第三章 04
放課後、僕達は校門で待ち合わせをして、カラオケに繰り出そうとした。
けれど、ボーリングにも行かないかと提案した。
おまけに今日は遅くなると親に連絡をするように強引に頼んだ。
美冬は即答でOK。
春樹もしぶしぶOK。
夏(、)葉(、)も(、)親と交渉の末、OK。
そう、僕は一度人格が入れ替わったことも覚えていたし、入れ替わっていた間にしたことも、きちんと覚えていた。
みんなが覚えていないことに気付いたのは朝だ。
最初は美冬が僕と出掛けることをデートと言ったのでいつも通りに対応しそうになった。
だが、夏葉だけ近くにいるのに、挨拶してこないのを見て気付いた。
そして、春樹が夏葉のことを姓で呼んだのを聞いて、ああ、夏上さんの言っていた罰ってこういうことかと気付いた。
だから、僕は春樹と夏葉をなんとかくっつけようとした。
本当のことを、今、話しても僕がおかしくなったと思われるだけだ。
そんなことをしていても、ただ時間の無駄になるだけだ。
だから、みんなに合わせて、夏葉のことを裁園寺さんと呼び、前の状況を再現しようとした。
夏上さんを恨みはしなかった。
夏上さんも、罰を受けようとする夏葉の言葉を否定させようとしたし、罰を止めようとして、それでも暴走を止められなかったのだろう?
でも、僕はやり直すことに納得していなかった。
いや、少しそれでもいいかもしれないと思ってしまったから罰は発動してしまったのかもしれない。
けれど、何度も思うが、なかったことにしていいことなどない。
たとえ、悪いことでも、それはなかったことにする前に一度起きた。
そのことの唯一の救いは、それが起きたことを覚えていられること、それによって人が成長できること、その間違えが起きることで問題が一つ解決へと向かうことだ。
なかったことにしたら、その悪いことが実際は起きたのに、それによって成長したことがなかったことになるのだ。
そんなのは絶対に認められない。
その強い想いがあったから僕はそれを覚えているのだろう。
僕が、願った通りに、記憶として、その事実は残ったのだろう。
そして、他のクラスメイトが僕をジンと呼ぶのを聞いて、僕の入れ替わりが戻っているのもわかった。
夏上さんを感謝こそすれ恨みはしない。
ちょっと、ずれているかもしれないが、僕はこんな罰くらい乗り越えてみせる。
罰は――僕がそう思った瞬間、試練になった。




