愛ゆえに憎いカタストロフィ
私はボスと病院に向かうことになったらしい
なぜ?
情報屋のマルコから情報を得た私たち
そこらへんは省略
『本当だったら子猫ちゃんたちに莫大なお金を請求しちゃうとこだけど、この分は君たちがもう少しアダルティックなレディに成長したら僕と一夜のアバンチュールで勘弁してあげるよぉ!ハハッ!』
だって
本当はボスにビビって請求出来ないと思ったんじゃないかな
「それで、なんで病院に?」
「カッカッカ!なぜかって?それはとある人に会いに行くからだよ!」
相変わらずの説明不足。
こっちに来てからそういうの多くない?
というより、私のついてきた意味って…
天空の勇者でいうところの正義のそろばん使う商人だよね?
常に馬車…
「カッカッカ!トルネコは使えねぇなぁ!」
名前言っちゃったよ!
あえて伏せてたのに!!
トルネコだって不思議なダンジョンとかだと主役じゃない!!
ドラゴンとか一人で倒しちゃうよ?
「探索してるときに地雷とか踏みつけちゃって爆弾岩まで連動しちまうと大変なことになっちまうよなぁ」
あるある
…じゃなくって!!
「私って来た意味あるのかなぁって。思っちゃっただけだよ…今だってただボスの後ろをついて歩いてるだけだし…」
「良いにきまってんじゃねぇかぁ!ここに来たときはどうなることかと思ったが…今は本上がいてくれたことに感謝してるぜぇ?…ツッコミ役がいないと物語が破たんしちまうよ!」
「そういう要因!?」
メタがすぎるよ!!
私たちは病院までの道のりを歩いている
こんなアホなやりとりをしてるけど、ここまでの道のりはいたってシリアスであった。
こんな緩和剤でもなければ、とてつもない冒険活劇になることだろう
改めて、この街を見回してみる
とても古い
歴史を感じさせる街並みだ
まるで異国のような情緒をかんじさせる
そう、私が思い描くヨーロッパのような…
「ここヨーロッパだぜ?」
「え?」
「カッカッカ!お前、今まで自分がどこにいるかわかってなかったのか!?」
「だって、みんな日本語喋ってたよ!?明らかにノリが日本人だし、ネタだって日本人ノリじゃない!?」
「カッカッカ!そこはこの小説を海外向けの英文ノベルにしないための便宜ってもんじゃねぇかぁ?」
「そんな都合の良いことあるの!?」
『あー…あー…そんな都合のいいものがあるでござる』
「うわっ、気持ち悪い!」
脳内に直接響くような声が聞こえた
『うむ、無事に着いたようで何よりでござる』
「その声は…狭間さん?」
『いかにも。拙者は狭間あさひでござる。…今は』
「今は!?意味わかんないよ!」
そんなことは今はどうでもよかった。
「それよりこの声はどうなってるの?すごく気持ち悪いんだけど?」
『ふむ、これは転送者用の通信でござる。凄いでござろう?これ、魔法なのだぜ?』
「なのだぜってなによ…」
改めて、自分がいま非現実的な状況にいると突きつけられる
『うむ、やはり異世界においてコミュニケーションというものは大事でござるからな。転送者には自動的に転送先の言語を自動翻訳する機能がついてるでござる』
「なにを言ってるのか分からないよ…」
『簡単に言えば、翻訳こんにゃくみたいなもんでござるな』
どらえも~ん!!
どこまでもネコ型ロボットの後追いみたいな人だな
『現地のジョークや意訳は日本向けのジョークにアレンジされる機能もついているでござる』
「それって凄いけど、翻訳としてはどうなの?」
「カッカッカ、俺はこっちの言葉もペラペラだから意味ねーけどなぁ。」
とにかく、物語上で非常に都合の良い産物だというのは分かった
「まぁ、それはいいとして…いきなりどうしたの?こんな時に通信だなんて」
こういうことに慣れてしまってきている自分が嫌だ
ここは読者のためにも、説明パートは省略しておこう
『えぇ~、今部屋に一人でぇ~寂しくなってぇ~電話しちゃったぁ~』
「彼女か!!」
『私のことぉ~どれくらい好きぃ~?』
「彼女か!」
『私のほうがもっともっと好きだよぉ~?』
「…彼女か」
…このやりとりいつまで続くの?
