過ちと修正と未来への歩み方
そんなわけでマルコのおうちにやってきましたとさ
どういうわけだろう
ちゃんちゃん
「いや~美少女二人を部屋に招く機会があるなんて、僕もついてるなぁ~☆ハハッ」
このとてもウザい男はマルコ
この街の住人で、情報屋という側面も持っている
…らしい
こんな軽薄そうな大学生ノリの男がである
すっかり調子を取り戻し、相変わらず軽口を叩いている
「これでも、わりかし女の子にはモテるほうなんだけどNE~☆でも、君たちみたいになかなかなびかない女の子のほうが燃えるっていうか?バーニングっていうか?」
「カッカッカ!こんなおんぼろの割に中は豪華じゃねぇか!!」
地元の人間しか通らないような薄暗い路地を抜けて
今にも崩れそうな雑居ビルの中にマルコの住居は存在していた
ボスの言うとおり中はビルの外見と違って、非常に真新しい印象を受けた
この男が口だけではなくて、本当におしゃれさんなんだと思わせる説得力はあった
見た目とか雰囲気は苦手だけど…
というか、ボスくつろぎすぎ
お前の家か!とツッコミたくなるほどに他人の住居でくつろいでいる
「そんでよぉ、チビマルコよ。さっそく話があるんだけどよぉ」
ボスのそんな発言に少しビビる姿勢を見せるマルコ
やっぱり初っ端の出来事が非常にトラウマらしい
いや、当たり前だよね
片玉どころか
両玉失いかけたんだから
「違う!!…僕は片玉じゃない!!ちゃんと両玉あるよ!!」
「え?いや、だって…」
私の思考を読み取ったのか
はたまた、ボスに話をかけられて昔の思い出がフラッシュバックしたのか
いきなり拒絶するような声を張り上げた
「あれは…近所のロメオが…俺をバイクで追いかけまわして…ブツブツ…」
どうやら触れてはいけないことらしい
私も初対面の人をそこまで追い詰める趣味はないし、放っておくことにした
「カッカッカ!バイクで追いかけまわされたあげくに、近所の野良犬のしっぽを踏んづけて玉を食いちぎられかけて医者に駆け込んだんだっけなぁ!!」
容赦ないなボス!!
人のトラウマにデンプシーロールで追い打ちをかける所業だよ!!
「だからぁ!君はどうしてそのことを知ってるんだよぉ!?ははーん、さては僕のストーカーだな!?僕のことが好きすぎて、僕の情報を盗もうとするイケナイキューピッドさんだな!?」
この男はこんな時でもボケを忘れないらしい
「カッカッカ!こまけぇこたぁいいんだよ!!なんなら、今度は本当に玉をくいちぎってやろうかぁ?」
「ヒィイ!ストップ!本当に勘弁してくれよ」
ボスがもう一度、股に手を伸ばそうとすると必死に抵抗しているマルコ
まるで昔っからのイジメっことイジメられっこのようだった
「もう!せっかく、この街からロメオがいなくなったっていうのに…とんでもない災難だよ!」
「ん?ロメオさんって人がいなくなっちゃったの?」
今の会話に出てきたロメオ
マルコさんが玉を失いかけた原因の人
「そう!ロメオは昔からの仲でね…。本当に最悪なんだよアイツぅ!!昔から僕のことをバカにしやがって…しかも、突然にいなくなりやがったんだ!」
なんとなくさっきの酒場で話してた内容と結びつきそうな気がする
「そのロメオさんって…もしかして結構危ない人?」
「そう!ロメオは危ない人!この街のファミリーの幹部だったんだよぉ!!どうしようもない悪ガキで…本当にどうしようもない悪ガキだったんだ!アイツがファミリーになるのは決まってたようなもんだよ!!」
どんだけどうしようもない人だったんだろう…ロメオさん…
「おい!!このベッドの下にポルノが隠してあるぞ!ちょっとは隠し場所考えろよなぁマルコぉ!!」
どうしようもないな!!ボス!!
