第二章 06
「なあ、神斗。俺達の友人として、夏目の家に遊びに行かないか?」
「えっ!? どうして?」
「戻れなくても、家族は大事だって教えたいんだよ。ジンに」
春樹の言い回しが上手くて、ここまでくれば、僕にも察しがついた。
ジンの家ではなく、夏目の家。つまり、今のジンは秋月だからジンの家と言わずに、家の家族全体を表す夏目の方で家を表現し、今のジン、秋月がいない時に行こうということ。
そこまで言っても、僕がわからなかったから、家族は大事だって教えたいんだよの方に、家の時は夏目の家と言ったのに夏目ではなくジンにと付けることで僕の方を家族と会わせたいという意味だとわかる。
おまけに、誰かに追求された時に、今のジンに家族が大事だと教えたいから協力してくれと言っていたと説明する逃げ道まで用意している。
「春樹……。うん、頼んでいいかな?」
「他ならぬ私も行くからね? というか春樹、そういうことは私に先に言ってよ」
「なんで?」
「ジンには私から言っておきたいから」
ここでジンと言うのも問題ないだろう。今のジンに僕が家族と会うことを言っておきたいからだとも解釈できる言い方だ。
というか、今の僕のことをジンと呼べる少ない機会だから、そう言っただけっぽい。
「じゃあ、皆で行こうか?」
三人でとは言わない。
言ったら、これをもし誰かが聞いていたら、ジンの家に行くのにジンは居ないのかと不審がられるかもしれない。
僕も家族に会いに行ける機会を変な勘ぐりで潰されたくはない。
数日後、僕は家族に会いに行った。
初めは、不審がられたが、基本的に善意からの心配とか様子を知りたいとかの話だったので答えてくれた。
今のジン、秋月が人が変わったみたいで心配していたらしい。
今のジン、秋月も家での僕までは知らなかったみたいなのと、さすがに家族にはわかるのかと思った。
僕がジンみたいになった代わりかなとか冗談も言われた。
最終的にはまた、いつでも会いに来て欲しいと言われた。
けれど、詳しい様子はいいだろう?
家族の会話は本来、家族以外にはわからないモノだ。
仕方なくいた春樹や美冬に聞かれただけで充分だ。
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僕はほとんどのモノを取り戻し、元に戻ることを半分、忘れていた。
家族に会いに行き、美冬と一緒に春樹と夏葉とのダブルデートをしたりした。
それでも、元に戻りたいという気持ちはあった。
ある意味、美冬や春樹、夏葉といる時は、僕はジンに戻れるのだ。
他のみんなの前でもジンに戻りたい。
そう思ってしまう。
そんな時に、その機会がやってくる。
春樹の家に遊びに行っている時のことだ。
春樹の家で遊んでいたら、いつの間にか春樹がいなくなっていることに気付いた。
家の中を探してもいないので、外へ探しに行ったら、手紙を届けにきた人がいた。
僕を家の人と勘違いしたのか、声をかけてくる。
「天堂春樹さんかい?」
「いえ、違います。友達です。本人は今、すぐには出てこれなくて……」
「なるほど。君がジンくんか。ちょうどいい。裁判教会からの郵便だ。君も読んでみるといい」
そう言って、郵便を受け取る。
「えっ!? でも……」
「構わないよ。開けて読んでみるといい」
僕は恐る恐る封を開け、読んでみる。
天堂春樹殿
裁判教会より貴君をオリジンイーターの異能の悪用の罪により、刑に処したい。
言い分があれば、近くの教会に来られたし。
「オリジンイーター?」
「君の居場所を奪い、君と秋月神斗との存在の認識を入れ替えた異能だよ。その犯人は天堂春樹。彼だ」
「「「えっ!?」」」
僕以外の声もしたので、振り返ると、美冬と夏葉も居た。
そして、もう一度、郵便を渡しにきた人の方を見ると春樹が居た。
「春樹……。君が?」
「やっとか……。ジン」




