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純血のかぐや姫  作者: 瑞希
輝夜姫 ~嫉妬が国~
7/29

〈国王〉

んんん!?王!?

なんで!?説明飛びすぎじゃない?


「ちょっと待ってよ…。

 まず、何で私?!」

突っ込みどころは色々あるが、まずはここだろう。

もしかしたら、誰かと勘違いしてるのかもしれない。

うん。人違い。そうに違いない。私が王なんて非現実的すぎる。


「首…左横に契約印がある」

首?左横?ラムセスにそう言われ見ようとしたが、

この角度で見える訳がない。一応触ってみると、

何となくざらっとした感覚があった。

急いで周りを見て、小さな池がある所に走った。

池を見て、髪を押さえながら、

首を右の方に曲げると紫色の蛇と目があった。

いつの間にか首に蛇のイレズミのようなものが彫ってある。


(………誰かは知らんが、会ったら訴えてやろう。)

私は心に誓った。

か弱き乙女にイレズミを勝手に彫るなんて…。

許されざる行為だ。普通に犯罪だ。

いや、それは置いといて…。

「じゃあ、私が王様にならなきゃいけないの?」

後ろから追いかけてきたラムセスを水越しに見ながら言った。

別に良いけど、なんか勝手に決められて、ちょっとムカつく。

結局、異世界に来ても、

自分の運命もロクに決められないのか。


「すまない…。

 だが、貴方が望むなら、

 一緒に逃げることもできる。」

私は思わず目を見張った。

てっきりラムセスはこの国側の人間だと思っていたのに

会って間もない、私の方に味方してくれるというのだから。

さっきまでの怒りが嘘のように浄化されていった。

我ながら単純すぎる。


「でも逃げたら、ここの人が困るんでしょう?」

「………ああ。」

ラムセスは本当に小さな声でそう言った。

ラムセスにとってはこの国も大切なのだろう。

逃げたところで何も解決しない。

それならいっそのこと立ち向かってしまおう。

少なくとも人のためになるのだ。


「ううん。やるよ、王様。

 良い王様になれるよう、努力する。」

「…………そうか」

来てしまって、契約してしまったものはしょうがない。

他に当てもないのだ。

頑張って努力して、良い王様になろう。


「さぁ、今日は休め」

「えっ…」

「こっちだ。」

ラムセスは私の返答は聞かずに歩きだした。

私は驚いて慌てて追いかけると、

大きな布団が置かれた紫と白の綺麗な部屋に着いた。

ちょっと、風変わりな旅館のようだ。


「…何かあったら呼んでくれ」

ここで一人ぼっちとはいうのは少し心細いが、

家に居る時と変わりないか。

読んだら来てくれるらしいし。


「うん、わかった。おやすみなさい」

私がラムセスに向かって、小さく手を降ると部屋を出ていった。

私は少し間を取ってから、きびすを返して、布団に倒れた。

思いのほかふかふかで気持ちいい。

部屋にはホコリ一つないし、畳のワラの匂いが落ち着く。

…お風呂入りたい、歯を磨きたい…。

ラムセスを呼ぶのも悪いので我慢して無理やり眠った。




「ん…」

外の騒がしさに目が覚めた。

頭を押さえて扉の外を見た。

一日寝たけどやっぱり記憶は戻らない。

まさか、最後の記憶がひとしになるなんて。

あれから、どのくらいの時間が経っているのだろう。

緋子さんは心配してないかな…。

時間が経ってないといいけど…。


「外に出て良いかな…。」

良いよね。と私は自分に言い聞かせて、

ドアを開けると、人が十人ほどいた。


「どちら様ですか…?」

聞いてはみたものの、お城の中に居るってことはお城の人だろう。


(あれ………なんか…見覚えのある顔が…)

だが、明らかに背丈や瞳の色が違う。

ただのそっくりさんだろう。

それにしても似てるなぁ…。


「はっ!城の門番であります!」

やっぱりお城の人かぁ…。門番って感じだな、口調とか。

門番なのに門番してないけど、いいのかなぁ。


「私は魔術学者のメイです。新しい王様!」

どうもこんにちは。芽李めいちゃんのそっくりさん。

薄紫色の瞳に茶色の髪で少し大人っぽい。


「こ、こんにちは…。

 私はアドリアナです………」

一際小さい女の子が、私の足元に立っていた。

薄赤い瞳に、茶色の髪。この子だけは瞳の色も名前も違う。

緊張してるみたいだ。注意深く聞いてみると声が少し震えてる。


「は、はじめまして…。」

私がそういうと、アドリアナは嬉しそうに笑った。

アドリアナは顔だけなら緋子さんに似ている。

この人たちは、新しい王様がどんな人か見にきたのだろう。


「王様!お城を御案内します!」

アドリアナがにこにこ笑いながら、私の手を握って走り出した。

身長差のせいでコケそうになりながら追いかけた。


「ここは書庫です!

 世界中から集められた本があるんですよ!」

とても大きな部屋だ。図書館くらいある。

なんせ、二階まであるのだ。

どのくらいの時間があったら読めるだろう。

考えるだけでもドキドキする。


「アドリアナ。遊びに来たのですか?」

階段のうえの方から声がした、紫色の瞳に黒い髪。

眼鏡をかけた背の高い…。りんちゃんのそっくりさんだ。

声は…良く解らないな。とりあえず冷静な人だ。


「ううん!カグヤ様を案内してるの!」

アドリアナがりんちゃんのそっくりさんの方に元気一杯に声をかけた。


「カグヤ様?友達ですか?」

一瞬睨まれているのかと思ったが、メガネをかけると元に戻った。

目を凝らしていただけのようだ。よほど目が悪いらしい。


「違うよ!王様だよー!」

アドリアナは口を尖らせてそう言った。

りんちゃんのそっくりさんは驚いた顔をして、階段を下りてきた。


「新しい王ですか。失礼しました。

 私はリンです。ここの管理を任されております。」

驚いたそぶりを見せたが、

その声はあまり動揺しているようには聞こえない。

りんちゃんとは似ても似つかないな。

ここの管理をしてるってことは、図書委員さんってとこかな。


「はじめまして。」

私は遠慮がちにお辞儀をした。

それにしても、この膨大な本の量をどうやって管理しているのだろう。

パッと見ても、ホコリまみれには見ない。

よほど優秀な人なのだろうか。


「ああ。そういえば、ランジャ様が探していましたよ。」

「えっ。大変!早く戻りましょう!」

アドリアナが私の服のすそを引っ張って急かした。

ランジャって確かラムセスのことだよね…。

本当にみんな称号で呼んでるんだ。

もしかして、みんなが名乗ってたのも称号?


「リン様!またね」

「失礼しました。」

「はい。また、いつでも来なさい。」

そう言ってリンさんは本当に微かに笑った。

冷静な人ではなく、穏やかな人だったのかも知れないと、

図書室…ではなく書庫をあとにしながら思った。

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