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純血のかぐや姫  作者: 瑞希
輝夜姫 ~嫉妬が国~
11/29

〈シシャ〉

「てか、何で探してたの?」

「は?次の授業が魔法学なんだよ。」

リンさんがそう聞くと、何を今更、という感じでタイキさんが答えた

もしかして、タイキさんが魔法学の先生なのかな。


「だから?」

「だからって…、俺の出番だろ!?」

リンさんが更に聞くとタイキさんは焦ったように言った。


「………?」

「不思議そうな顔すんじゃねぇぇぇえ!!!

 俺は!俺は!俺は魔法学の先生だぁぁぁあ!!!」

何だか、泣きだして走って行ってしまいそうだ。

気にしてるのかな。

良く分からないけど。


「…あー。そーだった。そーだった。」

そんなタイキさんの大袈裟ともとれる言動に対して、リンさんは適当に受け答えた。

自分で聞いたのに…哀れなタイキさん。


「くっ…。

 行くぞ!新王!」

「あ、はい」

気のせいか、タイキさん泣いてない?

気のせい?




「俺はかし タイキだ!」

タイキと共に、広場のような所へ着くと、タイキは自己紹介をした。


「かぐやです」

私も、自己紹介し返した。

フルネームで言うべきなのだろうが、弥扇と名乗るのは嫌だったし、

元の名字で名乗るのも、しっくりこなかった。


「かぐやって呼んで良いのか?」

「はい。」

タイキは不思議そうに少し、首をかしげて言った。

私は二つ返事で言った。

むしろ新王と言われるのは少し嫌だ。


「では、かぐや」

タイキは突然私に手を差し出した。

握れ、ということだろうか。

握手?

私は心の中で首をかしげながら、右手を出した。


「……光。…水、海水。…炎。」

タイキは目を瞑りながら、ボソボソとそんな事を言ってから、手を離した。


「お前、変わってんなぁ~。」

タイキはそう言ってから面倒くさそうに欠伸した。


「何がでしょう…?」

なんか急に変わってるなと言われた。

嫌みなのか、ただそう思っただけなのか、色が見えないから分からない。


「ああ、今お前の属性計ったんだけどよ。

 さっきメイに習わなかったか?

 光は有り得ない。とかよ」

私の属性を計った?

いつの間に?

…もしかして、握手で計れるものなの?

タイキは確か、光。水、海水。炎って言ったよね。

……………光?!


「だから変わってんなぁって!」

タイキは私が驚いたのを見て満足そうにニカッと笑って見せた。

なぜ満足そうなの?

いたずら小僧なの?


「ま、秘密にしといてやるよ!

 でもって、俺は大きな貴族の貴で大貴な!

 覚えとけ!」

大きな貴族の貴で大貴たいき

ふむふむ。随分高貴な名前だね。

って、あれ?!

命字教えて良いの!?

ていうか、光なのって内緒にするべきですか?!


「ん?どうした?」

しばらく考えて、俯く私に、大貴が聞いた。


「…光は疎まれると聞きました…。

 何故でしょう…。」

疎まれるなら、それ相応の理由があるはずだ。

それが自分自身なら、対処のしようがあるはずだ。


「人間、そんなもんだろ?

 自分と違うものは排除したい。

 あとは、強すぎるとかじゃねぇの」

大貴は呆れ顔で言った。

まるで幼い子供に言い聞かせるように。

そんなに当然の事なのだろうか。

強くて、何がいけないのだろう。

違って、何がいけないのだろう。


「…良いから。誰にも言うなよ。

 今から海水の方を強くすっからよ。

 それまでは、結界張っとく。」

大貴はまた私の頭を撫でて言った。

さっきの笑みとは違って少し、引きつってる気がする。

それが、呆れてるのか、怒ってるのか、悲しんでるのか。

声の色が見えない、無知な私に分かる術もなかった。


「じゃあ…そうだな。

 そこに池あんだろ。」

ああ、あれは、私が刻印を見た場所だ。

そこまで向かう大貴に、私は慌てて着いて行った。


「とりあえず、波作ってみろ」

「………どうやってですか!?」

そんなこと言われましても、出来ませんよ!

もっと、やりかたとか教えてくれないと…。


「えーっと。

 第二が術式 嫉妬が紋章を持つ、かぐやの名において命ずる。」

大貴はスラスラと言い終わると、目で繰り返せと言った。

私は不満に思いながら、しかたがないので繰り返すことにした。


「第二が術式 嫉妬が紋章を持つ、かぐやの名において命ずる。」

「水よ、波となれ」

大貴はうんうんと頷いて、また喋り出した。


「水よ、波となれ」

私はまた繰り返した。


ザバッ


ザバ…?

あれ、デジャブ。

水があまりに高い、波となった。

大貴が瞬時に、私に覆いかぶさった。


「っ……」

突然、水が大津波のようになって私たちに襲いかかった。

溺れるかと思ったが大貴が庇ったので、私は溺れる事は無かった。

…が、


「び、ビビった~」

大貴は水をはじくために、犬のように頭を振った。

その雫が私にかかる。

私はその雫を拭く事も無く、呆然と立ち尽くした。


「…ごめんなさい」

「え?

 …何で謝るんだ?上出来だろ?」

大貴はまた頭を撫でる。私の事を褒めるように。


「…」

…これは、殺める力だ。

もし、水がもう少しでも多ければ、

周りにもっと人が居たら、簡単に、死んだ。

強い力、違う力。

良く分かった…。

強くて、いけないのだ。

違って、いけないのだ。


「何で落ち込んでんだ?

 凄い事だぞ?」

凄い事…。

人を、生物を簡単に殺せるこの力が、凄い?


「…お前、固有の力だ。

 お前が強いからこそ、この国は救われた。

 お前が違うなら、人と違う事が出来る。」

大貴は私の肩を掴んで力強く言った。

救われた…。

殺せる力で、救う事も出来る…?


「世界を変える事だって出来んだろ!」

「世界を、変える?」

私はそのあまりに大きな発言に驚いて目を見開いた。


「例えばそーだな。

 世界平和とか!」

「…平和ではないのですか?」

平和で無いというのなら、この国でも戦争が起こっているのだろうか。


「え、あ。

 今は戦争とかないぞ、冷戦だな。」

「そうなのですか…」

「お、おう」

冷戦。冷たい戦争。

争いなんて体験せずに、のほほんと生きてきた私には想像も出来ない事だ。

でも、私たちの世界でも実際にある事だ。

いつも思う、戦争なんて憎しみしか生みはしないのに。

痛いだけなのに、悲しいだけなのに。

人の痛みは分からないなんて言うけど、私には勝手に伝わってくる…


「世界平和ですか、良いですね。」

「…マジで?」

「マジです」

怖気付いたのか、大貴は苦笑いを浮かべている。


今更。


私は心の中で呟いた。

一度やると決めたのだ。

私の中の立派な王様。

それは、世界平和を実現させた人だ。

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