第四章 01
俺――夏上天典は、一つの事件が解決したので事後処理をしていた。
いや、実際には俺が解決したわけではないか……。
それでも、裁判教会の見習いとして関わったのだから、事後処理はするべきだ。
まあ、見習いなら、こんなものか?
今回の事件の当事者達が自分達で解決できる力を持っていたのが幸いした。
今回の事件の当事者、夏目人。
彼はおそらく、異能に対抗できる力――想いゆえの揺るがない思考の持ち主だろう。
それも、それ自体を異能と読んでもいいくらいの強い思考。
通常、想いゆえの揺るがない思考は異能の力それ自体に抗うことは出来ない。
異能に対して、普通に行動する自然な流れで、異能の影響を受けたモノに対抗する。
だが、彼は罰の発動に抗えた。
まあ、今回の事件の始まりとなったオリジンイーターの異能などには抗えなかったが、罰の発動に抗えたのは大きいだろう。
それでも恐らく、異能の能力自体に抗うことはもうできないだろう。
だが、彼が罰の発動に抗えた理由は見つけなくてはいけない。
罰を対象者に与えられないとなっては裁判教会の役目が果たせない。
理由の一つはわかっている。
恐らく、友人への想いが強かったからだろう。
なにせ、名前の通り、想い(、、)ゆえ(、、)の(、)揺るがない思考だ。
想いに比例して、効果を発揮するのは当たり前だ。
他の理由で考えられるのは、罰が発動させようと思って発動したわけではなく、暴走という形だったことだ。
だが、それだけではない気がする。
俺は裁判教会のトップである神様(正確には神様が乗り移っている神父)に聞いた。
神様はこう言った。
「まだ、事件は終わっていませんよ」
俺はその言葉を聞いて、考え、調査を開始した。
それが事後処理だ。
そして、ヒントとして与えられたのは次の言葉。
「これはある世界に関わる大きな事件の一端です。彼が最近、会った人物をリストアップしておきますから、会ってみてください。その人達の中にヒントがありますよ」
俺は彼が会った数人を調べ、不可解な人物がいることに気付く。
その人は、データが極端に少ない。
恐らくこの人だろう。




