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7/21

恐怖は未知への恐れ 既知に対しての臆病

草木も眠る丑三つ時…

しかし、現代社会には眠る時間なんてあってないようなもので

恐怖の意味合いも昔に比べてだいぶ薄まってしまったように思う


暗闇には必ず光があって

それが闇に対する恐怖を薄めているんじゃないかな


それでは

闇に対する潜在的な恐怖は拭えない

むしろ大事な根本から目を逸らす為に光があるようにも感じてしまう


そんなわけで僕はいまベッドに横たわり

草木も眠る丑三つ時

つまり日付が変わって間もない深夜にこうして語っている訳だ


人間は逃避行動というものをするとどこかで聞いた

ラブコメで恋愛に不慣れな主人公が女の子に迫られて、素数を数え始めたりする

煩悩と戦うアレだ


そして僕はその同じような状況に置かれたら煩悩と戦うまでもなく現実を堪能するだろう


どうして長々とこのようなどうでもいい話を僕がしているかというと

現実からの逃避行動の為だ


つまり


僕は現実から逃れたいと思えるほどの状況にたっているわけだ


…みんなはこんな経験ないだろうか?


夜中に暗い中、隙間が気になる事


微妙にクローゼットとかが開いてたりすると何かが覗いてるような気がしてならない

隙間こぇぇぇぇ!!


…いや、僕が直面している問題はそこじゃないんだ


むしろ、そのくらいのほうがマシだった


だって


―――――ホンモノが僕の目の前にいるんだから――――――


窓際になんかいる

そのなんかを確認出来ないまま今に至る


未知の恐怖だ


幽霊がいる!!


GYAAAAA!!


言っちゃった!

幽霊とか言っちゃった!!



KOEEEE!!


だって、なんかいるんだもん!!


否定しようがないよ!!


こんな事は生まれて初めてだ!!


誰か!!ゴーストスイーパー呼んでくれ!!

鬼形くんでもいい!!頼む!!


何か部屋の隅であらぬ方向を向いてるソイツ

っていうか髪が長くてどっち向いてるんだか分からない


まさに貞子だ


ん?


気のせいか


さっきより僕に近づいてきてるような…


…そんなことあってはならないと思うよ僕は


そうだ!気のせいだ!気のせいだ!!


…トンデモ体験は学校だけで充分だ

まさか安息の地である家でこのような事が起きようとは誰が予想していたであろうか


…僕は予想していた


高校に入ってからのトラブル続きに僕は慣れきってしまっている


いずれは僕の生活を飲み込んでとんでもない事態になっていくことは

想定していた


想定の範囲内です(キリッ


でも、オカルトがくるなんて想定はしていないよ


女の子が空から降ってくるとか

そういう方面の妄想はたくさんしてたんだけどなぁ


世の中は甘くないと何度教わっただろうか…


そうこうしてるうちに

僕の足下まで幽霊が近づいていた


金縛りというんだろうか

身体が動かない


…これは実に怖い!!


ここまであたかも視認して、その幽霊がいるほうを見ているかのように語っているが

実は

怖くて(怖すぎて)

なにかがいる方は見ていないのだ



ただ


確かにそこにいる


その気配だけはしっかりと伝わってきているのだ


ホラー映画でノソノソと近づいてくる幽霊っているでしょ?


あれは嘘だ


気がついたら一気に距離を縮められてる


某サイヤ人の瞬間移動みたいに突然目の前に


…そう目の前に


…目の前









――――――目の前にいるっ!!!!!!―――――――



「…っ!!!!」


あまりの驚愕に声が出なかった

というより、さっきから叫び声一つあげれない


さっきから幽霊と言っているが

この何かが幽霊なのかすら分からない


恐らく僕との距離はあと数センチでキスしてしまいそうなくらいに接近している

近すぎる!!

心臓がとまりそうだ!!

僕に長い髪がまとわりついてくる


顔は…髪の毛で覆われていてまったく確認出来ない

白い洋服?みたいなものを着ているのはなんとなく分かる


なんなんだ…なんなんだ…なんなんだ…!!


