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運命とは必然の連続から成るもの

本上ていは


彼女は見知らぬ空間にいた

それも当たり前の事だろう。


彼女はほんの数分前まで学校の教室にいたはずであった


しかし、眼前に広がるのは古びたランプ



建物自体が古びている


アンティークやクラシック


響きはいいが

長い年月を経た建物である


一畳もないであろうそのスペース


その中心には便器があった


「ん…まさか…」


彼女は戦慄した

いや、一定の文化水準にある人間ならば誰でも嫌がるであろう



「ここトイレじゃない!!ちょっ…!!」


非常に不潔である。

お世辞にも綺麗とはいいがたいその場所に横たわっていたのである


すぐに身体を起こす


まだ少し足もとがおぼつかない

少し景色がぐらついているように感じる


少し落ち着かなきゃ―――


彼女は便座に腰をかける

何も便意を催してのことではない

この小説を放尿プレイのエロエロサービスカット小説にするわけにはいかないのだ


「ボス?っていうかここどこよ?」


なにぶん、どこでもドアを現実に体験するとは

まったくの初体験だ

アインシュタインでもこんな経験はしたことがないだろう


こういうときって案外に冷静でいられるものなんだと思う。


即座に状況分析につとめる


「…ふぅ。なんかもう少し…かっこよく登場!!とかないのかな?なんでトイレとかバケツとかおまるとか。そういうのになっちゃうわけ?」


それは作者自身にも分からない部分である。


すると、ふと目の前の扉ががちゃりと音を立てた

ドアを開ける音である


それはそうだ


彼女は目を覚ましてから、このトイレの中にいて

それからあまり確認をする間もなく便座に腰をかけている


鍵をしていなかったのだ


「あ…」「あ…」


お互いに向かい合う

声が重なる


『あぁぁぁぁぁ!!』


そこからが早かった

彼女

もとい

本上ていは

すくっと立ち

おもむろに入ってこようとした人に


全力で蹴りを入れた


その行動は何故か


まず

相手が男であると認識したことだ

本上ていは

花も恥じらうピチピチの高校生である

トイレという場で男に出くわすなんてことはあってはならないことである


もちろん、実際にトイレをしているわけではないので恥ずかしい気持ちがあるわけではないのだが…

いや

例え、トイレで催していなくても

個人的空間・領域に他人が入ってくるのは

恥ずかしいものである


とっさに出てしまった行動が

彼女が慣れ親しんだ

蹴り

という動作につながってしまったのだろう


男は彼女の見事な蹴りにトイレから弾き出され

外の壁まで吹っ飛んでしまった


本上はそこで初めてトイレの外の世界を目撃することになる


なんてことはない

映画に出てきそうな古びた洒落たバーのような場所だった


なぜバーのような場所?

バーじゃないの?

と思うかもしれないが


いかんせん


本上は未成年である


※未成年の飲酒は法律によって禁じられています


バーという場所には縁がないので

映画で観たことがある

そんなイメージしかないのである


カウンターには店員らしき人物とお客さんが数人


テーブル席にも3人ほど座っていた


みんな目を丸くしている


無理も無い


そこにいるはずのない


制服姿の女子高生がいきなり

男を蹴飛ばして出てきたのである


「あ…あ…そうだ!!すいません!…すいませんでした!!」


謝った


何に対して?


蹴飛ばした男にだろうか

それともいきなり驚かせちゃってすいません

そんな意味合いだろうか?


どちらもであろう


あたかも自動防御オートディフェンスのような鮮やかな蹴り技は相手を失神させるには充分であった


カウンター席にいる客らしき人が、吹っ飛ばされた相手と本上を交互に見渡しコソコソ話を始めた

マスターに見える男性も我関せずとグラスを磨いている


本上は首をかしげる


え?


スルー?


自分でした事ながら予想外の反応に唖然とした


どうも何かに怯えているようにも見える


何に?


そんな事を考えているとテーブル席のほうで大きな音が鳴った


慌てて身を構える


「オメーは焼きそばパンマンのほうがいいってのかオラァ!!アァ!?」


「アンパンマンの登場キャラの声優全部言えんのか!?やんのかコラァ!?」


なんつー話をしてるんだ

さすがの本上も対象外である


大の大人二人がアンパンマンについて真剣に議論し合っている


しかも明らかにカタギな感じではない二人だ


その会話内容とその風貌のギャップはとてつもない大きなものであった


「困ったときの山寺だぞ!?オメー分かってんのか!?誰もチーズとカバオが一緒だとは思わねぇだろコラァ!?」


「今は山寺の話してんじゃねーんだよクソヤロー!!それに『カバオ』じゃなくて『カバお』だテメェ!!喧嘩売ってんンのかオラァ!?」


もはやいちゃもんレベルの会話である


こいつらは喧嘩を売りながら真剣な議論をしているのである


――――以下、アンパンマン議論中略



「だから、ウルトラマンは80が新人のペーペーでウルトラ一族というエリート部隊の一員になれるかが問題なんじゃねぇのかよ!?」


「アァ!?ウルトラマングレートの話してんだろうがよ!!オーストラリアってなんだよオラァ!!」


…話がウルトラマンになっちゃったよ!!

