2罪のハジマリ 第二章 04
「じゃあ、トランプしよう!」
「「「えっ?」」」
春美ちゃんのいきなりの提案に俺達は驚きの声をあげた。
「何、驚いてるの? 今日のメインは四人で遊ぶことでしょ?」
「いや、メインは打ち合わせって言ってただろ?」
「いいの、いいの、もう冬彦くんは……。なんか、お父さん達と話すのがメインじゃないよって言いたかっただけだから!」
「ハハハ、そうだったね? トランプで何する?」
「なんでもいいから、罰ゲームアリで! あっ、やっぱり、複数人だからこそできるゲームがいい」
俺はその言葉に反応して即座に告げる。
「じゃあ、一人ずつ、何をしたいか言っていくってことで、相談は無しで!」
ここまで言い切れば大丈夫。
「みんなが言ったゲームをやっていって、いくつかやるってこと? それとも、言ったゲームで多数決?」
しまった、それも決めておかないと!
だが、まだ、誰も気付いてない。少なくとも、今の声で千秋が気付いてないのは確実。
でも、冬彦が気付くのは確実。千秋と春美ちゃんも時間がたてば気付くだろう?
「いくつかやるってことで! なお、ゲーム選びに関するアドバイスは無し。千秋からどうぞ!」
「えっ、えっ、じゃあ、ポーカー」
よっしゃ、まずは一つ!
「次、春美ちゃん!」
「えっと、じゃあ、『おあいにくさま』」
「「? 何それ?」」
俺と千秋の声が重なる。
一瞬、俺の企みに気付いて、そう言っているのかと思ったが、声を聞く限り違う。そういうゲームか?
「だから、春美、そんなマイナーなゲーム、普通、知らないって!」
冬彦が言う。
「え~、じゃあ、変える?」
「ダメだよ! 今のもアドバイスになる。変えるのは禁止」
ルールがわからない以上、俺の企みにプラスになるかマイナスになるかはわからないけど、こういうことは徹底しておかないと企みがバレる。
それでも、千秋が聞く。
「で、どういうゲームなの?」
それには冬彦が答える。
「なんか、カードを均等に配って、一人を指名して何のマークの何番のカードが欲しいかを言って、相手がそのカードを持っていたら渡して、外れるまでそれをして、外れたら指名権が次の人にうつる。で、同じ番号のカードが揃ったら、ブックって言って、場に出して、そのカードは扱わなくなる。ブックしたカードが多い人が勝ちってゲーム」
おお、まさに俺の企みにぴったりのゲーム。
「このゲーム、好きなんだよね。でも、最近、冬彦くんと会ってばかりだったから二人だとできなくて……」
「ふ~ん、春美ちゃんも四人になったらやりたいことあったんだね」
千秋は春美ちゃんの言葉に嬉しそうに言う。
「じゃあ、次、冬彦」
「う~ん、そういえば、天典、なんか怪しいよな? 何をやるかのアドバイスは禁止なんておかしいし、アドバイスって言う時点でなんか……」
「まあまあ、で、何がしたい?」
「じゃあ、ババ抜きで」
うっ、流石、冬彦。ババ抜きは企みには向いてない。
「で、お前は?」
俺は少し考えて、企みがバレないように言った。
「『おあいにくさま』で」
「さっきのがアドバイスとみなす。却下!」
「それに、同じゲームばかりじゃつまらないよ」
千秋まで告げる。
「まあ、こういうことが無いようにアドバイスは禁止にしたんだし、じゃあ、大富豪で」
「了解」
ゲームをやる順番は提案者が座っている位置を時計回りにで『ポーカー』『おあいにくさま』『大富豪』『ババ抜き』の順になった。
提案は俺が聞いていたから、俺を飛ばしてたってわけだ。
さっそく、ポーカーから始める。
細かいルールはコインを二十枚持ち、チェンジは一回まで手持ちのコインをかけていくとなった。
「レイズ(上乗せ)」
千秋がそう言ってコインを多く出す。
なるほど、ハッタリか。
