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配達員クビになって絶望してたらライブ配信という仕事を見つけた

「それでは合否については一週間以内に連絡しますね。

本日はお越しいただきありがとうございました。」


ニコリとも笑わず、事務的な言葉で告げられその日の面接は終わった。

ちょうど日が落ちた頃だった。

今日で3社目、手ごたえは全くと言っていいほどない。

どの面接官も俺に全く興味を示していないからだ。


俺、霧崎光一は求職中のしがないフリーターだ。今年で22になる。


今日も仕事の面接に行ってきたが手ごたえを全く感じられず、虚無感のままボロアパートの一室に帰宅するところだ。

これでちょうど1か月、合格通知は未だ届いていない。

面接官の無関心そうな質問1つ2つであっさりと帰され、無駄足になってしまったことを悟る。


(はあ、今回もダメだったな…)

重い溜息を吐きゆっくりと足取りを進める俺。

毎回必死に用意した履歴書を捨てられるのもこれで何回目だろう。

ここまで連敗続きだとさすがに心が折れてくる。というかもうとっくに折れている。


大学時代、終活に失敗しどこの会社にも就職できなかった俺は、行く当てもなくフードデリバリーのウーラーイーツ配達員をはじめた。

はじめは就職できなかったショックで嫌嫌な気持ちだったがこれがなかなか性に合っていた。

煩わしい人間関係もなく自分のペースで続けられる配達がそれなりに気に入っていたのだ。


ところが4年目にしてとんでもないミスを犯してしまい、突如としてその職を失うこととなった。

一目ぼれした女性のお客さんに連絡先を聞いてしまい、それを運営に報告されてしまったのだ。

今思えば馬鹿な失敗だったが、女優か芸能人かと疑ってしまうようなその容姿に心奪われルール違反だとわかっていながらも「LINEを交換してください」と言ってしまった。


まあ、当然断られるわけだ。

初対面でどこの誰かもわからない配達員にLINEを教えてくれる物好きな女性はいないだろう。

ウーラーイーツ運営のコミュニティガイドライン違反に引っ掛かり無慈悲に契約を打ち切られた。


やむをえず就職活動を始めるのだが、どこの会社も3年間個人事業主で配達員をしていたという職歴を見て難色を示す。

しかもその後、


「なんで正社員に就かなかったの?」

「前の仕事はなんで辞めちゃったの?」


そう聞かれてうまく答えられるはずもなくどもってしまうと

『ああ、こいつはいいか』という顔で見られその後は事務的な質問1つ2つ聞いて帰されるのだ。


不動産の営業、飲食店のホール、引越し屋。いろんな職種で応募してみたが

どこも書類で落とされるか面接で落とされるかのどちらかだった。

だいたいどこの面接官もどの会社にも属さず個人事業主でやってきた職歴が引っかかるらしい。

これといった資格もないFラン大学出身という肩書きも足を引っ張って余計にうまくいかない。


「いよいよ嘘の職歴書かなきゃダメかもな」

吐き捨てるようにポツリとつぶやいた。


近くの公園のベンチに腰掛け、スマホを開く。

気持ちが落ち込んでいても次の求人に応募しなければならない。

来月の家賃の支払い日が待っている俺に止まっている暇はないのだ。


今のアパートを追い出されれば実家に帰らなければならない。

そうなれば両親にも今の現状を話さなくてはならない。

「普通の会社に勤めているよ」と見栄張って嘘をついているのでその体裁を壊すわけにはいかない。


いい求人がないか画面をスクロールして探していると、とある広告が目に留まった。


『あなたを元気にするライブ配信アプリHappiness♪ いますぐダウンロード!』


(ライブ配信か、そういえば最近流行ってるよな)


去年からNutubeの広告等にも頻繁にでてきている音声配信アプリのHappiness 。


「今日はこの後面接もないし聴いてみるか。」


なんの気まぐれかHappinessのアプリをスマホにダウンロードした。

どんよりした気持ちのまま職探ししててもうまくいかないだろうから少しでも気を紛らわしたかったのかもしれない。


プロフィール設定に本名の『コーイチ』で登録する。

いろんな男女のイラストが並んである。

中でもおすすめの配信者欄に載っている金髪ロングヘアーの女の子のイラストに目を引かれた。

AKARIという名前の配信者だった。


俺は二次元に恋するオタクではないのでそのイラストに惚れ込んだということではない。

ただなんとなく「こいつらはどんな仕事してるんだろう」「これで飯食ってんのかな」と気になったのだ。


画面をタップして入室する、のボタンを押してみる。

するとアニメの声優さんかと思うようなカワボがスマホから流れてきた。


『見つけてくれてありがとー♪ 初見さんだよね! AKARIっていいます! よかったら仲良くしてね♪』


元気な声でそう挨拶され悪い気はしなかったが特にコメントはせずラジオ感覚で聴いている感じだった。

自分を含めて30人くらいの枠だったのでたくさんのコメントが行き交っている。

しばらくAKARIとリスナーとの他愛もない雑談を聞いてそれをBGMに求人を探したりしていた。

普段は声劇をメインに配信しているらしい。一人で何役も演じ分けているようだ。

自分が入室したときはちょうど枠の終わり際だったようでAKARIがさよならの合図をかける。


「今日の配信はここまで!また明日ねー♪」


自分も枠を閉じようとしたその時、とあるリスナーが投げ銭を送る。


「わー!!!ありがとー!!こんなおっきなアイテムくれて♪♪」


その額を見て俺は驚愕した。


『1万Happiness × 4』


俺は慌てて公式サイトに書かれてある換金率を見る。


『1Happiness=3円で購入可能』


1Happinessで3円だから12万円!?


もちろんそこから運営にいくらか引かれるのだろうから全額その配信者の元に入るわけではない。

だが、それだけの大金を払わせられる価値がこの子にあるというのか?


「プロの声優さんなんですか?」

それとなく聞いてみる。


「ううん、ただの一般人だよーw」

と返信が返ってきた。


「こんな楽な稼ぎ方ってあるのかよ!?」

思わず大声で叫んでしまい、通りがかりの人に不審な目で見られたがそこは気にならなかった。

実際にその仕事をしている人が聞いたらぶっ飛ばされてもおかしくない台詞だが今の俺にはとてつもなく魅力的な仕事に見えたのだ。

(ただスマホに向かって喋ってるだけで金がもらえるだと…最高じゃねえか!)


「俺もガッポガポ投げ銭させて稼ぎまくってやるぜ!」

大きな声で決意を叫びワクワクした気持ちで家に向かうのであった。

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