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純血のかぐや姫  作者: 瑞希
輝夜姫 ~嫉妬が国~
8/29

〈状況整理〉

「ではカグヤ様。ここで…」

部屋の手前まで着くと、ラムセスが部屋のドアの前に居た。

アドリアナはラムセスの姿を見て、頭を下げながら、来た道を戻って行った。


「すみません。勝手に出てしまって。」

私はアドリアナの姿を目で送ると、小走りでラムセスの前に立った。


「貴方が無事なら構わない。

 体調はどうだ。」

色が見えないから解らないが、その言葉からして、心配していたのだろうか。

それとも単なる建前。


まだ会って間もない。

悪い人とは思わないが、手放しに信用はできない。

ここに来て、初めて会った人だから信用したいんだけど。


「快調です。」

「それなら良かった。

 今日から王として過ごすことになるが問題ないか」

私はしっかりと頷いた。

何はともあれ、一度決めたことは責任をもって、しっかりと果たそう。

自分で決めた事なんだ。

どうせなら、うんと立派な王になって見せよう。


「12時から昼食。

 1時から魔術勉強。

 2時から魔法学

 3時から社交。

 4時から外交。

 6時から語学。

 7時から夕食。

 8時から会議。」

ほぼ1時間ペース。

少なくとも、8時までは予定でぎっしり。

でも、王様ってこんなもんなのかな。

弥扇の時とそこまで変わらない気がするし、学校の延長みたいなものでしょ?

これなら、大丈夫な気がする。


あ、それより今は何時だろう。

そもそも昨日、朝だったか夜だったか。

周りの景色をロクに見て居なかった。


「あの、今って何時でしょうか?」

「11時だ。」

てことは、昼食の時間まで、あと1時間。

…何をしたらいいのだろう。

自由に行動しても良いのかな?

ってさっきまで自由行動してたけど。


「12時までは何をしていたら良いでしょうか」

「私が傍に着いていれば、自由にして頂いて構わない。」

単独行動はやっぱりダメだったようです。

何か地味に釘を刺された…。

でも、ランジャさえ付いてれば良いみたい。


「あ、じゃあ、お風呂に…」

「解った。」

ラムセスは頷いて歩き出した。

おそらくお風呂場へ向かっているのだろう。

黙ってついて行こう。


「ここだ」

温泉によくある、女、男と書かれたのれんの前でラムセスは言った。

正直、弥扇の家より大きい以外は変わらない。


「ありがとうございます」

私はラムセスにお辞儀をして、いそいそと女湯の方に入った。




「で、ラムセス?」

「なんだ」

なんだ、じゃないよ。

服とか体を拭く布を持ってきてくれたのは嬉しいけど、何故まだ居るの?

ついでにその手は何?

まさかとは思うけど、服を脱がせようとしてない?


「自分でやりますから…!」

脱がせようとしているラムセスの手を力一杯押し退けて言った。

緋子さんも、当初似たような事をしようとして居た気がする。

でも、ラムセスは腐っても男だと思うんだ!?


「そうか」

ラムセスは特に気にする様子も無く、手を引っ込めた。


「すみません。出てください…」

「…何か有ったときに守れない」

今まで反論された事がなかったので私は、それもそうですね、と言いそうになってしまって慌てて首を振った。


「男性に!いいえ。

 人に肌は見せられません!」

よくよく考えてみれば、女性に見せるのだって抵抗がある。

それに、何か有ったときって、城の中だし何もないでしょう。

王様を狙う理由なんて無いはず。


「…そうか。すまない」

表情こそ変わってないが、ラムセスが若干落ち込んだ気がして私は慌てて首を振った。


「い、いえ!あなたが悪い訳では…!」

「では、ここに居ても」

「それは駄目です。」

私は反射的にスパッと言った。


「…分かった」

ああ、本当に落ち込んでしまった気が。

顔は変わってないんだけどね。

でもまた慰めたら繰り返しになる気がしたので、ラムセスを見送った。




「…あーー」

お風呂の気持ちよさに、思わず声が出た。

もう少し気が抜けていれば歌ってしまいそうなほどに気持ちいい。


気持ちも程々に落ち着いた所で、状況を整理してみよう。

私はおそらく異世界であろう、この地に何故か居て、そしていつの間にか契約していたがために、この国の王となった。

突拍子もない話だ。

でも、こうしてお風呂の気持ちよさに浸っているのだから、夢ではない。


魔術とか言ってたけど、肝心のその私が、魔法を使える気がまるでしない。

ほうきにまたがったりするのだろうか。

…痛そう。

あとは、相手を呪ったり?

うーん、禍々しいって言うか、完全に悪役…。

そんな国の王になってよかったのかなぁ。

いきなり隣国に滅ぼされたり…って、他に国とかあるのかな。


「よし、やめよ。

 考えて状況が変わる訳じゃないし」

考え込みそうになった気持ちを振り払うと同時にバッと立ち上がりお風呂から上がった。


ラムセスが持ってきてくれた着替えは、袴だった。

慣れてないので、着付けは戸惑ったが、着て見ると動きやすく楽だった。

これなら走り回れる。

…王様がそんなことしちゃダメな気がするけど。

祖国の神皇なら絶対しないよね。

うん。走り回るのはやめよう。

御淑やかに、御淑やかに~。


「上がりました…」

のれんを上げて出ると、ラムセスが立っていた。

急いで上がったつもりだったが、待たせて居たのなら申し訳なかった。


「湯はどうだった」

「え?あ、はい。

 とても良かったです!」

ラムセスはやはり表情は動いていないが、なんとなーく笑った気がした。

表情が動いて居ないのだから、私の思いこみなのだろうが、私は嬉しくて微笑んだ。


よし、疲れも取れたし!

これから王様として頑張ろう!

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