なぜこの何かは俺にまとわりつき、俺に何を求めているのかまったくをもって謎だ


…!?


まさか、僕に取り憑いて呪い殺そうとでもいうのか!?

そんなオカルトは怖すぎる!!


まだ巨大なマシュマロマンに踏みつぶされた方がマシだ


そんな事を言ったら余計に怖くなってきた


その何かが僕の耳元に近づいてきた…


ぎゃぁぁぁやめてぇぇ!!

呪いの言葉で僕を殺さないでぇぇぇぇぇ!!


「…わぶ」


「…え?」


―――――ちくわぶ…――――――


…?

どうやらリアルの呪いの言葉はとても美味な練り物のように聞こえる

というより練り物そのものだ


「…は?なにいってんの?」


声が出た!!

金縛りとは何だったのか!!

思わず素のトーンでつっこんでしまうほどだった


「ち…くわぶ…」


また言った!!

こいつ、ちくわぶって言ったぞ!!

関西人には馴染みが薄いよ!!

関東の方じゃないとなかなか出てこないぞ!その単語!


なんて残念なヤツなんだ!!

幽霊だとしたら残念幽霊だ!!

せっかく出だしは良かったのに一言でぶち壊しやがった!!


僕の中で恐怖感はすっかりなくなっていた

未知が既知になる瞬間を確かに感じていた


「なんの目的があってここにいる?出だしからの流れで混乱するぞ!」


「ひっ…!か、歌舞伎揚げ…」


一瞬、僕の反応に驚いた仕草のあとに

また関東圏ネタを絡めてきやがった!!

お前は関東圏の幽霊なのか!?


「…」


無言かよ!


僕がベッドから身を起こし

幽霊らしきモノは僕から転げ落ちた


「…高杉晋作……」


ひょっとして単語しか喋れないのか…?

チョイスがいちいち分からない

今回の言葉は関連性が見いだせないし…


おもむろに転げた姿勢から立ち直りまた僕のそばにやってきた


「…なんの目的で僕に近づいてきたんだ。」


「………すりの銀次」


なんだ!!僕の総資産からいくら盗むつもりだ!!


「…駄目だ。話にならないや」


すりすりと僕に顔(らしき部分)をすりよせてきた

まるで猫みたいだ


さっきの恐怖感はどこへ行ったのか


そして、こいつが何なのかは未だに掴めない


…って!!もうこんな時間!!


明日、学校じゃん!!


規則正しい僕の生活は些細な事で乱されてしまった!!


長い髪の毛のお化け(仮)がいることを些細な事と言ってしまっていいのかどうか分からないけどね



―――――――以下、朝です――――――





僕はそのままお化けらしきモノに構わずに眠った

さっきまでの恐怖や金縛りが嘘みたいに健やかに眠れた



…昨日の出来事はなんだったんだ

そしてここはマンガの定石のセリフを言ってみたいと思う


「きっと夢だったんだ!!それにしても変な夢だったなぁ!!」


「…………じゃりン子チエ」


いた!!

そして懐かしいなソレ!!


幽霊なら朝には消えてろよ!!

普通は朝になったらいなくなってるパターンだろ!!


「ってことは…幽霊…じゃない?」

そう考えるのは早計かもしれないけど

暗闇でよく見えなかったが

今は朝の明るい時間になったのでよく見える


きめ細やかな肌

白いワンピース

長い黒髪から分かりづらすぎるが微妙に顔を伺える

かなり小さな体躯をしてるな

ロリだロリ


それにしても、こんな残念なヤツに僕は怖がっていたのか

こうしてみると小動物的でなかなか可愛いもんじゃないか


思わずナデナデしてみた。


「――――デストロイ」


コワッ!!物騒な言葉使うなオイ!!


っていうかこれから学校なんですけど…

まさか付いてくる気じゃないだろうな…


「これから学校なんだけど…分かる?学校?」


「で…でらべっぴん…?」


言ってない!!そんなこと言ってないよ!!

一分も伝わってない!!

分かる人にしか分からないよそれ!!