『私ぃ~鎌倉のほうで女性ばっかの大学行ってるんですぅ~』
「…え?…あ!鎌女か!!!」
すごくツッコミが難しいご当地ネタありがとうございます
『うむ、本上氏はツッコミの鬼才でござるな。その溢れんばかりのボキャブラリーにぐぅの音もでないでござるよ』
なんか…とても嬉しくないです
『それより、今のとこ何か情報はないでござるか?サル氏の情報は?』
「う~ん、それがサル君を探しにきてるはずなのにすごく変な方向にね…今のところ手がかりなしでさらに厄介ごとが増えちゃいました。みたいな感じかな」
『ふむ、状況は好転せず…でござるか。』
むしろ、変に回り道してるような気がしてならない
だが、ボスはとても気楽な顔だった
「カッカッカ!大丈夫だぜぇ!俺はすでにある程度は目星がついてるからなぁ!」
「え…?そうなの?とても私にはそんな風には感じないんだけど」
『なんと!!流川氏はさすがでござるよ!!』
「だから、お前は何も心配するな!安心してサルのお出迎えの準備をしておけよぉ?」
『うむ…!!会ったばかりの拙者のためにここまでしていただいて…本当に感謝してもし足りないでござるよ…!!二人の無事も祈っているでござる…!!また何かあったら連絡するでござる!!』
そういうと声はぱったりと聞こえなくなった
唐突すぎる人だと思う
この一日でだいぶ唐突なことが多いなぁ
唐突すぎて本当に何年分くらいの経験をした気がする
「てれてれてってってー。おめでとう!ていははレベルアップした!」
「いや、何言ってんの…」
こんなやり取りをしてるとボスは足を止めた
「さて…ついたぜぇ。ここだ」
なんかあっという間というかなんというか
顔をあげて全容を把握してみる
街の規模にしてはとても綺麗で
大きめの病院であった
「で、ここに誰がいるの?」
「ん?あぁ…言ってなかったけかぁ?ここには…先代のボスがいるんだぜぇ?」
「えぇ!?聞いてないんですけど!!」
なぜ?
病院には前にここらへんを仕切ってたファミリーの先代がいるらしい
疑問ばかりが頭に浮かんでくる
「んじゃ、行くかぁ~!!」
「ちょ、ちょっと危なくないの?やっぱ…そういうひとたちなんでしょ?」
「んん~?どういう人たちだってぇ~?よくわかんねぇけど大丈夫じゃねぇの?」
「すごくあやふやだよ!!そんなんでよく来れたな!!」
「まぁ、顔パスだろぉ。顔パス!!」
「え?なに?アンタ、えらいひとなの?」
――――――以下、病院内
「…で、どうして私たちは囲まれてるの?」
「あれぇ?おっかしいなぁ~?」
私たちは病院に入って、ナースに病室の場所を聞いた
とても怪訝な顔をしていた
そりゃそうだろう
こんなとこに女子高校生が二人。なんの用事でファミリーの先代ボスに会いに行くっていうんだってーの
病室に向かう途中でなぜだか知らないけどおっかない顔した黒服の人たちに囲まれてしまった
「おい、お前ら…そこの…病室に何の用事だ?」
そりゃそうなりますよねーーーーーー!!
ましてや、限りなく追い詰められてる状況下
命の危険がある
そりゃ警護の一つや二つついてないとおかしいと思いますよーーーーハハハ
「カッカッカ!おめぇらも変わってねぇようで何よりだ!!…少し疲れ気味かぁ…?」
ボスが大声で相手に話しかける
「ちょっ、ここ病院!!もう少し静かに!」
…って、私もそんな心配してる場合じゃない!!
