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まいごのこいぬ

2話まとめて入っちゃったのであげなおしました。すみませんー。

「……それで、テリアちゃんはどうしたんですか?」

「……元々、俺たちは帝国には戻るつもりは無かったんだ。ただ、帝国の宣戦布告があってから、おやぶんは少しばかり、上の空が多くてな」

「ああ、やっぱり、テリアちゃんたちは帝国の……」

「知ってるなら話が早いな。だが、俺たちは帝国に戻る気はねえ。それはおかしらも同じだろうよ」


 ふたりの言葉で、僕は疑念を確信に変えた。

 転生したばかりの頃に出会った三人の盗賊。テリア、チワワ、ダックス。

 その三人の名前は、偶然なんかではなく、僕と同じ世界からの転生者によって、犬の名前から取られたものだったのだ。


 ……最初から、僕は玖音から離れてなんていなかったんですね。


 転生して、家とは関係なくなったと思っていた。

 けれど転生してはじめて出会った彼らすら、玖音と関わりがあったのだ。

 過去の命を失っても、過去の記憶を失った訳では無い。


「どこまで行っても、昔のことはなくならないものですね」

「……ああ、そうかもしれねえな」

「気にしないでください。今のは独り言です」


 首を横に振って意識を切り替えて、僕は改めて、ふたりに言葉を投げた。


「テリアちゃんはどうなったんですか?」

「……俺たちは盗賊団だ。シマがかぶっちまうときもある」

「つまり、似たような獲物を狙ってしまったってことですか?」

「ああ。それでおかしらは、俺たちを逃がすために……あいつらに捕まっちまった……クソッ!」

「……なるほど」


 つまりテリアちゃんはふたりのために、囮としての役割を引き受けたということか。


 ……部下思いなんですね。


 何度か会う度に思っていたけど、彼らは仲良しだ。

 それはとても、玖音によって作られた私兵とは思えないほどで、そのあたりが彼らがクロガネさんのところを去った理由なのかもしれない。

 クロガネさんが作った猟犬部隊と対峙したときとは違う、明確な意思、端的に言えば心のようなものを、彼らからは感じるのだ。


「……皆さん。ちょっと寄り道をしたいんですが、構いませんか?」


 自然と、僕はそんな言葉を紡いでいた。


「構いませんわよ! よく分かりませんけど、アルジェさんが行きたいのでしたら、私はついて行きますわ!」

「……アルジェ様のお知り合いが困っているのであれば、わたくしもお手伝いさせていただきます」

「よく分かりませんが、アルジェさんがそうしたいなら構いませんよ」


 クズハちゃん、リシェルさん、青葉さんが、軽い調子で頷いてくれる。

 フェルノートさんのほうはオッドアイを微妙に歪めて暫くこちらを見たけれど、やがてどこか呆れたように溜め息を吐いて、


「……さすがに、本当にそのふたりが芸人だなんて思ってはいないけれど」

「ダメ、ですか?」

「私ももう、王国の宮仕えじゃないもの。そこまで頭を硬くはしてないわ。ただ、危険だと思ったら……」

「その時は、僕が責任を取りますから」

「……アルジェがそこまで言うのも、珍しいわね」


 ふぅ、ともう一度大きく溜め息を吐きだして、フェルノートさんは首を振った。


「いいわ。あなたがそこまで言うなら、少し寄り道していきましょう」


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