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目に見えないいくつもの秤で感情は構成される

それにしても…


なんでボクがまたこの男…失礼、今は女だったか

にわかには信じられない話であるが

目の前にいる存在は間違いなく

ボクの永遠の天敵であったロメオ本人である


彼はボクの人生においていつも付きまとう存在である

僕が幼少から現在に至るまで常に縛られ続けている呪いのような存在だ


「おい!マルコ!見ろよぉ!あそこで小さい頃にお前が火だるまになったの覚えてるか?酒に酔った野郎に酒をぶちまけられて、そのあとに側でタバコ吸ってた奴がタバコ落としちまってなぁ。あっという間に燃え広がっちまったよなぁ。」


「ボス!過去の話はどうでもいいじゃないかぁ~…ハハハ☆」


「そのあとに、火だるまになりながら広場の噴水まで走るお前は間違いなくこの街の都市伝説だったぜぇ」


声を震わせてビビるボクにお構いなしに

カッカッカっと特徴的な笑い声をあげながら肩を回してくる

これが本当に女性であったら僕は迷わずに抱き返しその唇を奪っていることだろう


しかし残念ながら天敵である彼にそのようなことをされても身震いしかしない


僕は数ヶ月前に彼がまだファミリーの一人として任務の途中で行方不明になったことを知っている

それはとなりにいる女性がまだ男であった頃の話である


僕はその話を聞いた瞬間に安堵と共に悲しい気持ちになったのを覚えている


今の今まで早くいなくなってくれないかとずっと願っていた存在であったはずなのに

何故か胸の奥がキュッとなってしまった


そう、僕は彼を天敵と思っていたと同時にファンでもあったのだ


この街に住んでいれば嫌でも彼の評判は耳に入ってくる


自分が他の連中よりそれを理解している


幼い頃から


彼のすぐ側で生きてきたのだ


苦手意識はあれど、自分自身の一部でも間違いなくあるのだ



快く思っていない人間ですら虜にしてしまうほどの魅力が彼にはあった


――――


僕は彼が行方不明と聞いてから真っ先に情報を集め始めた


彼は生きているのだろうか

情報屋を生業としているので情報に関して言えばプロである

そんな僕ですら情報はまったく入ってこなかった


本来であれば死んでいると思われてもおかしくないほどの状況だ


しかし、僕は知っている。


彼は間違いなく生きていると


彼が死ぬなどとは想像も出来なかった


僕であれば生き残ってはこれなかった数々の場面を笑いながら超えてきた彼の姿を


僕は知っているから


――――――


その僕の心を裏切らぬような情報が一つ手に入っていた


彼が行方不明後に連絡をとっている人物がいると――――


僕はその人物に接触を試みた


隣町に住んでいる

なんてことのない高齢の医者だった


表向きは


しかし、そこは情報屋としてのボクだ


医者が裏社会では知らぬものはいないほどの名医で

数々の功績を成し遂げていた大人物であることを突き止めていた


医者は患者の個人情報であるからと言って


ボスの名前は出さなかった


裏社会の医者のくせにやたらと常識ぶったことを言うもんだと思ったが


僕はあくまで情報屋で暴力や恫喝で口を割らせるような人間ではない


そしてここからはボスの数少ない友人

いや、ボクの立場からしたら腐れ縁というべきか

情報屋ではないボクの言葉だった


「詳しく話せないことは分かりました…。ですが、ボクは悪友の為に協力がしたいんだ。これは掛け値無しのボクの心。信頼していただくには何もかもが足りていないのかもしれないけど、それを承知でお願いします。」


無茶なお願いだった。

いつもの口調を出せないほどの決意

そう…

彼の無事を信じているからこそ

ボクは全力で迎え入れる準備をしようと考えていた

そりゃ酷いことも散々にあった

だけど、それを余り余って彼は魅力的であったのだ



医者は少し考え込むと


「分かりました。私はこういった世界に入り込んでもう長い年月が立ちました。…だからこそ、そういった感情が一番大事であると確信しているのです。」


彼は真剣で穏やかな眼差しをボクに向けているのが分かりました


「それならばマルコ君…だったかな?君にやってもらいたいことがある。」


そう言うと医者はボクに紙に書かれたリストを渡してきた


ボクは学のある方ではないのでそのリストに書かれているものがなんなのか分からなかった。


「実はね、もう大体は目星がついて完成まで一歩なのだよ。実は長年、研究は勧めていたんだがね。いまいち息詰まって手つかずの状態だったんだが、ロメオ君の話を聞いて完成まであと一歩というところまでこれたんだ」


