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素粒子物理学

作者: 尚文産商堂

「原子の構造は、陽子と中性子で原子核、それらの周りを回る電子からなる」

「それは知ってる」

速攻彼女に突っ込まれた。

俺と彼女は大学で知り合った仲だ。

今は友達ではあるけど、いずれは恋仲になりたいと、俺は思っている。

つまり、絶賛片思い状態なわけだ。

今しているのは、素粒子物理の授業の復習だ。

「じゃあこれはどうだ。物質を構成する粒子の総称であるフェルミオンと力の媒体となる粒子の総称であるボソン」

「フェルミオンはフェルミ統計に、ボソンはボース統計にそれぞれ従うのよね。これも知ってるわ」

「知らないと、授業聞いてなかったって言うことだからな」

「確か、ウィークボソンは弱い力、グルーオンは強い力を媒介するのよね。光子は光をつかさどってるし。でも、重力子とヒッグスは未発見よね」

「重力子は重力を、ヒッグスは粒子の質量を与えるためのものだね。未発見なのが残念だよ」

「仕方ないね。これからの科学に期待だよ」

このあたりの理解には、キャッチボールが一番わかりやすいと思う。素粒子同士で、ボソン粒子というボールを渡しあっているのだ。

その結果、原子や陽子や中性子といった粒子は、


次のページへと移った彼女は、ふと手を止めた。

「レプトンとクォークについてだぁ…」

「なに、ここ苦手?」

「ボソンは好きなんだけどなぁ…」

彼女の趣向は、ちょっと人とずれたところにある。

ボソン粒子が好きなのだって、感情の受け渡しに見えるからというのが理由だ。

「フェルミオンは、物質を構成している粒子だから、こっちのほうが好きだっていうやつのほうが多いと思うがな。わかりやすいし」

「じゃあ説明してよ」

「いいか。レプトンは荷電レプトンとニュートリノに、クォークは6つの基本粒子に分けられるんだ。クォークの組み合わせによって、陽子や中性子が成り立っているんだ。この時のクォーク間のやり取りは、ボソンで行われているんだ」

「ということは、ボソンがないとクォークは成り立てれないっていうことかな」

「まあ、そういうことかな」

「まるで私たちみたいだね」

ポロッと彼女が言った。

「どういうことだい」

俺はすぐに聞き返した。

「だって、私たちだって、勉強っていう弱い力でつながっているわけでしょ。それがないと、すぐにはじけ飛んでしまうって。そんな感じでしょ」

「それをさ、強い力に変えてみないかい。距離の二乗に反比例して弱くなっていくかもしれないけど、そんなこと関係なく、無限の広がりを持っている重力子のような関係にさ」

「…何言ってんのか、さっぱり分かんない」

「だろうね。俺が言いたいのは、君が好きだっていうことなんだ。どんなに距離が隔てていようが、かならず関係をもちあえるっていうことだよ」

「…ま、私でいいのだったら、ね。クォークのように、強い結びつきを感じましょ」

「実際には陽子は三角関係なんだけどな」

「現実世界でそれしたら、承知しないよ」

くぎを刺されたうえで、俺たちは、さっきよりも近づいて、復習の続きをしていた。

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