究極の決断とはいつも時間に追われている
諸君、
僕は予定調和が好きだ
僕はお約束が好きだ
曲がり角の転校生
空から降ってくる異星人
異世界への召喚
修学旅行でのドキドキイベント
夏休みのマル秘旅行
※ここまで全部ラブコメ
この世のありとあらゆるラブコメが好きだ
だけれども
僕は今、自分が置かれている状況がラブコメにつながらないことをよく知っている
そんなこんなで
久々に自分が語り部となってメインになれることにとても喜びを感じているのであります
どうも
サルです
もはや、自分で自分のことをサルと呼ぶことになんの抵抗もないのであった
えっちぃゲームならデフォルトネームというものが決まっていて大概はその名前でプレイするものだ
最近はそういうのばっかだよね?
僕はそんな主人公の風潮に警告をうながすためにこうしてサルという名前に甘んじているのだよ
よくさ、物語の序盤で
『僕の名前は… 名前を入力してください』
みたいになるじゃん
僕はあれだよアレ
それにしてもさ
なんでこんなに出番が少ないの?
仮にも僕が主人公だよ?
あ、主人公なのに全然操作できないじゃん!!とかそういうRPGへのオマージュなの?
なんか、だいぶ時間が空いた気がするもん。
まぁ、ちょくちょく語ってはいるけどさ
前々回くらいの回ですっかりエロチシズムに満ち溢れるキャラみたいに思われてるかもしれないけど、誤解だよ?
僕は悪くない!!彼女がそうさせるんだ!!
そうね、ここでちゃんと説明しなきゃいけないけど
彼女っていうのはエリカさん
そりゃ大人のおねーさんという形容がなによりも正しい
あんな、官能小説から出てきたような艶美な女性がこの世に存在することに驚きです。
ああいうおねーさんだったら、騙されても本望!!みたいな?
あぁ…そばにきたら、その香りだけでクラクラしちゃったよ…
そうこう考えてると、まりもが僕の膝の上に乗っかってきた
…こいつといるのもだいぶ慣れてきたというかなんというか
時たまいなくなるけど、ほぼ四六時中一緒だ
最初は落ち着かなかったけど
なんだかんだ人間って慣れるもんだなぁ…
こいつに監視されているから、僕はあやうく主人公の貞操を保っているようなもので
いなかったら、もっと鬼畜の所業に出ていたかもしれない
そういう意味では感謝しなければ
「…バーリトゥード」
こいつの意味不明な単語にも少しずつ適応してきた
言葉ってのは意味を成さないもんだ
つまりはハートとハートさ!!
ちなみに今のまりもの発言は『細かいことは気にするな。道は自分で切り開け』という意味だ(多分)
まりもが俺のおなかをパンチした
ふははは
その細腕で殴られても僕はさして喰らわないぞ!!
さてさて、どうしてこのような長い脳内会話をしているかというと
「…暇だ」
そう、暇というやつだ
僕はベッドに腰掛けながらひたすらに過ぎ行く時間の無常さにうちひしがれているのだ
お姉さん、もといエリカさんは
『私が戻ってくるまではガ・マ・ン お楽しみは戻ってからねはぁと』
…と言ってた!!…気がする!!…いや、言っていた!!そういうことにしておこう!!
しかし、何もない状況下で待つというのは存外に時間が平等に流れないことを教えてくれる
最初はドギマギしていたけど、こんなにアワアワしていては自分がさくらんぼ戦士であることが丸わかりだということに気が付いたので
百戦錬磨のパラディンであるかの如く振舞ってみたりもした
ワイングラスを片手にバスローブを羽織って悪の親玉気取りごっこをしてみたりもした
しかしあまりにもむなしいのでやめてしまった
う~む
ベッドに寝そべってゴロゴロしてみる
何で僕はここにいるんだ?
そんなことを考えてみる
こんなどこかも分からないような場所で
よく分からないイベントをこなして
まるで異世界に召喚された一般高校生だ…
は!!
これは凄いじゃないか!!
きっと召喚されたときに何か特殊な力が身についたのではないか!?
僕は起き上がり
両手を胸のあたりに集めパワーを溜めてみる
「…はぁぁぁぁぁ!!我は…放つ!!光の――――――(自主規制」
前方に向けて両手をかざす
…
…
…
「…枯葉」
「ですよね~!!出るわけないですよね!!あんな都合の良いことがあるわけないですよね~!!まりも君!リアクションありがとう!!」
いつも眠たそうな目をしているまりものあまりにも寂しいリアクションだけが残った――――はずだった
―――――バ―――――――ン!!
