寝てたら死んでた
「……白い部屋ですね」
朝起きたら、一面が真っ白の部屋にいた。
いやもう、真っ白すぎて壁や天井がどこにあるのかも解らない。
狭いのか広いのかすら曖昧な空間だ。見ているとなんだか不安になってくる。
「やっと起きたか、新たな転生者よ」
「はあ……おはようございます」
「……お主、軽いの」
いえ、寝起き悪いんで。頭回ってないだけですよ。
声だけ聞こえる誰かに、とりあえず聞いてみる。
「ここ、どこですか?」
「転生ルームじゃの。ここでお主の転生先や、転生する種族なんぞを決めるぞ」
この人、声は女の人なのに爺くさい喋り方するなぁ。
「……僕、死んだんですか。ロリジジイさん」
「おう、残念だがな……ってロリジジイ!?」
「はい。ロリジジイさん」
「おま……失礼じゃの」
「すいません、ジジイロリの方が良かったですか?」
「そこじゃないわい! 単語の位置のこと言いたいのと違うわい!」
なんだかうるさい人だ。寝起きの人相手に騒々しいなあ、もう。
すっくと立ち上がって伸びをして眠気を払いつつ、ロリジジイさんに質問してみた。
「ん、んん……なんで僕は死んだんですか?」
「お主、展開早いの……ま、まあいい。主の死亡原因は、睡眠時無呼吸症候群じゃの」
睡眠時無呼吸症候群。
寝てるときに息が止まるアレ……だよね。
「睡眠時無呼吸症候群って、死ぬようなものじゃないはずなんですけどね。脳血管障害とか、心臓病のリスクが高まるだけで」
「む、こっちはそう聞いておるぞ? まあ間接的な原因が睡眠時無呼吸症候群なんじゃろう。まったく、上も雑な仕事をするのう……とにかく、お前は死んだ。良いの?」
「はあ、わかりました」
上とかよく解らないけど、死んじゃったならしょうがないか。苦しくなかったから良いかな。痛かったり苦しかったりしてから死ぬよりは、ずっと良い。
無駄に長生きして苦しんで死ぬよりは、若くても楽に死ねる方が僕にとっては理想的だ。
「それで……転生? なんで転生するんですか? 睡眠時無呼吸症候群で死んだら全員転生するってルールなんですか?」
「いや、お主の魂が……その、なんつーか……無気力だったからの」
「無気力……ですか」
確かに僕は今言われた通り、普段から無気力そのもので、やる気なんて欠片もない人だった。
両親という寄生対象におんぶにだっこで生きてきた、自堕落極まりない存在だ。
「確かに僕は世界の塵というかお荷物というか、存在していても利益がない、まるでのどちんこや盲腸みたいな存在ですね」
「自己評価容赦ないの!?」
「事実ですし。で、そんな無気力な人間を転生させてどうするんですか? もっとやる気のある人間に回してあげてくださいよ。もっとこう……『イェェェアアア俺はまだ死ねないぃぃぃぃ!』みたいに死んだ人の方が良いでしょ、そういうのは。じゃ、おやすみなさい」
「待て、最もらしいこと言いながらさり気無く寝に入るでないわ。あと今の妙に気合いの入った芝居はなんじゃ」
お布団が目の前から消え失せる。瞬きすらしてなかったので、本当に消失って感じで消えてしまった。
……夢じゃないみたいですね、これ。
はー。めんどくさいなー。お布団が恋しいなー。
こんな主人公です。丁寧系無気力……かな?
今回は吸血鬼ものですね。吸血鬼は数年ぶりに書きますが、何回やっても好きな題材です。
ロリババアではなくロリジジイです(断言)
一話から一人も名前が明らかにされていない有り様ですが、よろしくお願いします。




