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冷たさは暖かさの再確認 逆も然り

教室のドアが開いた


入学式後の堅苦しい雰囲気が一気に戻ってきた

教室の全員が静寂に包まれる(流川さんと田中くんは相変わらずだった)


なるほど

これが仏のような先生が言っていた先生か



…悔しいけどっ…イケメンッ!!


なにあのフェイス!!


ヨーロッパの貴族みたいな品格があるぅ!!


同じ男として嫉妬せざる得ないくらいに眩しいよっ!!


僕があまりの男性としての敗北感にうちひしがれていると

イナリがヒソヒソ話しかけてきた


「あのセンセーが氷室冬樹先生や。別名『ダイアモンドエンペラー』」


…なにそれっ!カッコいい!!

凄く奇妙な物語っぽい!!



「校長先生やPTAの会長すら逆らえない圧倒的な存在感。最強の石頭。権力と融通の利かなさでこの界隈の有名人や…」


イナリは話を進める


「そして、あのルックスやろ?女子生徒にモテモテや。」


ここまで聞いてみての感想


あいつこそ、少女漫画の王子様役みたいじゃないか!!

僕が恋愛や青春でウッハウハになるにあたってアイツは敵だ!!


必死にフラグをたてようとあくせくしている僕


ダイアモンドエンペラーこと氷室先生はフラグが自ら歩いてくるような人間


「格差だよっ!!それは!!」


「ふむ…お前…そうだお前だ…私の話を途中で遮り、さらに格差について語ろうというのか?」


教室中の一斉に視線がこっちに向けられる


しまったぁぁぁぁ!!


隣でイナリが笑っている


ぐぬぬ…

何が僕をそこまで駆り立てるのだろう

そこまでして僕は心の声を聞いて欲しいというのか…

僕は心の露出狂か!!

あぁ…もっと僕を見て…///


ってチガウチガウチガウ…


今はこの場を切り抜ける策を考えるのが先だ…



「あー…いやですね。高校1年生の入学初日に人生への深く哲学的な憂いを論じるにはいささか急ぎすぎたというかなんというか…ハハ…」


「…」


怖いぃぃぃ!!何を考えてるのこの先生!!

僕の言い訳のヘタさも相当だけど

記号一個で返してきたよ!!

三点リーダーだよ!?


「…入学式も来ないで、人生について憂いていたのだな?」


やっぱバレている

そりゃそうだ

入学式からいきなり遅刻をかますような問題児に注目しない教師はいない



「…さっきからお前は私をバカにしているのか?」


「ひゃい↑ゔ…ゔぁかになんてひていまひぇん!!」


声が裏返った!!

自分のヘタレ具合にびっくりだ


3の倍数だけアホになるよりアホだ…


「…」


また沈黙


「…よし、明日までにお前の人生についての考察を400字の原稿用紙5枚以上で提出しろ。…いいな?」


なんというスパルタ!!

スパルタは古代ギリシャ時代にあった軍事都市国家で…

じゃない!!

とにかくなんということだ!!

入学初日にいきなり宿題とはこれいかに…


なんとしても避けなければ…


どうする…どうするよ!!


「カッカッカ!おもしれーな!なぁイチ?」


「オー!!ボス!!ニッコーに行カナクテモ、コンナトコでサルマワシがミラレるなんてエキゾチックジャパンダヨ!!」


誰よりも日本人らしい名前をしている(名前だけだが)お前がエキゾチックジャパンとか言っちゃったよ!!

そんで、この雰囲気で唐突に会話を切り出せるボスすげぇよボス…


「せんせー!社会にも出た事のないケツの青い学生という身分で人生について語れることは多くないと思うぜー!!カッカッカ!」


「ソウネ!マダ、シタのバナナもグリーンナモンキーにジンセーはムズカシイヨー」


親戚のおじさんばりの下ネタに走りやがった…!

だがこの現状を打破してくれそうな気がする…!!

二人の擁護が有り難いよ!!


「…ほう。お前ら…田中と流川だな。…お前らも晴れて今日から立派な高校生だ。お前らはコイツとは違うと言いたいのか?」


「そりゃせんせー!俺とコイツじゃ月とマンドリンくらい違うぜ!カッカッカ」


それはいくらなんでも違いすぎだぁぁ!!なんだマンドリンって!!


