第五章 04
世界の間を彷徨っていた。
世界を渡る途中だ。
時間も距離も関係ない世界の間。
ここを渡ろうとして、俺は完全には渡れなかったのか?
どれだけこうしていたのだろう?
だが、ここにいると、たまに、ここを渡る他の人の想いが流れこんでくる。
その想いが流れこんでくるのは、その人の想いが――いや、その人の解釈――思うことが俺と似ているからかもしれない。
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俺は伝わってきた想いについて考えていた。
そして少しわかってきた。
この人は弱さのせいで報われないことがあると信じたくないんだ。
そしてそれがこの人が正しくあろうとする理由。
弱くても正しければ世界が味方してくれるかもしれないから……。
この人はただ、たくさんの味方が――仲間が欲しいんだ。
ただ、寂しさを埋めるために……。
だから、せめて正しくあろうとする強さは――心の強さは持とうとしているんだ。
それだけは自分の意志ひとつで持てるから……。
そしてもう1つ。
この人は自分の弱さを知っている。
いや、俺からしてみれば、遥か高みにまだ強さがあることを知っているだけだ。
だが自分を弱いと知っているから、弱い自分を彼らと重ね、弱い自分が同じ目にあうのが怖くて、弱さのせいの理不尽を否定したいんだ。
そうか、この人は――
この人の心は正しいだけで――
つまり正しくあろうとするだけで本当は弱いんだ。
だって、この人はこんなにも寂しがっている。
こんなにも恋人に会いたがっている。
この人はこんなにも心を強くもとうとするのに疲れている。
こんなにも強がっている。
本当は誰よりも理不尽を知っているから――
誰よりも理不尽を否定することでなくそうとしているんだ。
だけど、その強がりは正しさの理屈を理解してしまう。
それは弱さの理屈を知っているからこそなのに……。
弱さも正しさも理解してしまうこの人は誰の寂しさも満たしてしまう。
代わりに誰からも理解されない。
だから、誰もがこの人の弱さを理解できない。
この人が弱いと思えない。
この人が強いと誤解する。
多分、人間である限り誰もが弱いのだろう?
だって寂しさを感じない人なんていない。
だって恋人に会いたがらない人なんていない。
だって強くあろうとすることに疲れない人なんていない。
だって完璧な人なんていないのだから――
居たとしても最初からそうある人はいない。
最初は誰でも寂しい。
そう感じなくなるのはそれに慣れてしまったからだ。
感覚が麻痺してしまったからだ。
俺からすればその人にとって寂しくない程度の寂しさ(、、、)は普通の人にとって寂しいのだ。
だが強いと誤解した人達はその人を孤高と呼び、さらに孤独に貶める。
まさしくそれは孤高なのだろう?
孤独でいて、理屈のおかげで高い場所。
誰も理解できないその高い場所はどれだけ怖いのだろう?
どれだけ寂しいのだろう?
俺は弱さを理解するのに長けている点が似ているからこの人に自分を重ねていた。
この人は1人でいるべきでない。
1人で居たらきっと壊れてしまう。
誰よりも人を救えて、救おうとするこの人には誰よりも救いが必要だ。
だが俺はこの人を知らない。