…ここにもどうしようもない人が一人いた
やめて、そんな本を私に見せないでよ…
「うわぁぁ!やめろよぉ!健全な男性のいたいけな心をそんなおおっぴらにうら若きレディが乱しちゃダメじゃないかぁぁ!」
なんなんだろう
中学生の会話みたい…
いちいち話の腰が折れてしまう
「それで…この街がめちゃくちゃになる原因になったロメオさんってどうなってるの?情報屋さんなんでしょ?」
私が仕切りなおさないとたぶんめちゃくちゃになりそうな気がした
「あ…あぁ~。それがね、さっきのバーでの会話の通り。海外での取引中に行方不明さぁ。僕の情報網でも追いかけきれなかったよ☆大概の情報は入ってくる僕だけど、」
そうなんだ…見つかるといいね…ロメオさん…
で、私たちは何をしにきたんだっけ?
私はボスに向き直る
「そういえば、さっきボスがマルコさんに聞きたいことがあるって言ったじゃない?正直、今の話からサル君を探し出すことに結びつけるのは無理があると思うけど」
「そうだったなぁ!ロメオ…の話はどうでもいい。それは二の次だ!いや、三の次くらいか?」
どっちでもいいよ!
「まぁ、いいかぁ!いやなぁ。とある人物の行方…いや…マルコもよく知ってると思うけどよぉ…エリカは…いま何してるんだぁ?どこにいる?」
エリカ?
誰?
私たちはサル君を探しにきたんじゃないの?
サル君ってエリカって名前なの?
「ちょっち!ちょっち!!なんで子猫ちゃんはそんなとこまで知ってるのぉ!?まさかまさかのまさかだよぉ!」
マルコはありえない単語が出てきた事に驚いているようだった
私には何が何だか分からない
「ん~、どこまで話していいものか…元々は隣のシマのファミリーの子だったからねぇ~。なんで、ロメオはあんな女をガールフレンドにしたのか分からないよ。」
また出てきたロメオという名前
「確かに、目もくらむような美女だったけど、僕には毒が強すぎたよぉ。あれはね、メデューサだよぉ。あの美貌とは裏腹に…だね。やっぱ女性は純真無垢で天使のような…」
「んな話はどうでもいいんだよぉ!アイツが…エリカがどこにいるのか教えろよマルコぉ!」
いつも通りに聞こえるボスの口調だけど
どこか真剣にもとれる感じだった
「ちょっとちょっとぉ!落ち着きなよ子猫ちゃん?せっかくの綺麗なお顔なんだからサ☆」
この人もさんざん痛めつけられてるけど、自分のスタンスを崩さないようにしているのが分かる
まだこんな調子で喋れているのだからすごい
「エリカはねぇ…ロメオがいなくなったあとに、この街で元のファミリーの手引きをして合流サ☆今はこの街を牛耳ってるYO!最初からこれが狙いでロメオに近づいたとしたらとんでもない女だよ本当にさぁ~」
「よく分からないんだけど…今の話だけでまとめると、行方不明のロメオさんの彼女さんがエリカさん?そのエリカさんは今この街を仕切ってる組のボスなの?」
「ん~そんなとこかなぁ。この街の支部長さんみたいな感じカナ?すごいよねぇ。女なのに、ファミリー取り仕切ってるなんてさ!」
話の全体はよく掴めないけど
大体の流れは把握できた。
ますます、サル君から遠ざかってるような気がする
なんで私は会ったこともない人の心配をしてるんだろう?
