2罪のハジマリ 第三章 02
そして、喫茶店に着いた。
今、思えば最初から喫茶店に集まれば良かったんじゃ…。
「あっ、天典くんが先頭で……」
「えっ、なんで?」
疑問を感じつつもドアを開けて入ってしまった。
「何名様でしょうか?」
「四人です」
「禁煙と喫煙はどちらにいたしましょうか?」
「禁煙で」
「こちら側のお好きな席にお座りください」
適当な席に座る。
「ココであってる?」
「「あってるよ」」
「何が?」
今日は俺の発想にないことばかりで声を聞いてもウソかホントかくらいしかわからない。
「冬彦くんも千秋ちゃんも天典くんはいつもだいたい同じ席に座るって言ってたから……」
「えっ、あっ、そういえば、ココではいつも同じような景色を見てる気がする」
「なんだ、無自覚だったのかい?」
「ということは、いつもは天典が先に店に入るのも無自覚なんじゃない?」
「そうだっけ?」
おかしい。なら、なぜ今日は・・・・・・春美ちゃんがいたからか。
どうも、春美ちゃんがいると俺の行動は変化が起きるみたいだ。
「そうだよ」
そこで春美ちゃんが改めて言う。
「それでね? 私を助けてくれてありがとう! そして、私を心配してくれていたのに拒絶してしまっていてごめんなさい!」
「「「えっ」」」
「そういうのは何回も言ってくれていたじゃない?」
千秋は疑問の言葉を口にする。
俺は今日、初めてその言葉の奥の気持ちがわかった。
それを口に出す。
「心配して一番多く行動を起こしたであろう場所で、新しいプレゼントを用意した時に改めて言いたかったんだね?」
「うん! 本当にありがとう!」
「僕からも言わせてくれ。ありがとう!」
冬彦までお礼を言ったことに乗じて、千秋が言う。
「じゃあ、私からも……。結局は私達の気持ちを受け入れてくれてありがとう!」
「えっ?」
春美ちゃんは言葉の意味がわからなかったらしい。俺は付け加える。
「俺達の春美ちゃんに生きていてほしいという気持ちを……だよ。本当にありがとう! 春美ちゃん」
「うん! これから、なにかあったら今度は私がこの場所を使えるようにするよ」
この瞬間、やっと、俺達は四人(、、)で(、)歩き始めたのかもしれない。
「そういえば、三人はどうやって知り合ったの? これからは四人になるんだし、知りたいな」
四人を始めるにあたって春美ちゃんが気にしたのは三人のハジマリだった。
「と言っても、俺と冬彦はいつの間にかって感じだし……」
「じゃあ、千秋ちゃんとは?」
俺の言葉で春美ちゃんが興味を持ったことを聞いてくる。
「千秋とは僕と天典が遊んでいる時に偶然、会ったんだよ」
「へえ、どんな感じ?」
俺達は千秋と会った時を思い出し、話し出す。
「あれは小学生の何年生の時だったかな? まあ、そのくらい昔の時」
「俺と冬彦が遊んでたんだよな。あの公園で……。あれ? 正確には冬彦と遊ぶ約束をしていて冬彦があの公園で待っていたんじゃなかったっけ?」
「公園って、あの塔のある公園?」
「そう、あの塔は昔から変わらないよね」
「ああ、思い出したよ。待っていたというよりは一人で遊んでいたんだよ。いつも、どちらかが遊んでいるともう一人が自然と来ていたんだよ。それで千秋との出会いの話に戻ると、知らない女の子がベンチに座って俯いて悲しそうな顔をしていたから声をかけたんだ」
「それが千秋ちゃんだね?」
「そうだよ」
「ああ、そうそう。なんか、随分かわいい子と話しているなとか思ったっけ? あの冬彦が女子に声をかけていたから本当に冬彦かどうかを疑ったね」
そこに冬彦が言う。
「そんなことで僕かどうかを疑わないでくれないかい。僕だって女の子に声をかけることくらいあるさ」
「・・・・・・」
あっ、また沈黙だ。
うん、そうだよな。
みんなが一致する沈黙だった。
気を取り直して千秋が口を開く。
「そう、『どうしたの?』って知らない男の子に話しかけられたら、すぐもう一人、男の子が増えて戸惑ったっけ」
「そしたら千秋が確か『道に迷ったの』って言ったんだよね。でも、俺はすぐに『嘘だね』って言って。あの時は理由はわからないけれどなんとなくわかったんだ。このコは嘘を吐いているって。まあ、後から考えれば、道に迷って公園に来るやつがドコにいるって感じなんだけど…。子供だからそんなことはわからなかったはずだし……」
「そうそう、いきなり嘘だって言われて天典の第一印象は最悪だったなぁ。でも、本当に嘘だったんだよね。今だから言うけど、あれ、家出だったの」
「「「えっ」」」
「なんで? ……って、ああ、なるほど」
「えっ、なになに?」
「話を最後まで聞けばわかるよ。でも、あの時の天典じゃ、流石にそこまではわかってなかったか」
「えっ、ああ」
「そうかな、どこかでわかってたんじゃないかい? その後、いきなり『じゃあ、遊ぼうぜ。お前も遊びに来たんだろ』なんだからさ」
「ハハハ、流石に本気でそう思っていないことはバレていたか」
「そんなの、わかるでしょ? でも、誰もそれを、理由を指摘しないで遊んでくれた。あの時は本当に楽しかったなぁ」
「ああ、そうだね」
「それでそれで?」
「うん、それでね。帰る頃になって冬彦が『また、遊ぼう』って言うの。それでその言葉が嬉しくて私、いつの間にか泣いてたの」
「それで俺達が困ってたら…」
「私が『無理なの。私、引っ越すことが決まって、遠くに行くから、もう会えないの』ってね」
「そしたら、『そんなの、関係ないよ。約束だ。また、遊ぼう』って」
「えっ? えっと、天典くんが言ったんだよね?」
「いいや、俺が言おうとしたら、冬彦が言った」
「へぇ、意外だね?」
「それだけじゃないんだよ。冬彦、その後、千秋とゆびきりして、『約束した。これで僕達はまた会える』ってさ」
「天典だって、『これで俺達は離れていても友達だ。お前の他の友達だってそうじゃないか?』だよ」
「それで帰ったら引越しの話がなくなってたんだよ。奇跡ってあるんだね?」