ボクは医者の研究がどのようなものかは分からないけど、なんとなく凄いということはわかった。


「そこで君に材料と資料を集めて欲しいんだ。」


なるほど。

ボクに頼まなければいけないほどのモノなんだな。

情報屋であるボクに。


「任せておくれよドクター☆ミ ボクにかかればどんなものだって集まるさ!女の子の心以外はね☆」


ボクはいつもの調子で口走った


――――――


それから少し経った


ボクは医者のもとに向かった

医者はこんなにも早く集まるとは思っていなかったらしく、少し驚いた顔をしながらボクに喋りかける


「いやはや、マルコ君。ご苦労さま。ここからは少し研究と完成に時間がかかるんだ。すまないが少し待っていてくれないか?」


医者は材料と資料を受け取るといつものような笑顔を見せながら微笑んだ


「私は長らく、この研究を諦めていたんだ。どうしても越えられない部分があってね。」


材料のリストを渡されてから僕なりに調べた


そうして調べれば調べるほどに疑問が思い浮かんでいた


「こんなことを言うのもあれなんだけどサ。この材料は明らかに医療用のモノじゃないよね?そうまるで――――」


黒魔術の儀式に使うものみたいだ――――ー


僕が言いかける途中で医者は遮るように喋った


「ハハハ…。いやはや、ボクは若い頃に医学を学んでいくうちにそういったモノについても並行して調べていたんだ。医学界からは追放されてしまったがね。」


「イヤイヤ。何も言わないよドクター。ボクはボスが帰ってくるのをゆっくり待つYO☆」


ボクは材料を渡し 彼の部屋をあとにした


あとは、彼が帰ってくるのを待つだけさ

女の子を口説きながらね☆


――――


まさか、口説いた女の子がボスだったとは


あの笑顔

あの笑い声

あの仕草


ボクは忘れるわけがない


あれだけ待ち望んでいたというのに

ボスだと気がついた瞬間になくなった金玉が痛み出したような気がした

恐怖以外の何者でもなかった


なんでこんなやつの為に協力してしまったのだろうと後悔しちゃうほどに


それほどまでにトラウマだったんだぞ!?


「んで、ドクターはどこにいんだよぉ?マルコよぉ?」


相変わらずボクのスペースにズカズカと入り込んでくる


「うん。一ヶ月前に連絡したきりだったかなぁ…いやぁ、想像以上に帰ってくるのが早すぎるよボス。」


あれから一ヶ月間、医者からは連絡がない状態だった


表向きは医者であるが職業柄、割と各地を転々としているはずだ


だけど、ボクは一番最後に移転した医者の居場所をしっかりと仕入れてある


「たしかね。このへんだったかな…?」


今はこの街に来ていたはずだ。

ビルを見上げる


あれから、表の商売は休業して

研究にかかりきりだったはずだ


「ここか…あのじいさん元気にしてっかなぁ~。」


ずかずかと容赦なく敷地に入るボス


「カッカッカ。あ、それとマルコ。おめぇにいっとかなきゃいけねぇことがあるわ」


こちらに向き直るボス


不意に名前を呼ばれてドキリとする

大体、ボクの名前を呼ぶ時はロクなことがないのだ


「ハハハ…。ボス、いきなり僕になんだい?ボクは言われた通りに案内しただけだよ…☆」


出来る限りいつものスタンスを崩さないように返す


「ん~、いやな。」


ボスはこちらの目をじっと見ながら話しかけてくる

何も悪いことはしてないのだが、この人のまっすぐな目は思わず視線を逸らしたくなるほどに力強いものなのである。

まるで自分という存在が霞んでしまうほどに



「…ありがとよ!」


…え?


「いやな、お前は…信じていてくれそうな気がしたんだよ。俺が生きてるってな!!」


満面の笑みで感謝の言葉を向けるボス


あぁ…



いつもこうだ


だからこそ、僕は信じたんだった


そして、様々な人がこの人に付いてくる理由だ


力を振りかざさず


いつでも包み込んでくれる


あったかいんだよなぁ


「ハッ…ハハ…な、なにいってんだよボス☆ぼ、ぼくはなにもしていないさ…本当…に…」


気がついたら涙が頬を伝っていた

ただの何もない僕を引っ張り上げて



こっちの都合なんてお構いなしに巻き込んでくれる


どうしようもない自分であったが


明るくて眩しいほどの世界に引っ張り上げてくれたような気がしたのだ


「カッカッカ!!泣いてんのか!?ほら、今ならお前の大好きな女のおっぱいがさわれるぞ!元気だせマルコ!!な?」


ボクの手を引っ張って、自分の胸を触らせようとするボス


「い、いや…僕はおっぱいが好きなんじゃなくてその過程にある恥じらいが大事なのであってだNE…!!」


僕は泣くことも忘れて必死におっぱいについて語っていた。


――――――数分後


僕たちは部屋の前まで来ていた


「出来てるといいけどNE。まだ時間はあまり経っていないから完成してるかどうか…」


「そんなん聞いてみりゃいいさ!!」


僕はインターホンに指を置き


軽く押し込んだ


……

………


「オイ!出てこねぇぞ!カッカッカ!」


「イヤイヤ、何がおかしいのSa。変だなぁ。いつもなら出てきてくれるのに…」


僕は考えた


「おい!マルコ!鍵空いてんぞ!」


「えっ、さすがに勝手にはいんのまずいでSyo!!…あっ!!」


ボクの静止を無視するようにボスがドアを開ける


そうしてズカズカと扉の奥に足をすすめる


あぁ、もう!!

僕も慌ててそのあとを着いていく。


「ちょっと、待って…」


僕が言いかけると

ボスは歩みを止めて

突然笑い出した


「カッカッカ!久しぶりじゃねぇか!!」


僕はボスの前に人が立っていることに気がついた


…なんで?


……どうして?



「…!!」


僕が動揺を隠しきれないでいると


ボスの前に立つ人物が喋りかけてきた


「あらぁ、これは可愛い来客さんね。…後ろにいるのはマルコかしら?元気にしてたかしら?」


とても色っぽい

艶のある声でボクの名前を呼んだ


「ハハハ…どうして…君がここに…?彼は自分の居場所を全然明かしていなかったはずだYO?」



―――――――エリカ?

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