政治犯収容所
「シローはシスコンだな」
友人からは、よくそう言われてきた。
妹は、俺が12の時に生まれた。
妹が生まれて数年、父が亡くなり、家族は俺が養わなければならなくなった。
俺には兄が3人いたが、皆すでに亡くなっていた。
妹は生まれつき、体が弱かった。
すぐに軍に入ることを決めた。
手っ取り早く収入を得るには、軍に入るしかなかったのだ。
躊躇いはなかった。
母上と妹を養えるのは、俺しかいないのだ。
「にいに、にいに」と甘えてくる妹は、目に入れても痛くない存在だった。
派遣から帰ってくると、その妹がいなくなっていた。
軍の任務で他国に派遣されたのに、それが国が禁ずる他国との交流に該当するといい、母と妹を政治犯収容所に送ってしまった。
それが国のために戦ってきた兵士にすることなのか?
母と妹が送られたという政治犯収容所。
他国の廃退した文化の影響を受けた国民を矯正するための施設、それが政治犯収容所だ。
高い塀で周囲を囲まれ、中の様子はうかがい知れない。
夜、近くの雑木林から様子を窺っていると、近くの木の影から同じように収容所を見つめる男がいることに気が付いた。
戦鬼連隊の隊員ジュウベイだった。
「ジュウベイ、なぜ、ここに?」
「シローか? お主こそ、何だってここに?」
「俺の母と妹が入れられている・・・」
「何と・・・。お主もか?」
ジュウベイは妻と子が捕らえれれているそうである。
同じ戦鬼連隊の仲間が、同じ境遇になっている。
「国のために戦った我らに、なぜこんな仕打ちを・・・?」
「わからぬ・・・。ただ、この国の役人が腐っているのは間違いない」
「それで、どうする? やるのか?」
「無論。妻と子を助けるために、やるしかあるまい・・・。お主はどうする? 御母堂と妹を助けるためには、それしかなかろう」
収容所を警備するのは、共和国軍兵士だ。
家族を助けるために突入するには、戦闘は避けられない。
味方同士で戦うのは心苦しいが、家族を助けるためには是非もなし。
「ああ、そうだな。やるしかない」
俺は意を決して、柄を握った。
ジュウベイを踏み台に塀を飛び越えた。
どんなに塀が高かろうが、戦鬼連隊にかかればわけがない。
塀から中を見おろすと、敷地の中央には大きな穴が掘られていた。
敷地内に建物はない。
兵士の姿はない。
ほのかに漂う腐敗臭。
体に綱を巻きつけ塀の外に垂らす。
綱をつたって、ジュウベイが塀を越えてきた。
「なんだ、ここは? 本当に収容所なのか?」
ジュウベイの疑念は当然だった。
敷地の中には建物も人の気配もなく、あるのは中央の大穴のみ。
無言で大穴に近付く。
強くなる腐敗臭。
心の中で嫌な予感が膨れ上がる。
「くそぉ、なんだこれは?」
口元を隠しながら、ジュウベイが叫ぶ。
大穴には、裸の人間が山のように積み上げられていた。