「あぁ…?」
ぎろりと睨まれる私たち
さらに疑惑が大きくなったようだ
「いえっ、その…私たちは…その…」
私はしどろもどろになってしまった
というか、ここに来た理由をしっかりと聞いていない
ここはボスに…
いやいやいや…こういう場面のボスは極めて危険だ
何をしでかすか分からない
重たい沈黙の中に私の乾いた笑いだけが響く
そんな中、この沈黙を打ち破る声が囲んでいる男たちの後ろから聞こえた
「貴方達、この騒ぎはなんですか。ここは病院ですよ?ボスのお身体にも触ります。静粛に」
とても紳士的で厳正な声はスラっとした高身長の姿勢の綺麗な眼鏡をかけた男性から放たれたものだった
取り囲む男たちはハッとして、道を作るようにその男性の前に整列した
その様相は、統率のとれた一つの軍隊のような動きでもあった
厳格で威厳のある声
気品に満ち溢れていた
傍から見てもここの場を取り仕切る偉い人だというの人だというのがよく分かる人物だ
整列した男たちの中の一人が声を出す
「いえ、ルリオさん…何やら、ボスに用事とかいう怪しい二人がいたもので…」
「ふむ」
そう一言いうと私たちを品定めするかのような目つきで見回した
それから端正な顔立ちから言葉を発する
「失礼、お嬢様方。何分、今は物騒な事が多く起こっているもので部下も少々気が立っています。それで、今回はどの様なご用件でこちらにいらしたのでしょうか?」
こちらが萎縮してしまうくらいに紳士的な態度で私たちに接してくる
「え、えっと…それは…」
先ほどとは違う緊張感があった
ちらっとボスの方を横目で見…
あれ?ボスが横にいない?
意味が分からないけど、ボスは隣にいなかった
それじゃボスはどこに…
「よぉよぉ!ルリオぉ~!!!相変わらずかってぇなぁおめぇはぁ。そんなんじゃいつか窒息死しちまうんじゃねぇのかぁ?」
先ほどまで話していた男性の横で肩に手を回しながら小突いていた
「えぇぇぇ!?」
慣れなれしすぎる!!
なに!?君たちは数年来の同窓会で会った人達みたいになってるよ!?
周りの人も固まっている
周りの空気が凍り付いているのがこれほど分かるような場面もなかなかにお目にかかれない
「…失礼。貴方は?」
先ほどの柔らかい雰囲気ではなく、ギロリとした目つきでボスを睨み付けているようにも見える
やっぱファミリーの偉い人というだけの迫力があった
「…あぁ!!そうだった!…お前は昔っから女に弱かったよなぁ~!そのたびにそんな顔して女泣かせてたもんな~~!分かりやすすぎんぞお前ぇ~!!ちょっとは直せよそういうとこぉ~。俺は嫌いじゃねぇけどなぁ!!」
ボスはまるで物怖じしない雰囲気でむしろ身体を相手に押し付けるような形で相手に迫っている
もうやめて!!もうやめて!!
空気を読んで!!
そういう流れじゃないから!!
いや、初対面の人にその接し方はどういう流れでもありえないから!!
さすがの紳士な男性も額の青筋がピクピク動いているのがここからでも分かるようだった
どうしよう!!
少なくとも私にこの場を取り繕うような技量はなかった
というかそんなスキルを持ち合わせている人なんているのかどうか
誰か~!どうにかして~~!!
「あれぇ~?兄さん、なんで女の人とそんなベタベタしてんの~?彼女?ねぇ~彼女なの?」
どこからともなく、少なくともこの場に似つかわしくない気の抜けた声が聞こえてきた
「兄さんみたいな身も心も鋼で出来たような人にも彼女が出来るもんだねぇ~」
この声が病院の窓の方から聞こえてくることに気が付いた
「少し静かにしていなさい…今はその様な場ではないですよ。…マイジ」
ずり落ちそうな眼鏡をかけ直す仕草をしながら言い放つ兄と呼ばれる男性
私は窓の方に目を向けると、大木の枝に一人の男性が座っていた
「ちょっとそっちに行くから!!ちょっと待ってて!!」
え、ここ4階だよ?
というよりどうやって登ったの?
あぶな…
「よっと――――」
そういうと木にいた男性はこちらの窓に向かって飛び込んだ
「あれぇ?どうしてみんなこんなとこに集まってるの?兄さんに彼女ができたことのお祝い?」
彼は軽々とこちらに飛び込んで見事に着地を決めていた
曲芸師さん…?
まだ、そこまで年齢もいっていないであろう顔つき
たぶん私たちと同い年ぐらい…?
