第五章 03
俺は彼女に事情を話して協力を要請した。
「救うのに協力はできるかもしれない」
「本当ですか?」
「うん。それと敬語はいいよ。私も使ってないし……」
「えっ、ああ、うん」
そう返事をすると彼女は言いづらそうに言った。
俺は少し気が楽になり、話し方を砕けたものにした。
彼女は念を押すように付け加える。
「協力だけだよ。というか、救う手段が影治くん――ああ、世界渡りの覇王の方ね――影治くんに頼るしかない……と思う。その手段も思いつかないけど、それは考えるしかないし……。あとは殺し屋に頼るか……。でも、殺し屋にどうにもできないから、殺し屋がこの世界に来たんだろうし……」
「そのことなんだけど、俺も世界を渡る方法ってないかな?」
「えっ!? この世界とリンクしているもう一つの世界にじゃなくて?」
「うん、世界渡りの覇王みたいに渡る方法」
「……」
彼女は少し考えているようだ。
俺としては世界渡りの覇王だけにそんな無理をさせておくわけにはいかなかった。
なにより俺はーーいや、俺がその世界を救いたいのだから・・・・・・。
そして、俺に覚悟を問うように聞く。
「危険だよ?」
「覚悟の上さ」
「なら、その辺の理屈なら、絆と友子の方が詳しいと思う。嫌がると思うけど、借りがあるし、彼らの本来の仕事だったんだから、意地でも協力させよう」
「自分で言うのも変だけど、随分、一生懸命だね? メサイアコンプレックスでもあるの?」
メサイアコンプレックス――何かを救いたくてたまらなくなる性格みたいなもの。
だが、彼女はイタズラっぽく、なおかつとても魅力的に笑って言う。
「それがあるとしたら、影治くんだよ。世界渡りの覇王になって世界を救う旅に出てしまうんだもの。私は彼に影響されただけ。それに、私はタダで協力するとは言ってないよ」
彼女のその笑みは恋する女の子の笑みだった。
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俺は世界を渡った。ただし、今はまだ、リンクしている世界に渡っただけだ。
「まったく、俺達はもうそういうのに関わりたくないんだが……」
「しょうがないだろう? 世界を巻き込んだ時の借りを返せなんて言われてしまっては断れないよ。しかも、ある意味、彼女の恋人が旅しているのは私達のせいでもあるんだ。そんな光の頼みを絆は断れるのかい?」
六堂絆と七瀬友子。
世界を振り回した二人だった。
「まあ、世界渡りの覇王にまで借りがあるからな。借りを返すのはいつになることやら……。でも、まさか、世界渡りの覇王が一琉影治だったなんてな?」
「その話になると絆はいつもそれだね。おっと、さあ、あまりお客さんを放っておくと借りを返す機会が逃げてしまうよ」
彼らは平和に暮らしたくて世界を渡ったので殺し屋の少ないこちらの世界で暮らしている。
ただ、今回は許可をもらったので少しくらいなら力を使えるらしい。
「で、世界を渡る話だったか?」
「ええ、実は――」
俺は彼らにも事情を話した。
話し終えると彼は申し訳なさそうに口を開いた。
「悪い」
「えっ!? 無理ってことですか?」
「絆、その言い方なら、そう聞こえて当然だよ」
絆さんの言葉に俺が反応し、友子さんがフォローする。どうやら違うような雰囲気だ。
「ああ、そうじゃないんだ。それは本来、俺達の役目だった。というか、完全に忘れていた」
「あっ、やっぱり忘れていたんだね? 私はいつ、そのことに着手し出すのかと考えていたのに……」
「いや、だったら言えよ」
「忘れていたらと思うと不安じゃないか? ある意味、私のもう一つの故郷なんだよ」
「……悪い」
なんか、二人でイチャつき出した。
俺もいつかはこんな風になりたいと思った。
だが、俺はその雰囲気に少し申し訳なくも水を差して言う。
「あの~~」
「あっ、ハイ。ごめん、ごめん。世界を渡る方法だったね? 絆、彼が世界を渡るための方法がわかったら許すよ」
「ああ、任せろ。というか、危険でもいいなら、既に考えたことのある方法がある」
「ああ、やっぱり、あの世界を助けるための方法も考えてはいたんだね?」
「当たり前だ。俺は友情の殺し屋と一つになったお前を好きになったんだからな」
「忘れてはいたくせにね」
まただった。
この二人、とことん周りを振り回す性格だ!
「あの、また今度にした方がいいですか?」
「ああ、悪かったな。方法はお前のこの世界との絆を殺すことで、お前を世界から切り離すという方法だ。世界から切り離した後はお前がうまくやれ。お前次第で世界を渡れる」
「なんか物騒ですね?」
「ああ、危険でもいいんだろ?」
「なるほど、殺し屋の力で絆を殺すのか。それで、こちらでやることも納得させたのかい?」
「?」
友子さんの確認の意味が、俺にはどういうことかわからなかった。
不思議そうな顔をしていると絆さんが説明してくれる。
「こちらの世界はリンクしたもう一つの世界より、殺し屋の意識の世界との絆が浅い。だから、世界との絆を殺しても、殺し屋の意識の世界との絆もそんなには殺さないってことだ。だが、そうは言っても、殺し屋の意識の世界との絆がないわけではないから世界との絆を殺すと難しいといえば難しい。だが、絆があるということは近い世界ということでもある。使う力が少しなのが吉とでるか凶と出るかだな」
恐らく、絆さんに宿る殺し屋の殺す対象が世界との絆なんだな。
そういえば、俺の作った世界に来てたっけ? 絆さん。
「わかりました。その方法でいいのでお願いします」
「わかった。じゃあ、始めよう。絆」
絆さんは殺し屋を呼んだ。
「悪いな。この世界ではもう最後だから……」
本来、この世界ではもう殺し屋の力はほとんど使えない。
だが、こちらの世界に本来、存在しない友子さん達ならば、こちらの世界でも少しは力を仕えるらしい。
そして、武器を形成する。
「我、絆をもって、絆を司り、殺しを行う! 我が想いに応え、力よ、形を成せ! その形はスナイパーライフル、全てを撃ち抜く暗殺の形! その属性は絆殺し! 我が殺しの本質! その名はコネクトスレイヤー! 神器形成、コネクトスレイヤー!」
そして、そのスナイパーライフルは俺を撃ち抜く。
だが、殺し屋の武器なので身体的な攻撃にはならない。
その銃声は俺の世界との絆を殺し、世界と切り離すことで、俺に世界を渡らせてくれた。
俺は光さんの願いを胸に世界を渡る。
その願いは――
「影治くんを支えてあげて――理解してあげて――助けてあげて――きっと、影治くんもその世界を救おうとするから……」




