プロローグ
いろいろなものを詰め込みすぎて、大分前の新人賞に落ちてしまった作品を改稿していこうかと思います。
コミケで抽選に受かったら、別作品を出すので、練習と私の作品を少しずつ見られるようにしていこうと思います。
コミケ用のホームページできました。
まだ立ち上げたばかりのホームページですが……。
http://white-birth-day.wix.com/cross-first-fountain
です。
よろしくお願いします。
プロローグ 世界を救うモノ
始めに時間さえも超越した循環があった。
そして――
何かの絶望に対しては何かの救いのコトワリがある。
何かの欠点に対しては何かの長所のコトワリがある。
まだ完全に信じなくてもいい。
ただ、その事実がある。
それだけで救われることがあるかもしれない。
だから理はなるべく広めよう。
何も知らずに断じることは――
理に対する理由もないのに断じることは悲しいことだから……。
プロローグ2 語り継がれてきたモノ
この世界には都市伝説くらいの信頼度で語り継がれてきたモノがある。
異能力だ。
炎や天候、自然を自在に操る……なんて厨二な異能ではない。
未来の自分からの声が聞こえる。
人の声を聞くだけで相手の考えていることがわかる。
そんなような異能だ。
あれ? これも十分、厨二っぽいぞ!?
それはともかく、それだけではない。
そんな都市伝説のような能力を持った人達の中で、さらに都市伝説のように語り継がれてきたモノがある。
それが裁判教会だ。
異能者や犯罪者を管理し、異能力を使った犯罪や世界を揺るがす事件を神様が裁判し、罰を下す。
この物語はさまざまなモノが理不尽から、優しく――厳しく――当然のように……救われる物語だ。
プロローグ3 何も知らぬあの頃の救いのハジマリ
「ジン、なんでこんなことをする必要があるんだ?」
「そんなのなんとなくに決まっているよ」
「なに? 他ならぬ春樹は嫌なの? 私は構わないけど……」
親友の春樹が理由を聞き、それに対する僕の答えに僕達の裁定者である美冬がフォローする。
美冬を味方につけた。もう勝ったな。
「嫌ではないが、嫌な予感がする。……そうだな、例えば美冬は何を入れるんだ?」
「教えない。そういうのは暗黙のルールで人に教えないものよ」
美冬がカバンから出した小さな箱を後ろに隠す。
そんなに大きい箱ではないが、わざわざそのサイズの箱に入れるんだ。写真とかオルゴールとかその類だろう。
僕は今度こそ全員の同意が得られるだろうと提案する。
「いいじゃん、タイムカプセル。今日というこの日を忘れない最高の思い出になるよ」
「今日、特に何かあったわけでもないだろう。……はあ、もういいよ。だいたい埋める物は既に用意して、後は埋めるだけだしな」
「いいね。それ。タイムカプセルを開ける条件として採用」
「「え?」」
春樹とセリフがかぶる。
しまった。よけいなことを言った。
「今日というこの日を忘れない。タイムカプセルを開ける日を忘れずに、三年後の今日、この時間にこの場所に集まること。お互いにそのことは教えずに、ここに集まった人だけがタイムカプセルを開ける権利がある。どう?」
「俺は別にいいが……」
「えっ、待って! 正直、自信ない」
「そう? じゃあ、やめる?」
僕の自信のない様子に美冬が提案を取り下げようとする。
だが、春樹が余計なことを言う。
「いや、それで行こう」
「でも、私、そう決めたら徹底するよ。別にそんなにこだわってないけど、決めたら守らせるよ」
美冬が少しこちらをうかがいながら言う。
春樹はそれを見て言う。
「大丈夫だ。ジンは、忘れても時期が近くなったら思い出すし、もし思い出さなくても、俺がルール違反にならない程度で思い出させる。だから、ジンの心配はするな」
「そ、そんな心配はしてな……くもないかな。そう、他ならぬ友達として」
「そうか? なら、いいだろう?」
「う、うん」
「ジンは?」
「はあ~、じゃあ、春樹を信じて」
「なんだ? 俺、任せか? あんまり俺を信用しすぎるなよ」
この時、春樹は美冬が好きだった。
けれど、しばらくしてから、春樹は別の人を好きになった。
春樹は、自信がないくせに春樹を頼るジンを何度も羨む。
その男は、ある意味、自分よりも春樹を信じているのに――ある意味、春樹の方が有能だと思っているのに、春樹はジンに勝てたと思えたことはほとんどない。
もちろん、性格の面でも……。
春樹は本当にあまり自分を信用しすぎて欲しくなかった。
一度くらい疑って欲しかった。
その重すぎる信頼に押しつぶされそうだった。
だって自分は何度かジンを裏切ることがあったから……。
押しつぶされそうな罪悪感が罰なら、春樹にとってこれ以上の罰はなかった。
自分はこんな罰を受けるほどのことをしたのだろうか?
それともこれからするのだろうか?
罰を受けるほどのことをしていないのなら罪悪感を感じる必要はないという発想はこの時、思いつかなかった。
春樹にとってジンはそれほど眩しかった。
春樹にとってジンは潔白だった。
春樹はある意味、誠実なことに自分が犯した間違えを忘れられなかった。
そして、ジンは少なくとも春樹にとって眩しいほど潔白な天使だった。
眩しいほどイイ人だと思える人が隣にいると人は罪悪感で押しつぶされそうになるのかもしれない。