それにしては純粋で綺麗な瞳をしているなぁという印象だ
「おぉ!!マイジじゃねぇかぁ!!元気にしてたかぁ?お前は相変わらず可愛いよなぁ!!ウリウリ」
ボスは相変わらずというか
気持ちの悪いくらいにフレンドリーであった
「うわっ、ねーちゃん誰だよ!!おっぱいあててくんなよ!離せって!!」
突然の新キャラ二人の登場に私は戸惑っていた
それにしても、コイツ無邪気すぎるだろ…
しかし、二人目の来訪者のおかげでなのか先ほどよりは場の雰囲気は和らいできた
言うなら今しかないと決意した私は意を決して発言した
「えっと…私たちは…先代のボスさんに…会いに来ました…」
あっけにとられていたみんなは私に視線を集める
「ふむ…」
「え~、ボスにあいにきたの~?どうして~?」
二人ともボスの腕の中から私に発言をした
「えっと…それは…」
ここでまた言いよどむ
理由がやっぱり分からない。
それでもみんなの注目はやむことがなかった
私はボスにヘルプサインを出した
「ん…、あぁ忘れてたわ!!ついつい、お前らに会えたのがうれしくってなぁ!!わりぃわりぃ!!」
本当にむちゃくちゃだよこの人…
それから、わずかの間を置いてから
少しだけ真剣にしゃべる
「俺はロメオ…」
そこから考えるようにもう少しだけ間を空けた
「…俺たちは…ロメオの使いで来た。ジジイに会わせろ」
せっかく和んだ空気がまた張りつめだした
みんながその名前を口にした瞬間に今までの緩んだ表情から本気の顔つきになった
ボスに抱えられたままだった二人は見合わせるようにして
「兄さん…」
「あぁ…」
そう言葉だけ交わすと
私たちは
―――――床に取り押さえられた―――――――
本当に瞬きもできないほどの速さで一瞬にして床に―――
私もボスも動く間もなくだ
それがどれほどのことなのかはこの物語を読んでいる人には察してもらいたい
そして頭に固いものが当たる
「おい、テメェらその名前をここで口にしたことがどんな事か分かってんだろうな…?」
先ほどの無邪気な表情からはまるで想像もつかないほどの
冷たい
冷たい
温度を感じさせない声を出す弟
「今すぐ死にてぇか?女だろうとなんだろうと容赦はねぇぞ?一瞬であの世に送ってやるよ」
ボスを押さえつける兄
彼も先ほどの紳士的な態度からは想像もつかない言葉遣いと雰囲気をまとわせてボスを見下ろす
そしてボスの方を、なんとか見ると頭に当たってるモノがなんなのかが分かった
拳銃
こんなモノを生で見る日がくるなんて想像もしなかったよ
ましてや、そんなモノを頭に突きつけられて
自分の命を容易く散らすような状況になるなんて…
正直、ここに来るまでは
なんとかなる
とか
ちょっとした好奇心
なんかがあったことも少しは否定しない
でも私たちが置かれている状況はそんなファンタジーじゃなくて
とても冷酷な現実なんだということを実感させられた
一気に恐怖心が湧いた
私みたいな高校生がどうして?
なんで?
怖い…
怖いよ!!
助けて!!
「カッカッカ!!」
私の耳にボスの笑い声が響いた
「なんで…」
どうして
「なんで笑っていられるのよっ!?これはギャグでもなんでもないのよ!?こんな笑えない状況になって何がギャグよ!!こんなの打ち切りよ!打ち切り!!」
私はボスの笑い声がきっかけでどうしようもない感情が溢れでてきた
自分勝手
エゴな感情
分かってはいるけど、止められないものだ。
「おめぇら、変わってねぇなぁ。」
ボスは笑い交じりに押さえつける連中に向けて発言した
そしていきなり大声を張り上げて言い放つ
「おい!!クソジジイ!!聞いてんだろ!!ロメオだよ!!てめぇに小さいころから世話になってやったロメオだ!!黙って見てねぇでなんとか言ったらどうだ!!」
「うるせぇぞ。てめぇ。自分が置かれてる状況が分かってんのか?」
なおも銃を突きつける兄
このまま死んじゃうの?
