連続通り魔殺人
*
先月――五月の中旬あたりにそいつはこの町に姿を現した。とはいえ、誰もその姿を目撃してはいないが。
連続通り魔殺人。
そいつは背後からナイフのようなものでターゲットを一突きし、現場から立ち去っている。ターゲットにされた被害者は例外なく即死している。
被害者は殺され方こそ一致するが、それ以外の点では共通するものは無いとのこと。故に通り魔は無差別に犯行に及んでいることとなる。
誰が殺されてもおかしくはない。
そんな笑えない事件がここ一ヶ月の間で、しかも俺が住むこの町だけで四件も起こっている。四件とも目撃者は皆無だ。被害者は誰も生きていないし、事件が起こった場所がどこも人通りの少ないところだったからだ。ただ犯行時間はばらばらで、真夜中のときもあれば白昼堂々行われたものもあった。
小さな町で起こった連続通り魔殺人事件に、マスコミは良い獲物見つけたぜと言わんばかりに連日あちこちで犯罪心理学者なんかを連れてこの町を練り歩いていた。通行人にインタビューをしたりカメラマンがうろつく光景にもすっかり慣れてしまった。
でも最近は大物政治家の不適切発言やら人気アイドルの熱愛報道にニュースが傾いているから、マスコミの数は一時期よりかなり減っている。
俺は連続通り魔に恐怖している。
話を聞く限りじゃ、あっという間に命が持っていかれてしまうみたいじゃないか。
勝手な想像だけど、きっと殺された人たちは自分が襲われたことに、刺されたことに、死んでしまったことにすら気付いていないかもしれない。
……冗談じゃねえ。
なんて理不尽なんだよ。気付かないうちに突然人生をぶった切られてたまるかよ。俺にはまだやりてえことが山ほどあるんだ。
なんつったって、世界はおもしれーもんで溢れてるんだから。