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転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい  作者: ちょきんぎょ。
本編

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転生吸血鬼さんの憂鬱

最終章のめどが着いたので、ぼちぼち更新していきます

「お主の魂は、世界に合っておらなんだのだ」


 そんな言葉をかけられて、僕は別の世界へと転生を果たした。吸血鬼の美少女、アルジェント・ヴァンピールとして。

 はじめはお昼寝ができればそれでいいなんて思って、三食昼寝付きで養ってくれる人を探していた。

 それがどういうわけか、こんなところまで来てしまった。


「……あれが、帝国の帝都ですか」


 見上げてみれば、そこは異様とも言える姿をしていた。

 高く積み上げられた壁はこの世界で今まで見てきた中世的な、石造りのものとは大きく異なっている。

 明らかな鉄と、何らかの機械的な機構が組み込まれているとわかる壁は、中世ファンタジーというよりは、SFの世界にでもやってきたような印象を受ける。


 なによりも異質なのは、昼間のはずの空には巨大な月が浮かんでいて、帝都の上空だけ影のようにして暗かった。話には聞いていたけれど、本当に帝国は常に夜の状態らしい。

 まるでもう一度転生して別の世界に来たような錯覚さえ得ながら、僕は溜め息を吐いた。


「帰りたい……」


「え、もうですの!?」


 しみじみと呟いた言葉に、隣にいる狐娘のクズハちゃんからツッコミが飛んできた。


「いやだって、面倒くさいの確定なんですもん、なんですかあれ、都というよりは要塞でしょう……?」


「心配しなくても、今からあそこに入るのよ。つまり外向けの防備は気にしなくていいってことでしょ」


 気軽な調子で言葉を作るのは、元王国騎士という肩書きを持つフェルノートさん。長く戦争を続けていた帝国と王国、その王国側の軍人だっただけに、肝が座っている。

 今、僕たちは帝都を目前に行進しているところだ。

 反乱軍の面々とともに、僕たちはクズハちゃんお手製の帝国の軍服に着替えている。


「帰参した兵のふりをして、中に入る。そこから先は……ある程度の臨機応変さが求められるな」


「あの壁ができてから、帝都の中ってわかんないしねぇ」


「行ってみるしかないですね! シオンも帝都の外にある研究所で生まれてそこからでたことないですし、ほとんど知りませんよ!」


「なんで得意げなんだよぉ……」


 反乱軍の主要なメンバーであるギンカさんやシオンさん、クロムちゃんも、荒事に慣れているためか気負った様子はない。


「……同胞が、無事だといいのですけれど」


「それを確かめに行きましょう、リシェルさん」


 ダークエルフの里の長であるリシェルさんは、かなり緊張している様子だ。放っておくと直ぐにでも弓を引きそうなので、落ち着かせるために言葉を渡しておく。


「中に入ったら、私たち反乱軍は帝王を抑えにかかる。協力者の君たちには協力はしてもらうが、ある程度は好きに動いてくれていい。お互いの目的のために、お互いの存在が有利になるだろうさ」


「分かりました」


「各地で反攻作戦が起こっているし、共和国もこちらの打診通りに侵攻を開始している上に、王国も大規模に動いた。帝都はまだ、手薄なはずだ」


 話している内に、僕たちは帝都の前までやってくる。

 遠くにあってさえ巨大だと思った壁は、目の前にしてみるととんでもなく高い。

 入り口だと思われる鉄の門すらも何メートルもあり、中の様子はいっさい覗けない。

 海側は空いているようだけど、そちらは船がなければ入ることは出来ないので、入るならここからになる。


「んん、んんっ……我ら、部隊番号45番! 反乱分子を鎮圧して戻ってきた! 門を開けられよ!!」


 おそらくは帝国の言葉でギンカさんが声を張り上げて、程なくして、鉄の門がゆっくりと開く。

 ごうん、ごうん、という音は明らかな機械の音であり、目の前の技術がこの世界とは違うところからもたらされたのものであるということを、ひどく感じさせた。


「……行きましょう。アルジェさん」


「はい。お願いしますね、青葉さん」


 僕の仲間で、僕の過去と事情を知っているのは、同じ家からの転生者である青葉さんだけ。

 面倒を追い払うように頷いて、僕は一歩を踏んだ。

 これが終わったら、ゆるやかにお昼寝を楽しめると信じて。

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