ、公園に向かった。




