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純血のかぐや姫  作者: 瑞希
色欲が国 ~マルトゥラ~
26/29

〈神のシナリオ〉

「カグヤ様!!!」

部屋の扉を明けた途端、中からアドリアナが飛び出してきた。


それを受け止め、私は泣きじゃくる彼女を撫でて部屋のなかを覗いた。

「主…」

七志の青ざめた顔が見えて、さすがに悪いことをしたなぁと気付いた。


中にはラムセスや大貴だけでなく、命さんや臨さん、シンゲンさんもいる。

「無論、無傷です。

 王と会合をして居りました。

 心配をさせてしまって済みません。」

私はそう頭を下げ、アドリアナを抱き上げ部屋の中に入った。

私が部屋の中に入ると同時に、七志が扉を閉めてくれる。

それと同時に、大貴もカーテンを閉めてくれた。


「ありがとうございます。」

そう言ってからアドリアナを下ろし、私はアンナさんとルイスさんに説明されたことをそのまま説明した。




「………随分と大変なことを一人で判断されましたね」

臨さんの、少し皮肉めいた言い方に、私は苦笑いをした。

「すみません。」


すると、今度は大貴が眉を潜めた。

「俺はそれよりも、突然幻覚使われて消えたことに驚いたがな。」


「あはは…」

まあ、あの会話をマフィアの人に聞かれたら元も子もないからね。

例え誰であろうと…。

まあスコルピオーネさんが居たから、ラムセスは居ても良かったかも知れないけど。


と、そのラムセスが私の前まで来てジッと見つめてきた。

何だろう…と首をかしげたら


「本当に心配した。」


と、人からは無表情にしか見えない顔で言われた。

「……ごめんなさい」

大声で怒鳴られるよりもずっと心に堪えましたとも…!


もう二度としません…多分。

なるべく。きっと。おそらく…。


「………解った。

 俺が離れないようにする。」

本当にごめんなさい…。


「新王とはこういう人だったのか…」

あ、シンゲンさん。

幻滅させてしまいましたか?

でも人間そうそう変われないので、放置しておいてください。


「気に入った!」

まあ、そんなことを気にする性格ではなかったね。


「それは光栄です。

 こらからもよろしくお願いしますね」

私はシンゲンさんにそう微笑んでから、さて…、と気を引き閉めた。


「早速ですが、まず私はオリエントへ向かいます。

 とても危険な任務です。

 立候補者はいますか…?」

居なければ私から指名となってしまうけど…、まあ誰かがやらねばならないのだから諦めてほしい。


…と思ったら、全員あげるのね。

「その質問は無意味だろうな。

 俺はお前の護衛役で、魔法の教師だ。

 日々の鍛練は怠るべきじゃない。」

それもそうですけど…、鍛練だけなら一人でもできますよ?

やけに力説してきますね。


「俺は主の従者だ。

 ここに残ってもなんの役にも立たない。」

七志…何をどや顔で言っているの?

知ってるわよ。

貴方が意外と要領が良いの。

ここに残っても色んな人の手助けができるでしょう。


「私はあらゆる面で交渉ができますよ。

 この国における常識も兼ね備えています。

 必ずや貴方の役に立つでしょう。」

臨さんは…、確かにそうでしょうね。

何らか困る場面は多くあるでしょう。

そう言うとき、頼れる存在が居るというのはとても心強い…。 


「貴方の身を必ず守ると誓おう」

簡潔にして分かりやすいですね、シンゲンさん。


「私は特に役に立ちません!

 お酒ください!」

はい。お留守番しててくださいね、命さん。

何で行きたくもないのに手をあげたんですか?

どうぞ海の酒というのを堪能しつつ、仕事してください。


「私は美味しいお茶と、お菓子が作れます」

アドリアナ…それってマフィアと何にも関係ないよ。

そんなのもちろん…


「採用。」


「「「はぁ?!」」」


異論は認めません!