「えぇっ!時間差!?僕には発動までの時間差がある攻撃魔法の能力が…」
なにやら壁の方で大きな音が響いた
…隣の部屋からみたいだ
僕はおふざけをやめて恐る恐る入り口の扉をあけて隣の様子を覗う
何やら数人の黒服の男が立っている
明らかに怖い人たちだ
なおも気が付かれないように聞き耳を立ててみる
「オイ!!エリカはどこだ!!さがせ!!」
そこでエリカさんの名前が出てくることに驚く
「クソっ!あのアマ…なめ腐りやがって…」
「徹底的に部屋の中を探せ!!いなければ…隣の部屋だ!!」
そういうと数人の男がこちらのほうを向き
すぐさまに隣の部屋に入っていく
僕はとっさにやばいと思いドアを閉める
…え?
…え?
これはどうしよう
まずい状況なんじゃないか
隣の部屋からがさ入れとも聞こえるような物音
相手はよく分からないけどエリカさんを探している
そもそもここはどこ?
私は誰?…それはないけれど
圧倒的に情報が足りないことに今更になって実感する
このまま素直に出ていけるほどの勇気は僕にはない
…僕は部屋を見渡す
ここで、サウンドノベル小説やら選択肢のあるゲームならいろんな状況が出ているだろう
僕もそれにならって箇条書きしてみようか
1・何か武器になりそうなものは
2・あそこにクローゼットが…よし隠れよう
3・素直に言えば相手も分かってくっるはず…おとなしく投降しよう
4・なにくわぬ顔で外に出て知らぬ顔で通り過ぎてみる
とりあえず今の状況で僕が思いつく選択肢だ
う~む
そしてこれがサウンドノベルとかならたとえバッドエンドになってもやり直しがきくであろう
片っ端から選択肢を選べばよいのだからなぁ!!
残念なことに現実にはセーブとロードなんて便利な機能はついていないのであった
本当に人生というのはやり直しがきかないものである
こんな機能があればよかったのになぁ
そんな風に考える人間はぼくだけじゃないはずだと思う
そして、現実はけっして待っていてはくれない。選択肢で時間が停止してくれることもないのだ。そうこうしてるうちに時間は流れていくのだ
やばい!
やばい!!
やばいいぃぃぃ!!
僕は動揺で自分で考えた選択肢がごちゃごちゃになっていくのが分かる。
このまま僕はバッドエンド一直線なのであろうか…
思えば短い人生だった
まだラブコメの一つもしていない
高校生になったばかりだというのに…
あぁ…着飾ったツンデレお嬢様、真面目なメガネ委員長、おとなしい図書委員の女の子 僕の中に未来の走馬灯が流れる…
僕が過ごすはずだった理想の学校生活
…未来の走馬灯なんて流れるのか?そもそも未来の走馬灯っておかしくない?
どうでもいいか
あぁ…
何かが僕を殴る
殴る
…?
…殴る?
ハッと我に返ると
まりもが僕を殴っていることに気が付いた
だから、その細腕では僕には通用しないと…ん?
まりもが何かを引きずるように片手に持っていることに気が付く
僕がまりものほうに顔を向けるとそれをずいっと突き出してきた
そうして僕にこう言う
「…怪人二十面相」
またわけの分からないことを…
そう言おうとしたが
まりもの行動を読み解く
「…なるほど。でも、それってかなり無理がない?」
それでも強い意志だといわんばかりに僕に向けて、手に持つそれを突き出してくるのであった。
「…分かった分かった!!僕は大事な何かを失いそうだけど、それでいこう!!…って、本当に?」
了承しておきながら、かなり不安が高まる
さらに相手を逆上させるような気がしてならない
いや…でも…
僕はまりもの言わんとすること一抹の不安…一抹どころかかなりの不安を覚えているが…
ええい!ままよ!!←一度は言ってみたかったセリフ
「よし!まりも準備をする!!手伝ってくれ!!」
まりもはまかせろと言わんばかりに胸を突き出す
ぺったんこだけど
そんなことを思っているのを察したのかまた殴られた
幼女にぺったんこというのも大概だね
――――ここでサル、一世一代の大勝負に出ることになるのであった。
――――――以下、格闘娘
怒られた
そりゃ、ここは病院だもの
当たり前だよね
何が何だかよく分からないけど
私たちは自分の命の危機を脱したのだ
場所を改めて私たちは集まっていた
どうやら、この街の奪還作戦を行うらしい
