〈姉というキミ〉
「………なんか増えてる。」
山を降りると、迎えに来てくれたらしい大貴がおかえり。もなしにそう言った。
あれだね、不遜?不躾?無礼?だね!!!
私、仮にも王様だよ!
たった今、戴冠式も済んだからね。
まあ、それはそうと
「私の妹です!」
大貴と、どこかに居るであろう七志に向かってそう言った。
臨さんや命さんは、基本的に城を離れることはないらしい。
アドリアナはまちまちで、今回は来てない。
「は…はぁぁあ…??」
大貴は殆ど息みたいな声を発した。
眉間に皺寄せて…なんか疲れてるみたいだけど、どうしたの大貴。何かあった??
「疲れさせたのは、間違いなく其方じゃ。
お…、姉さんのな。」
セーラの言動に、思わず顔がニヤニヤしてしまう。
何て悪戯っ子な子なのだろう。
気が合いすぎる。
するとセーラは大貴に向き直って口を開いた。
「妾、実は孤児なのじゃ。
身寄りがなくてのぉ…
そんな妾を輝夜が救ってくれたのじゃ
心身ともにの。」
心身っていうより…物理。
川で溺れてたセーラを思い出して微妙な顔になった。
「な…っ」
大貴は途端に目を見開いて身じろぎした。
「お前、孤児だったのか…
そうか…
そうとも知らず辛く当たったすまなかった…!」
と、大貴は半泣きで言って、ガバッと頭を下げた。
デジャブ!
七志の時と似たような流れだね。
「いやいや、仕方のないことじゃ…
親のことも国のことも忘れた妾は、どこの馬の骨とも知れぬ要らない子…」
セーラは言いながら後半、手で顔を隠しておいおいと泣いた(多分ふり)。
違うのは、相手が確信犯ってとこだけだね!
そういうとこも好き!
「そ…、そんな訳ないだろ!!!
この世に要らない子なんて居ない!」
遂には本気で泣いてしまった大貴の言葉に、セーラはピクッと反応し、少しの間を開けて微笑んだ。
「ここに居て…、良いかの?」
「もちろんだ!!!」
あ、大貴がほだされた。
…大方、明らかに演技だったけど…。
でも少しの本心も混じっている気がして、それが余計に切なかった。
まあ、私もほだされた?うちの一人だし!
そう心のなかで苦笑しながら、セーラの手を優しく握って帰路へついた。