「俺はよー世界回ってきたけど、人生って言葉じゃ言い表せないくらいにひでーとこがたくさんあったぜ」


「…」


「それこそ社会体制とか法律とかそういうの以前の問題もあったぜ。そんな俺が言うんだ。平和な国で育ててきた卵が社会を語るには経験が足りなさすぎるぜ」


「…何が言いたい?」


「早急な結論は幅を狭めるぜせんせーさん。せっかくの高校生活だ。色んな経験がここでは待ってんだ。コイツはまだ始まってすらねーんだよ。卵に空を飛べってのは無理な話だ。」


「コイツが高校生活で雛鳥になるまで待っちゃくれないか?きっと先生も唸るような立派なヤツになると思うぜ!」


「…流川…お前の言い分は分かった。」


「さすがせんせーさんは違うぜ!!カッカッカ!!」


助かった…のか…?

ぉぉぉぉ!!

なんだか僕抜きで話が進んでいたが

思いのほかうまく進んだみたいだ!!

ありがとうボス!!


「モンキーはハイスクール初日からビーバップネー!!エグチヨースケヨー!!」


田中!お前には感謝してやらん!!

そもそも違う作品を組み合わせるな!!


「…とにかくだ。今日から高校生活だ…。学校のルールに則り、厳しく指導していく。コイツのように入学式から遅刻するような醜態を私の前で見せるな。分かったか」


静まった教室は同意したと見なされたのだろう。

氷室先生は荷物をまとめ教室の扉に手をかけようとした。


「おい、お前…」


「は、はひっ!?」


またうわずってしまった!!

今のは奇襲だ!!

安心しきった俺にまた緊張が走った


「…まずは卵のお前の答えを提出してもらおう。そして…また雛鳥とやらになったときに提出してもらうとする。…分かったな。」


「ハイ…って、ぉぉぅぇ!?」


――――――状況!!何も変わらずッ!!絶賛悪化中!!――――――


なんだ!!今までの下りはなんだったんだ!!

物語の進行でいらなかったんじゃないか!?


ダイアモンドエンペラーのスタンド攻撃は思った以上に強烈だった


まさか入学初日に宿題を出され、さらには高校生活を通じての課題を提出されてしまうとは…!!

あれは完全に宿題がなくなるフラグだったじゃないか!!


ここが新喜劇の舞台じゃなくて良かったなオイ!!


全員でズッコケるとこだったぞ!!


「カッカッカ!やっぱり猿はサイコーだ!!気に入った!!これからの学校生活楽しめそうだぜぇ!カッカッカ!!」


うるさいうるさい!

ボスを少しでも崇めかけていた自分を呪いたいっ!!


「HAHAHA!!サスガBOSSネ!!サルマワシノサイノーアルヨ!!」


田中ぁぁぁ!!

しかも猿回してたのはボスかよ!!


「カッカッカ!おう!猿!ちょっとツラかせ!」


「何なんだよぉぉ!!さっきから人を小馬鹿にしやがってぇ!」


僕はもはや自暴自棄寸前だ…

いや既に自暴自棄かもしれない


「手伝ってやるよ」


「え?」


「だから、お前の高校生活に協力してやる」


女の子に肩に手を回されてドキマキしてしまった


どことなく柔らかいモノがフニフニと…

ふにふに

どぅへへへへ…


「おい~猿~。お前の大好きな女の子のおっぱいを堪能してるとこ悪いけどよ…」


「ドゥフェフェフェ~///ふぁ~い?」


「今から衝撃の事実を教えてやるよ!お前のことが気に入った。そして信頼の証として話そうと思う。これは俺と田中と猿。このクラスでは俺らしか知らない秘密だ。」


「いいか?覚悟して聞けよ~?」


「エフェフェエフェ///ふぁ~い」




―――――――俺は男だ―――――――



…俺は今後の人生で誰も信じられないかもしれない


世の中に賢者がいるとしたら

まさしく今の俺のことだ


この現代社会において私は

この時

この場所で

一言で

賢者になった










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