さすがの本上も想定外である

しかもお互いにまったくかみ合ってない所がなんとも歯がゆい


そうこうしてるうちに私が吹っ飛ばした人が目を覚ました

小太りで目は髪の毛で隠れていて見えない

壁にもたれかかるように倒れていたが

ハッと目を覚ましてきょろきょろと辺りを見渡している


どうやら自分に何が起こったのか理解していないようでもあった


本上はすっかり雰囲気にのまれていた


小太りの蹴りあげてしまった男性に声をかける


「あ、あの…先ほどは…」


男性はビクッとしてそそくさと本上から距離をとって

離れていった


ぽてぽて


そんな効果音がしそうな足取りで


そして言い争いしている二人の所に行くと

あたふたしながら二人に向かい何かぶつぶつ呟いている


「あぁ!?」「うるせぇぞ!ノブタ!!邪魔すんじゃねぇぞオラ!!」


先ほどまであんなにいがみ合っていた二人の意見が一つになったとき

野ぶたと呼ばれた男性は


――――またもや、宙を舞い地面に叩き付けられた


まさかまさか

ダブルパンチを喰らう事になると


顔面にめり込んだ二つの拳は野ぶたを再度失神させるには十分な威力であった


「うわぁ…」


さすがの本上もこれには引いた

…自分も加害者の一人であることを彼女は忘れていた


それにしても、この状況下でいまだに誰もはた迷惑な客を止めにこない


どういうことのなのであろうか


彼女は小声で隣にいる人物に話をかける


「ちょっと…!!さっきから何でずっと黙ってんのよ…!!」


さてはて

本上はこの場にいるはずのない誰かに向かって話をかけている

いったい誰に向かって話しているのやら…


「こういう時は、いの一番にでしゃばるのがアンタの役割でしょう…!?」





――――ボス!!―――――





「んあぁ?」


「ずっと黙ってナレーション気取りでもしてたっての?脳内の解説がだだ漏れみたいになってたよ!?なにが『この場にいるはずのない』…なのよ!一緒にここまで来て、今もずっと一緒にいたじゃない!珍しく黙ってると思ってたら何やってんのよ!??」


…カッカッカ


まったく


この小娘は…せっかくの新舞台だっていうから脳内ナレーションで読者様に新しい気持ちを味わってもらおうと思ってたのによぉ…


らしくない喋り方でずっと喋ってたのが台無しじゃネェかぁ!!

このシリーズはあわよくばずっとナレーションで通してやろうと思ってたのによぉ…


「…だがそのイレギュラーな感じもたまんねぇなぁ!!」


「むしろ、イレギュラーなのはボスの行動の方だと思うんだけど…」


…まったくだった!!


たはー!!

こんなイイ女がいるもんだなぁ~!!

俺が男だったら惚れちまってるぜ!!

男だけどな!!


…うむ


ここで、読者諸君にもう一度説明をしておく必要があるなぁ


俺は男だ


だが玉はない


―――――もちろん棒もないっ!!


…いきなり下ネタかよ!!って思ったろ?

カッカッカ!!

こまけぇこたぁいいんだよ!


別に去勢手術で取ったわけじゃねぇし

好きで男を捨てたわけじゃねぇんだな


かくかくしかじか


死んだら男→女

になってたってことよぉ!


笑っちまうだろ?


カッカッカ


つまり今の俺は


身体は女 頭脳は男 その名も―――


「名探偵みとる様じゃ~~~~!!」ドーーーーーーン



…やべぇ


勢い余って

訳わかんねぇ男を二人吹っ飛ばしちまった…



「ちょっ!!ボス!!探偵にあるまじき暴力行為だよ!?何も推理してないし!!その某海賊王みたいな演出はなに?」


「ん?あぁ、つい勢いづいてやった。反省はしていない」


「いやいや…そんな、事件の供述みたいな感じに言われても困るからね。…ってか、反省しろよ」


「カッカッカ!大丈夫だぜぇ?この二人なら…」


あぁ、あと一個訂正があったわ

見知らぬ空間なんて冒頭にナレーションしたけどよ…


「イテェ…。イテーぇぇぇぇェ!!!!!ごるぁ!!!!?テメェ、どこの平成ライダーだごるぁ!????」


「カッカッカ。威勢がいいじゃねぇか!さすがにあのクソババアのトコのモンだなぁ?」


「あぁ?テメェ…なにいっt…」バコ


「あー、ワリーワリー。も一発いっちまったなぁ?あと、クソババアに伝えておけ。」


「あ…ああァ…」


「―――――――ってな」


そうだな。

神様ってヤツは運命をうまく回してるってもんだ


こうやって新しい人生を与えられた


だけ


そう思ってたけどよぉ


まさか、こんな風に巡ってくるなんてよぉ





――――――――ここは俺の故郷だ―――――――





















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