状況は絶望的だ
私にはどうすることも出来ない
とてもじゃないけど笑える状況ではない。
「…あと…教えといてやるよ。ボスはなぁ…ロメオがいなくなったあとに倒れて寝たきりだ。あのクソヤローが突然行方をくらましやがって。ボスは後始末に追われる中で倒れちまって意識が回復してねぇんだよ。」
「それをノコノコと…ロメオの使いだぁ?いまさら伝言なんて送ってきやがって…アイツの顔を見た瞬間に鉛玉ぶちこんでやるよ。少なくともここにいる連中はみんなロメオを信頼してんたんだ。最高の兄貴だったってな。」
少し声が上ずり涙が出そうになるのを堪えているような感じだった
「あのクソヤローは俺の…俺たちの全てを台無しにした裏切りモノだ!!許されるはずがねぇ!!」
先ほどより強く私に拳銃を当てる
「こいつらを殺してロメオにさらし首にして見せつけてやる。今更…何をやったって無駄だってな…!!」
…絶望的だ
こんなことなら来なければよかった
そう思いかけてしまいそうになるとき
目の前の病室の扉が開いた
中から慌てた男が出てきた
「あぁ?邪魔してんじゃねぇよ。」
兄弟は男を睨み付ける
「…が!」
男は慌てていてしっかりと喋れていなかった
「あ?」
聞き直す
「ボスが…!!ボスが目を覚ましました!!!!」
周囲がざわめく
そのまま続けざまに男がいう
「目を覚ましたボスから伝言です!!」
周りが私たちのことなんて忘れたかのように聞き耳をたてる
「一字一句余さず伝えます!!『ガッカッカ。なにやら気にいらねぇ名前が聞こえてきたと思ったら外が騒がしいじゃねぇか。お前ら、ここは病院だぞぉ?静かにしやがれ。あと、クソロメオがいたら伝えろ。俺はクソジジイじゃねぇ。お前の口の悪さは誰に似たんだ。』」
なんという豪気さ
なんというボス
みんなが聞き逃すまいと集中している
「『あと一つ…ロメオ。そろそろあいつらの鼻を明かしてやれ。構わん。ファミリーの全実権をお前に貸してやる。この街を取り戻せ。お前に任す。ここらで育ててやった恩の一つや二つ返しやがれロメオ』…以上です」
「で、ボスは?」
「それだけ、言い残すとまた眠ってしまいました…」
周りは黙ったままでした
兄弟は今にも泣きださんばかりの顔でした
「ボス…貴方はロメオを…今でも…」
「うぅっ…ボスゥ~ボス~」
自然と私たちに対しての力が緩まりその場から立ち上がる
「だ、そうです。貴方達。ロメオにそう伝えてくれますか?」
いつも通りの様子に戻り
毅然とした態度に戻る兄
いまだに、ひきづっている弟を抱き起す
ボスは
解放されたあとも地面に横になったままだった
「ボス…?」
私は心配になり声をかける
するとボスは少しだけ何かを堪えるようにしたあとに言った
「カッカッカ!あのクソジジイは相変わらずだ。オイシイとこだけもっていきやがる。かっこつけやがるぜぇ…」
そして決意の表情をして真剣な面持ちで起き上がり周囲に向かって訴える
「おい!お前ら!聞いたな!!ボスの意志はまだ諦めちゃいねぇ!!それなのにお前らが先に諦めてどうすんだ!!ロメオを許せとは言わねぇ!!だが、ロメオは確かに生きている。
ここにいる兄弟達のために生きているぜ!!お前らがどう思うか!!お前らが…お前らがどれだけ『俺』を憎もうとも!!『俺』はお前らを愛している!!まだだ!!これからだ!!『俺』はクソジジイ…先代ボスの意志を受け継いで立ち上がる!!」
そして、ボスは笑顔でこう応えた
「…すまなかった。お前ら…待たせて悪かったな…」
少しの沈黙のあと
みんなの心が一つになったことを確信したあと
一斉に歓声があがった。
ボスの後姿…
あれ…?
ロ…ロメオさん…?
なぜだか、ボスの後姿に男性の影を見たような気がした