「言葉が分かんないか~。僕、行く、学校、君、ここで待つ、分かる?」


身振り手振りでコミュニケーションを取ろうとする

なぜコイツを家にとどめておかなければならないのかはよく分からないが

僕が安全に学校に行く為にもその事実をなんとしても伝えなければならない



「…?」


…伝わってなかった!!

翻訳こんにゃくが欲しい!!


「…翻訳…コニャック?」


惜しい!!っていうか、成人御用達のひみつ道具かそれ!!

っていうか言葉に出してないのに伝わった!!

まぁコンニャクで言葉が伝わるのもあれだし…コニャックでも悪くない…


「…って違う!!そんなことを考えてる場合じゃない!!とにかく行くからな!!ついてくるなよ!!」


僕はジェスチャーで強く示し、コイツを拒絶した

部屋から出てパンをくわえて外に駆け出した

朝からとんでもなく異文化コミュニケーションしたな





―――――以下、学校にて――――――






「おはようさん。なんや疲れとるなぁジブン」


「おはよう。イナリ。」


「……パラガス」


…伝わってなかった!!

かなりの勢いで走ってきたのに憑いてきやがった!!

パラガスってなんだ!!

潰されるのか!?


「ぬぉぉぉ!!なんで憑いてきた!!」


「なんや。ジブンいきなり大きな声だして。何かあったんか?」


「だって、コイツがずっと家から憑いてきたんだぞ!!大声出さずにいられるか!!」


「コイツ?家から?何言っとんねん。ちゅーか、なんの話や。」


「だからコイツが…―――――」

指を指して言いかけた瞬間


――――――だからコイツって誰や。ジブン、気味悪いなぁ。――――――――


う~む

冷静になれ

いま流行りの自分にしか見えない女の子とでも言うのだろうか

そういえばこんな黒髪のロリを連れてきたのにクラスはいたって平常運転のような気がしないでもない…

いや、それ以前に僕の存在を気にする人間なんて一人もいな…あれ、なんか凄く悲しい事言ってない?


「イナリには、コイツが見えないの?ここにいるのに…」


必死でイナリに説明する。

コイツはうさん臭いヤツだけど分かってくれるさ!!


「…いやいや…そうかそうか。よ~~~~く分かったで」


「分かってくれるのか!!昨日からずっと…―――――」

「ついにキャラを確立したんやな!霊能力キャラとか一瞬、地獄先生を彷彿とさせたで!!なんや!!どっちの手が鬼の手になったん!?」


…伝わってなかった!!

そんなキャラを確立させて僕になんのメリットがあるというんだ!!

僕はそんなにキャラクター性に欠けたヤツだったとでも言うのか!!


「…アウグストゥス?」


「そうか…お前は慰めてくれるんだな…ありがとう…」


コイツの言葉は意味不明だが慰めてくれるという事は分かった

なんだ、最初から言葉なんかいらなかったんや!!


「どうしたん…ジブン…意味不明な事ばっか呟いて…」


「いや、もういい…もういいんだ…俺の事は気にしないでくれ…」


ここで哲学的な話をするなら

僕一人がその存在を認識したからといって

他の大多数が認識しなければそれは存在しているといえるのだろうか?

とても難しいな…


―――――この子は本当にいるのだろうか?―――――


確かに僕にははっきり見えるけど、これは幻覚で僕はただの痛いヤツなんだろうか


「かっかっか!!そりゃないぜぇ!!!」


「HAHAHA!!ワタシはリツコ先生大好キダッタヨー!!」


…話がややこしくなりそうな人がきた

っていうか地獄先生の話はもう終わってる!!


「俺はよぉサル。百人が見えなくても、俺が見えればそいつは確かに存在する。そう考えてんだよ」


「…信じてくれるんですか…?ボス…」

僕はボスの器量の大きさに胸を打たれた…なんて出来た人なんだ…



「カッカッカ!!地獄先生じゃなくて、みえるひとのキャラ設定だよなサル?」


…伝わってなかった!!

どうしてそういうネタ方向に持っていきたがるんだ…


ん?元凶であるコイツ

なにやら袖を引っ張られた

何か言いたい事があるらしい



―――――――マトリョーシカ…――――――



もう駄目だと思った



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