「勝負」
俺も千秋が上乗せした分を出す。
「えっ?」
俺の言葉に千秋が驚く。
すまん、千秋、罰ゲームがかかっているんだ。
俺は千秋と視線を交わした。そして千秋が言う。
「はあ、罰ゲームがかかっているもんね」
「「勝負」」
千秋の言葉で春美ちゃんと冬彦が言う。
「あっ、ハハハ、はあ~」
千秋が気付いて乾いた笑い。最後にはため息になった。
「千秋、今のは迂闊だったな」
「さすがに天典は千秋のことになるとすごいな」
冬彦の言葉に俺は反論する。
「お前もわかっていただろ? もう春美ちゃんとは付き合ってないんだから変な遠慮するな」
「うっ、だからこそだよ」
「えっ、冬彦くんもわかってたの? 私なら、大丈夫だから、自然に、ね?」
「春美、……わかったよ」
そこから、千秋は負けまくる。
まあ、基本、千秋は俺達を信じることでいろいろわかるけど、知略とかには向かないからな。
だが、俺は千秋のコインが残り少ないところで下手をうつ。
「レイズ」
微妙だな、勝てそうでもあり負けそうでもあるか。
千秋の声を分析した結果だ。
ある意味、そこで迷ったのがいけなかった。
「レイズ」
コインを多くだし、春美ちゃんが言う。しかも、ハッタリ。
「「勝負」」
俺と冬彦の声が重なる。
「ん? なんで、天典まで?」
「まあまあ、結果は?」
結果は千秋の負けだった。
「えっ?」
「なんで、天典が驚くんだ? いや、その前に春美に自信がないのを気付いたの自体おかしいけど…」
「ハハハ、まあ、なんとなく勝負したんだが、そっか、自信なかったのか」
「ん、ああ、春美は警戒心が強いというか、相手を買いかぶりすぎというか、普通の手じゃ安心できないんだ。だが、そういうときに自棄気味にハッタリをするときがある。今回がそうだったんだろ? って、ああ、そうか!」
「何? どうしたの?」
「天典、お前! 特技のおかげだな!」
げっ、バレた。
「特技って? ……ああ、そうか! 私達のレイズとかの声でハッタリかそうでないかを見極め、じゃなくて聞き分けてたんだ」
「えっ、天典くん、ズルしてたの?」
「ズルじゃないだろ? 特技の有効活用」
「「罰ゲームは天典で決定」」
「なっ!? はあ、まあ、いいけど、罰ゲームは何?」
「私もするよ。そんなの無くても負けてたし……」
千秋も罰ゲームを受け入れた。
冬彦はそれで考え込んでしまった。千秋も一緒ならそんなに酷い罰ゲームは言えないだろ?
千秋、ナイス!
だが、春美ちゃんが提案する。
「じゃあ、丁度、この二人だし、冬彦くんへの誕生日プレゼントの情報を言うってことで」
「「えっ!?」」
「えっ、あっ、困る? サプライズ性を重視するならそう言ってもいいし、情報っていっても、『毎晩、眠れないくらい真剣に悩んでます』とかでもいいし」
その言葉で安心する。
そして俺が口を開く。
「俺は、誕生日に間に合わないかもしれないけど、必ずお前を喜ばせてみせる!」
そう、俺はもう何を誕生日のプレゼントにするか決めていた。
プレゼントとは違うかもしれないけれど、俺は冬彦に気付かせる。
冬彦の気持ちに! だから時間がかかるかもしれない。
俺と春美ちゃんにとってはマイナスなことかもしれないけれど、それが俺が親友に送れる一番のプレゼントだと思う。
「私は私の気持ちがすごくこもったプレゼントを贈るよ」
その言葉に胸が痛む。
わかる。特技なんてなくてもわかる。千秋は冬彦に告白するつもりだ。
頬を赤くし、恥ずかしそうに言う千秋は完全に恋をしていた。
その言葉に冬彦は答える。
「ああ、楽しみにしてるよ。ありがとう」
そのありがとうにはすごく気持ちがこもっていた。
その幸せな時はずっと続くと思っていたことが変わり始めた瞬間だった。




