2罪のハジマリ 第二章 02
「パスポートを取りに行こう!」
「「は?(えっ?)」」
「春美? いきなりどうしたんだ?」
休日のいつもの喫茶店に、俺、冬彦、千秋は春美ちゃんに呼び出されていた。
意味不明な言葉に俺はとりあえず思ったことを口にした。
「パスポート? おれはてっきり、冬彦が言ったように四人で……あっ! そういうこと?」
「ああ、四人でどこかに旅行に行こうってことか?」
「そういうこと。私のプレゼントは『四人で過ごす時間』だよ」
「別に近場でもいいんじゃない? むしろ今日みたいに普通に四人で遊べればその方が……」
千秋の意見に春美ちゃんが言う。
「今日は打ち合わせ。まあ、この後、遊ぶけど……。そういう『普通』は旅行までに他の刺激が欲しくなるくらい満喫する。私は常に幸せを妥協せずにさらに上を目指す女なんだ。壮大なものを計画する……予定……だから期待してて!」
「計画すらする(、、)予定(、、)の段階!? パスポート、無駄にならない!?」
「まあまあ、パスポートなら持っていても問題ないだろうから取っておこう」
冬彦がフォローする。
春美ちゃんっていつもこんな感じなの!?
「ハハハ、じゃあ、さっさとパスポートを取って遊ぼう。旅行はおまけみたいなものだと思って……」
「千秋ちゃん、ひど~い!」
この時に取ったパスポートは役に立った。
だけど、なぜおかしいと思わなかったのだろう?
そこにはどこか強制力のようなものが働いていた。
「さて、パスポートも取ったしここからが本番だね?」
「むっ、だから……、千秋ちゃん!」
「はいはい、それよりこれからどうする?」
冬彦が話を変える。
やっぱり冬彦は春美ちゃんと形だけでも付き合っていたし、春美ちゃんとの会話には慣れているのかな?
「ねえ、私、春美ちゃんのことをもっとよく知りたい。春美ちゃんって意外と面白いコだし……」
「あっ、それは俺も知りたいかな。冬彦もなんか慣れている感じだし……。普段の春美ちゃんを知りたい」
「普段の春美? なら罪仙の家に行こうか?」
「えっ、春美ちゃんの家? それは……」
春美ちゃんの家と聞いて、千秋が焦った。
春美ちゃんのことが知りたい気持ちと冬彦を春美ちゃんの家に連れて行きたくない気持ちがせめぎ合っているのだろう?
俺は千秋の想いに対して卑怯なことをすることになるのだなと思いつつも加勢する。
「俺も行きたいかな」
「えっ、天典くんも……」
そしてその春美ちゃんの言葉で、千秋は春美ちゃんの方を見ると笑顔をうかべて言った。
「うん、私も行きたいかな」
「じゃあ、行こう」
そして、俺達は春美ちゃんの家に向かった。
春美ちゃんの家に向かっていると春美ちゃんが急に話を変えて言った。
「そういえば、両親には自殺しようとしちゃったこと、言ってあるんだ。そのおかげで今も、家にいるし……」
「「「えっ?」」」
「そうなんだ? 両親は心配しなかった? って、冬彦はなぜ、来た道を戻ろうとしている!?」
なんて言いつつも、俺は冬彦の気持ちがわかっていた。
俺達の誰もが、春美ちゃんが自殺しようとしたことは誰にも話していないと思っていたのだ。
両親が自殺の原因になった冬彦に何かするかもしれないと思ったのだろう。まあ、最低でも怒られはするだろう。だが、冬彦、ある意味、自業自得だ。
それでも、俺だって春美ちゃんの言葉を聞いて驚いた。
だが、俺には同時に春美ちゃんの声で両親に話したことに心配はないことがわかったのだ。
「僕は帰るよ。そういえばやることがあったんだ」
「冬彦、なんで、帰るのかな? 春美ちゃんの気持ちを弄んだことを謝るくらいした方がいいんじゃない? ついでに私にも謝って」
千秋がさりげなく自分にも謝らせようとする。
まあ、千秋も冬彦のことが好きだから、冬彦が春美ちゃんと付き合うことでショックを受けたからな……。
「なんで、千秋に謝るんだよ! それに、自殺のことは言ってないと思ったから提案したわけで・・・・・・」
「提案した冬彦が行かないのはおかしいだろ! 情けない。というか、お前が帰ると俺が男一人になるから帰さない」
俺は冬彦の腕を確保して言った。
「罪仙の家の人はいい人達だけど、だからこそ、自殺まで追い込んでたなんてことになったら……」
冬彦はそれ以上、言葉を続けない。
冬彦にもわかったのだろう?
「「そう、大丈夫だよ」」
俺と春美ちゃんの言葉が重なった。
「ハハ、やっぱり、天典くんにもわかるかぁ」
「というか、ここにいる全員がわかると思うけどね?」
「そうそう、いい人達なら、一方的に理不尽な怒りをぶつけたりしないよね」
千秋も聞いていた話とはいえ、罪仙の人達がいい人達なのは知っている。
「まあ、冬彦の悪い部分は怒られると思うけどね」
「怖いこと言わないでくれ。せっかく少し安心したのに」