とりあえずアドリアナ確定ね。


「まず、シンゲンさんには、もしもの時にドッシリと構えて貰わねばなりません。

 ここに残る人々を守ってください。」

騎士団長を連れていくなど言語道断。

シンゲンさんもそれが解っていたようで、少し残念そうな顔をしただけで頷いた。


「あとラムセスも、お留守番でお願いします」


真面目な顔で言ったらスッ…とラムセスに見られた。

えっと…怖い……です。


「離れろと?」

んんっ…。

そうだね!今の今離れないって言ったところだったね!


でもね!だけどね!

「ラムセスって目立つんですよ……」

端整な顔といい、綺麗な長髪といい、身長といい、髪も目も!

何もかもが目立つんです!


「……………。」

ラムセスがすんごく苦い顔をした。

これはさすがに人から見ても解ると思う。


「もしもの時は、お願いしますね」

ラムセスは少し不満そうな顔をしながらも、頷いてくれた。


「あとは臨さん、お願いします。

 それと隠密に七志。

 ここ、本部への情報伝達等をお願いします。」


「王の御心のままに」

臨さんはそう誇らしげに笑い、礼をした。


けれどそれを止める声がひとつ。

「ちょっと待て

 それじゃあ護衛役が一人もいない。」

大貴さんが私と臨さんの間に割って入ったのだ。

真剣な顔半分、どや顔半分。


残念だったね大貴。

「私も十分戦えると自負しております。」

そう微笑んだのはアドリアナだ。

確かに大貴ほどではないけれど、護衛役ならアドリアナでも十分務まる。


「何でしたら、今ここで証明致しましょうか?」

何処からか取り出した短剣を構え、アドリアナは大貴を鋭く睨み付けた。


「…ああ。良いだろう。」

大貴はその視線を受け止め、一瞬で腰から剣を抜き構えた。


いや。


「無しですから。認めませんから!」

私が声を張り上げると、一瞬でアドリアナが短剣を仕舞いかしこまりました。と身なりを整えた。

それを見た大貴も少し目を細めてから、溜め息を吐いて剣を仕舞った。


「分かりやすく護衛役を連れていっても警戒されるでしょう。

 いざと言うという時はアドリアナも居ますし

 私も少しは魔法が使えるようになりましたし

 七志もいます。」

私はそう自信満々に微笑んだ。

…けれど大貴はなおも少し不安気だ。


「大丈夫です。

 私は死んだりしませんよ?」

ふと見るとラムセスや信玄さんまで心配そうな顔をしている。

いや、ラムセスはいつも通り無表情なままなんだけどね。

「だーいじょうぶです。

 私はさながらモーセさんなんですよ?

 ラムセスくらいにしか負ける気はしません!」


モーセさんが伝わるとは思えないけど、別に伝わらなくても良いんだよ。

ん…これが世に言うフラグ?

いやいやいや大丈夫。

「ラムセスくらいにしか殺されません!」

と言っておけばラムセスに殺されるフラグが立つはず。

でもラムセスは私を殺さないのでこれで、私は死なない。


…別のこの世界ゲームの世界とは思わないけどさ。

ステータス!とか言ってみても何にもでないし。

悪魔とかは居るけど私はそれよりも外交なんだ、これが!!


「ではアドリアナ。

 すみませんがもう一度身支度をしていただけますか?

 物は必要最低限でお願いします。

 時期に、オリエントに行くことになる筈です。」

私の言葉に、アドリアナは可愛らしい顔で、けれど頼もしく笑った。


ここがゲームの世界でないのなら、元の世界とはどういう関係なんだろう。

全くの別次元?

パラレルワールド?

何にしても、私が此処に来られたからには何らかの繋がりがある。

その繋がりを使えば、使えてしまえば、いつか私はまたあの世界へ帰ることになるかも。

…でも正直、弥扇の家へは帰りたくないなぁ………。

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