ロメオさんの使いとしてボス、私、そしてファミリー代表のルリオさんにマイジ君
そして情報提供者のマルコさん
この5人で話し合いの機会を設けたのだ
「いやぁ~、こうしてまた会えるなんて運命の神様フォーチューン様のお導きだネ☆」
「…ハイハイ」
やっぱりうざかった
「それで、具体的にロメオはどんな作戦を立案されたのですか?」
「カッカッカ!俺は…じゃなくてロメオはこんな作戦を考え付いたらしいぜ」
「まったく~ロメオの兄ちゃんもこんな時でも顔出さないなんて空気読めって感じだよな~」
「マイジ。ロメオはやむにやまれぬ事情があって今は顔を出せない事情があるのです。それに、こうして代理の方を出席されているのです。確かに無礼とは思いますが…大目に見ましょう」
ギロリとこちらをにらむルリオさん
「ハハハ…」
私はその痛い視線をかわす為に笑うのが精いっぱいだった
何せ、銃を突き付けられた私
その相手とこうして顔を合わせて喋ってること自体がまだ怖い
「カッカッカ!本当はお前らに会いたくて仕方ねぇんだよ!昔からの友人で、大事な家族だ。信じてやってくれ」
「元気にしてるかなぁ~ロメオ兄ちゃん…」
この二人は本当にロメオさんが好きなんだなぁと感じる
しかし、ロメオさんは何をしているのか
よくよく考えれば、この人たちをだましているに等しいのだ
私の良心が痛む
「よし、じゃあ作戦を発表するぜ!」
ボスは大声をあげて仕切る
みんながボスに注目を集める
「作戦はいたって簡単だ。正面から乗り込んで…ぶっ潰す!!」
「簡単すぎじゃない!?」
私はいてもたってもいられなくてツッコんでしまった…
「カッカッカ。まぁ落ち着け。まるっきり算段がないわけじゃない。」
ボスは私のツッコミが予定調和であるかのように応え続ける
「乗り込むのは、本上とルリオ、マイジだ。まぁ…乗り込むってのは語弊があるなぁ。正確には話し合いをしに行く。だな」
「話し合い?」
「そう、相手だっていきなり抗争に持ち込みたいわけじゃねぇからな。どんだけシマを奪われても、古くからここを守り続けてるファミリー相手だ。犠牲が0なわけじゃねぇ」
「それにしたって…いきなり相手の本丸に乗り込むのよ?そんな無茶苦茶な…」
私の反応を遮って、ルリオさんが発言する
「いや…悪くないかもしれません。我々はいまやギリギリの状態。そこからなんとかイーブンに持ち込もうとするならば、交渉という選択肢は悪くないのかもしれませんね」
「ん~、話し合いで解決かぁ~。お互いに犠牲が出ないならそれが一番いいよね~」
先刻まで私たちに銃を突き付けていたとは思えないくらいの平和主義な発言
「それで、アナタは何をするつもりですか?」
ルリオさんはボスに向けて言う
「ん?俺か?俺は別で動かせてもらう。それは…悪いがここでは言えねぇ。一つ言えるとするなら、この状況をイーブンまで持っていくための秘策だ。それにはチビマルコの情報収集が必要だからな」
「可愛い子猫ちゃんと一緒かい~?☆僕と秘密のデートをしてくれるなんて光栄の限りだよぉ~…ヒッ!」
気持ち悪くニヤつくマルコ
ボスが笑いながら拳を振り上げると条件反射のように縮こまっていた
「カッカッカ!今回の作戦は誰か一人でも失敗すればすべて台無しだ。うま~く歯車がかみ合ってんだよ。でも…お前らを信頼している。絶対に成功するってな」
私たちは誰も発言するわけでもなくお互いの顔を見合わせていた
「絶対成功…させる」
私は一人でこっそりつぶやいた
我ながらすごいバカだと思う
でも、今までの自分では考えられないほどうまく言えないけど高揚感みたいなものがあった。
「それで…お前らに詳しい話をしておくとだな…」
―――――以下、作戦伝達終了
「…こんなところだ。大丈夫かぁ?」
そういい終わると扉をノックする音が聞こえた
「どうぞ。」
ルリオさんがそう言うと
部下の一人が息を切らしながら入ってきた
「失礼します!」
「どうかしたのですか?」
「偵察班からの連絡です。『敵対ファミリー幹部エリカ行方不明』とのことです。いまだに情報はつかめず。潜伏先も分かっていません!」
私たちは色んな思惑が交錯するなかに立っていた
そのことに私たちが気が付くのはもうちょっと後だった