「くあぁ!ややこしいことになってんなぁ!おいマルコ!ルリオとマイジはどうしたぁ!あの二人がいれば問題なかったはずだろぉ!?」
「どこまで事情通なんだよぉ子猫ちゃん…。ファミリーのあの二人はあっさりと引いたらしいよ。あの二人もロメオにべったりだったからねぇ。ファミリー全体をまとめきれなくてやられる一方だったらしいよ。今となっちゃ、むやみに血を流すような事がない英断だったと思うけどねぇ~」
そこまで聞くと、ボスは何かに気が付いたようにぐったりと椅子にもたれかかった
「カッカッカ…。俺は色々と見誤ってたなぁ…。俺は昔からいつも通りに振舞っていただけだったが、いつの間にか多くのモノを背負ってたんだなぁ。結局は、巡り巡ってなんの運命か。俺はこのために生かされてたんじゃないかと思っちまうぜ…」
ボスは笑いながらも、すごく辛そうであった
こんな表情をする人だったんだ
いつも明るくて
破天荒な振る舞いをする
そんなどうしようもない人だとばかりと思っていたけど
想像以上に何か重いものを背負っているのかもしれない
だからこそひきつけられるのかもしれない
「おぉ、子猫ちゃん。落ち込んでる姿もとてもキュートだね…!むしろ、僕的にはそっちのほうがそそられ―――ブオッ」
私は空気を読んでマルコの口をふさいだ
正直なところ
ここまで落ち込んでる姿を見せられると私も可哀想に思えてくる
ボスには常に笑っていてほしいというかなんというか
「ボス……その…今からでも大丈夫じゃないかな?サル君を探すんでしょ?今のボスが何を抱えているのか私にはよく分からないけど、ここに来たのも何かの運命なんだろうね。
もしかしたらボスの過ちとかやり直せるのかもしれない。自分が気が付かなかった事とか。そういうのを全てやり直していこうよ。これからさ。私も力になるよ?何の関係もないかもしれないけど、ここの場所がスタートなのかもしれないよ?ボスには笑顔でいてほしいな」
私は知った風な口を聞いてしまった
偉そうなことを言っちゃったなとちょっと気恥ずかしくなってしまった
でもこれが正直なボスへの気持ち
ボスは少し考えた後に綺麗な顔をこちらに向け私を見つめてきた
「本上よぉ…」
「ん?」
「…お前はいい嫁になるぜぇ!俺のお墨付きだ!世界中の男がほっておかねぇ!むしろ俺の嫁になれ!」
百合宣言!?
私にそんな趣味はありません!!
「僕は今、とんでもない美しい場面を見てしまったようだぁ!!どうぞどうぞ続けて続けて!!出来れば手を取り合って顔を近づけて…」
「ちょっ…なにしてんの!バカじゃないの!?」
カメラをこちらに向けようとするマルコを思わずはたいてしまった
「カッカッカ!おめぇもこりねぇ男だなぁ!マルコ!」
笑顔でそう答えるボス
その顔にはもう曇りはなかった
良かった
さて―――これからどうなるんでしょう
――――以下、サル
前略、おふくろ様
僕はさくらんぼからパラディンにクラスチェンジできなかったようです
ですが
女性と一夜を明かす
これは半分クラスチェンジしたも同然だと思います
半クラです。半クラ
あれって、加減が難しいよね。
エンストしちゃうよね
シャワーを浴びてる時も胸の高鳴りが収まりませんでした
鳴り止まない熱き鼓動の果てに です
シャワーからあがる僕
僕はいつでもいいぜぇふじこちゅわ~ん!!
…?
どうやら、相手はお酒を飲んでいらっしゃるようです
「ちょっとぉ、話を聞いてくれるかしら」
どうやら酒の愚痴に付き合わされるようです
ふむ。
このやりばのない衝動をどうしようか
椅子に腰かける女性の前でパンツ一丁の僕が正座をすることになった
すごく恥ずかしいです
女性の前で裸な時点でだいぶアレですが
そのうえ正座って!!
そういう業界の人からしたらご褒美なんだろうけどさ
まだ高校生よ?
分かる?
アリアハンでうごく石像を相手にするようなもんよ?
すっかり萎縮してしまった
「私の酒が飲めないっていうのぼうやぁ?」
「飲めるも何も僕…未成年ですし…」
この人は大人の雰囲気が漂っていらっしゃる
フェロモンムンムン
こんなに美しい人とどうして僕が一緒にいるんでしょうか?
――――回想
僕は64な大乱闘をマッチョな方々と一緒にやっていると
いやね
その時点でだいぶ変なんだけどさ
さらにとんでもないイベントが
ボロボロになった人がいきなり扉から入ってきた
ロマンシングなサガの3なら、お姫様が入ってくるようなイベントだけど
残念ながら、太っちょの男が男二人をかつぎながら入ってきた
それから一通りの挙動不審のあとにこう言った
―――――ロ…ロメオが帰ってきた!!――――――
僕からしたら
え?誰?ロメオ?欧米か!!
って感じなわけですよ
でも周りの反応は違った。
部屋の至るところで畏怖ともとれるようなざわめきが起きた
そうしたら一人の男の合図を機にみんな部屋を飛び出していったんだ
僕からしたらぽかーんだよね?
