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転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい  作者: ちょきんぎょ。
本編

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238/283

答えを探しに

「……ざっくり概要を説明するとですね、まず反乱軍およびその協力者たちが各地で同時に発起します」

「猟犬や吸血鬼部隊はともかくとして、普通の兵士たちはその鎮圧にかり出されることになるだろう」

「……でぇ、その混乱に乗じてボクたちは帝都に入るんだなぁ?」

「ああ。そしてその情報はすでに共和国にいる知り合いに伝えてある。決行のタイミングもな。うまくすれば、共和国も協力してくれるだろうさ」


 ギンカさんの知り合いというのは、サツキさんのことだろう。

 一通り説明を終えたところで、シオンさんがどこか遠くを見るような目をして、


「ようやく、戦いも終わりそうですね」

「……お前ぇ、負けること微塵も考えないよなぁ」

「総力戦ですから。これで落とせなければ終わり、落とせても終わりです。だったら……」

「落としたときのことを考えた方が健全ね」

「はい、さっすがフェルノートさん、よくお分かりです」


 にっこりと笑ってシオンさんが締めくくったタイミングで、すぅ、と手が上がった。

 全員の視線が集まったのは、褐色のダークエルフ、リシェルさんだ。彼女は紫の瞳で周囲を見渡して、視線が自分に向いていることを確認してから口を開く。


「あの……お話は、資料を読んで分かりました。けれど、どうやって帝都の中に入るんでしょうか。さすがに厳しいのでは……?」

「どうやって帝都に入るかってところが気になってるみたいですよ?」


 翻訳すると、ギンカさんは静かに頷いた。


「確かに、いくら手薄になるとはいえ簡単には入れてくれることはあるまい。だからそこは策をひとつ、考えている」

「私が! 変装用具をつくりますのよー!!」


 待ってましたとばかりに手をあげたのは、僕の友達であるクズハちゃんだった。


「変装用具ってもしかして……」

「はい、この間のこれですわ!」


 興奮した様子でクズハちゃんが取り出すのは、彼女が作成した帝国の兵士が身につけている軍服だった。

 彼女の裁縫技術で再現されたそれの完成度は高く、本物の軍服といわれてもまったく疑う余地がない。


「ぶっちゃけ趣味で作ったんですけど、ギンカさんが閃いたらしくて……今、分身たちに急いで造らせているところですの」

「……ええと、リシェルさん。変装して潜入というか、中に入るそうです」

「なるほど……そういうことなら分かりました」


 納得したらしく、リシェルさんはぺこりと丁寧にお辞儀をする。

 彼女にとっても、同胞を救うための戦いだ。作戦の内容は気になるということだろう。


「首尾良く中に入り込めたら、帝都の各地で同時に戦場を展開する」

「一度、別行動になると言うことですね」

「ああ。組み合わせはこちらで決めておこうと思うが……異論は?」

「私はアルジェさんと一緒が良いんですが……」

「あ、それなら私もそうしてほしいわ」

「私もですの! 友達ですもの!」

「ええと……よく分かりませんが、手をあげるところなのでしょうか……?」

「君たち、遠足に行くんじゃないんだぞ……」


 よく分かっていない様子で手を上げているリシェルさんはともかくとして、他の人はちょっと過剰だと思う。

 ちらりとクロムちゃんの方を見ると、彼女は何故か自分の手を押さえつけるようにしていた。


「どうかしたんですか、クロムちゃん、手が痛いんですか?」

「ち、違うよぉ! 気にするなってのぉ!!」


 なぜか顔を真っ赤にしているけど、なにか怒らせてしまっただろうか。


「……収拾がつかなくなりそうだから、組み分けはこちらで決めておくぞ」


 最終的にギンカさんがそう結論づけて、騒がしくなりかけた会議は落ち着いた。


 ……帝国、ですか。


 転生したばかりの頃はそんなつもりは無かったのに、いつの間にか戦争に巻き込まれることになってしまった。それも、自分から進んで、だ。

 だけど、問わなくてはいけないことがある。僕はもう玖音の人間ではないけれど、それでも。


「……僕は、間違っているのかな」

「? どうかしましたの、アルジェさん」

「あ、いえ。なんでもありませんよ、クズハちゃん」

「…………」

「……? クズハちゃん?」

「……なんでもありませんわ」


 どこかむすっとした様子で、クズハちゃんはそっぽを向いてしまった。

 さすがに、なんでもない、という言葉が本当ではないことは気付かれているのだろう。分かっているけれど、僕はそれを追求はしなかった。


 ……巻き込みたくないんですよ。


 クズハちゃんたちは、僕がこの世界に来てからの知り合いだ。

 転生前からの僕のしがらみに、彼女たちを巻き込むつもりはない。

 こうして一緒に旅をしてくれて、ついてきてくれている時点で、もう充分すぎるほど巻き込んでしまっているのだ。

 これ以上、僕のわがままという重荷をみんなに背負わせることは出来ない。


「……アルジェさん、あまり気負わないでくださいね」

「ええ。分かってますよ、青葉さん」


 心配してくれる青葉さんの言葉をどこか遠くに感じながら、僕はそう応えていた。


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