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神様の居るトコロ  作者: 光坂影介
2罪のハジマリ 第一章 ウソかホントか真ん中か
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2罪のハジマリ 第一章 08

「自殺、しようと思ってたんだけど。助かっちゃった」

「なんで? なんでこんなこと!」


珍しく冬彦が問いただす。


「冬彦? (あま)(のり)?」


 そこに千秋(ちあき)がやってきた。

 だが、冬彦は問うのをやめない。


「どうしたんだよ? 僕が何かしたのか?」

「冬彦、落ち着け」

「天典くんはわかっているんじゃない? ううん、千秋ちゃんもわかるよね? 私が自殺しようとしたわけ」

「自殺!? ……しようとしたの? 春美(はるみ)ちゃん?」


 そして、俺達は黙る。わかったのだ。俺も千秋もその理由が……。


「何か知っているのか? どういうことだ?」

「冬彦、本当にわからないか? 春美ちゃんは最後に何と言おうとしたんだ?」

「千秋となんとかまでしか聞こえなかった」

「えっ!? わあぁ。それは無し!」


 千秋が話に割り込んでくる。

 どうやら、千秋はまだ言いたくないらしい。なら……。


「冬彦、俺がちゃんと教えなかったのも悪いが、春美ちゃんが言っていた付き合うっていうのは友達になろうってことじゃなくて、恋人になろうってことなんだよ」

「なっ!? そんなわけないだろう? あの時、春美がよく知らない僕なんかのことを好きになるはずがないだろう?」


 これを本気で言っているんだからタチが悪い。


「本当だよ。お前は信じていないかもしれないが一目惚れはあるんだよ」

「それでも、自殺する理由にはならないだろう?」

「お前、春美(はるみ)ちゃんより俺や千秋(せんしゅう)との方が仲がいいだろう? 関係を進めるつもりが他の自分より親しい人との関係を見せつけられたら落ち込むだろう?」


春美ちゃんがもう一度、今度は自分の意思で言葉を発する。

「そういうことで、私達、別れよう。というか、冬彦(ふゆひこ)くんはそういう条件なら付き合っているつもりないよね?」

「冬彦」


 千秋は答えを促す。

 同じ人を好きな女として背中を押すためだろう。


 冬彦はもう一度、告白されているのだ。

 俺は冬彦が答えやすいように春美ちゃんに問う。


「どんな答えでももう自殺しようなんて思わないでしょ?」


 俺は声を聞いてそれがわかっていた。


「うん、大丈夫だよ」

「じゃあ、これからも友達として……。ほら、今度は千秋(ちあき)(あま)(のり)も合わせて四人でいろいろしよう! 実はずっとそうしたかったんだ」


 冬彦が気を取り直して、場を明るくしようとして言う。

 もちろん、ずっとそうしたかったというのも本当だろう。


 冬彦はこの機会に自分の希望を叶えるつもりだ。


「天典くんも……」


 春美(はるみ)ちゃんは一度、俺の方を見て言う。


「うん、いいよ! これからは四人で!」


 そんなことを話していたら、警察が来た。


「塔から飛び降りた人がいると聞いたんだが、君達かい?」

「あっ」

「すみません。トランポリンに高いところから挑戦してみたかったらしいんです」


 千秋がしれっとウソを吐く。


「全く、人騒がせな……。危ないからそういうことはやめなさい。話を聞きたいから来てくれないか? どの子だい?」

「私です」

「僕もついていきます」

「ん? まあ、いいだろう。来なさい」


 警官が春美ちゃんを連れて行く。

 ついていこうとした冬彦が振り返り言う。


「ありがとう、千秋、天典」


 その言葉には喜びと心配があった。


 けれど、心配もありつつも笑顔だった。


「私も、ありがとう。天典」


 恐らく、冬彦のために――千秋の好きな人のために動いたことに対するお礼だろう?

 千秋が満面の笑顔で言った。

 ああ、やっぱり俺はこの笑顔がどうしようもなく好きだった。


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