空気を読んで一緒に飛び出していくべきだったかな?
とにかく一人で取り残されちゃったの
あれ?僕は帰っていいのかな?って感じだよね
でも、正直なとこどこだか分からないし
少しおろおろしちゃった。
とりあえず部屋から出てみた
そしたらさ、なんかすごい大きい廊下で
ここで100m走できるんじゃないかってね
扉もいっぱいあるしさ
ここでまた僕はおろおろしちゃった
しょうがないよね?
ごくごく普通の高校生だもん。
こんな廊下は漫画でしか見たことないもん
とりあえず歩いてみるの
でもさ
道に迷っちゃった
似たような作りで
似たような景色がずっと続いてるみたいな感じでさ
途方に暮れちゃったよ
そうしたら声をかけられちゃったよ
「あら、アナタなにしてるのぉ?」
振り返るじゃない?
そこにはバインバインの美女が立ってるわけ
あぁそうか、ここが天国かと勘違いしちゃったよ
「聞いてるぅ?」
「は、はい!!アナタが綺麗すぎてムラムラしました!!」
しまった!!
本音と性欲がストレートに声に出てしまった!!
おまわりさーん!僕です―!!
「ちょっとぉ。正直すぎるわよぉ」
そういって聖母のような微笑みを僕に投げかけてくれた
同じ人間とは思えないほどの綺麗さだった
「ん~、アナタちょっと暇?よかったら私の部屋に来ない?」
「ハイ!喜んで!!」
我ながら欲情にストレートすぎ、久々の長い喋りだからって自重を知らなすぎだな僕
居酒屋の店員さんのような気持ちの良い笑顔で応えてしまった
そこからはみんなも見ていてくれた通りだ。
あぁ、そうだ…
僕のマスコット的なまりもの存在を忘れていた
そんなことを言うと怒られてしまいそうだけど
もちろん傍にいる
だけど、なぜかあまり姿を見せてくれなくなっていた
時たま姿を見せたと思ったらスッっとどこかにいなくなってしまう
あんなまりもでも、いなくなると寂しいもんだ。
ちなみに、僕がおねーさんと会話しているときは軽蔑のまなざしで僕を睨み付けていた
フフフ…なんとでも思うがいいさ…
―――――回想終了
「…というわけなのよぉ。聞いてるオサルさん?」
「はいぃ!もちろんでしゅ!」
赤ちゃん言葉で甘えたくなるくらいの女性なのだ
「ウフフ…可愛い子ねぇ。それに…すごく…似てる」
「似てる?誰にですか?」
「若い時のロメオそっくり。雰囲気っていうか」
「ロメオが誰だかわかりませんが、おねーさんみたいな綺麗な人と一緒にいれて幸せです!!」
「さっきも言ったじゃないのぉ。ロメオは私のオ・ト・コ」
「彼氏さんいらっしゃったんですか…?」
僕、ショック!!
いや、このおねーさんとどうのこうの出来るとか思ってないよ?本当に本当だからね?…本当だよ!?
「う~ん、今でもなのかなぁ?おねーさんには難しいかなぁ~?」
いやん、そんな曖昧で小悪魔な微笑み!
天使のような悪魔の笑顔!!
そんな返事が出来るなんて素敵すぎます。
「ロメオねぇ…今頃、どうしてるのかしら?死んでたりして」
ちょっと悲しげに微笑むおねーさん
「おねーさんにそんな顔させるなんて、ロメオって人は罪な男です!そんな男は忘れて僕と…!!」
「ウフフ…ダーメ。坊やはちゃんと大事な人と…ね?」
こんな顔されたら何も言えなくなっちゃうぜ!!
ひゃっほーい!
むしろ、こんな女性と会話できるだけでもありがたいというものだ
「そろそろ、行かなくちゃ。楽しかったわ、ありがとうね坊や。この部屋は好きに使ってね。でも、危ないから当分はこの部屋からは出ないほうがいいわよ」
「あぁ~おねーさん~」
僕はおねーさんの後姿を恨めしそうに眺めていた
すると振り返り僕に向かってこう言った
「そ・れ・と、私はおねーさんじゃなくて『エリカ』って呼んでくれなきゃだ~め」