いきなりの死刑宣告
ブント共和国軍の一兵卒シローは、同盟国であるカイザー帝国に派遣され、エリック連邦との戦争に従軍する。激戦の中、シローを支えるのは、帝国から支払われる報酬だった。シローは、病で倒れた妹の薬代を稼ぐため金を必要としていたのだ。
戦場を生き抜き故郷に戻ってきたシローを待っていたのは、祖国である共和国の裏切りだった。
報酬は国に搾取され、既に妹は病で亡くなっていた。
祖国の裏切りにブチ切れたシローは、たった1人で祖国に戦いを挑む。やがて、一兵卒の戦いがうねりを生み、実質的な宗主国であった帝国を滅亡に向かわせていく。
「タイラノ シロー、外患誘致の罪で死刑とする!」
死刑宣告に、周りを取り囲む村人たちから悲鳴があがった。
引き立てられた村の広場で、俺はそう告げられた。
敬愛する大統領閣下の為に戦ってきた俺が、なぜ死刑に・・・?
腕を縛られ、両脇を役人に固められながら、俺はその場に跪かされた。
あまりの混乱で思考が追い付かない。
「お役人さま、なぜ、私が外患誘致の罪に問われるのでありますか?」
俺は必死に声をあげた。
「お前は無断で国外に赴き、他国の軍隊と交流を持った」
無断で外国に赴き・・・?
他国の軍隊と交流を持った・・・?
ブント共和国軍に属する俺が、同盟国であるカイザー帝国に派遣されたのは半年前。
エリック連邦と交戦する帝国軍を支援するのが任務だった。
もちろん、派遣されたのは、俺だけではない。
共和国軍最強と言われる「戦鬼連隊」500名が派遣されていた。
戦鬼連隊は、帝国軍の先鋒として連邦軍と激突。
多大な犠牲を払いながら、5つの砦、1つの城を陥落させ、帝国軍の勝利に貢献した。
講和条約が結ばれ戦争が終わった時には、戦鬼連隊の生き残りはたったの18人だった。
いかに激戦だったかを物語っている。
しかし、俺たちが派遣されたのは、敬愛する大統領閣下の命令であったはず・・・?
混乱する思考の中、閃光のように脳裏を過ぎるものが。
「お役人さま、私の家族は、家族はどうなりました?」
年老いた母と病弱な妹。
俺の最も大切な存在。
家計を支え妹の薬代を得るため、俺は軍に入った。
「そんなの決まっているであろう? お前が国を出てすぐ、政治犯収容所に送られたわ」
共和国では、政府の許可なく他国に行くことを禁じられている。
他国の廃退した文化が流入するのを防ぐためだ。
ブント共和国は、国民皆が敬愛するミゲル大統領閣下が統治する理想郷だ。
国の富を等しく国民に分配する、貧困のない社会。
裕福でなくても、国民皆が幸せな国。
それがブント共和国なのだ。
まれに他国の乱れた文化を持ち込もうとする不貞の輩がいる。
その者たちを矯正するのが政治犯収容所である。
「たしかに私は他国に赴きましたが、家族には何の罪もありません!」
俺は必死に訴えた。
「ほれ、やはり他国に行っておったか。自ら自白しおったわ」
役人はほくそ笑む。
「他国に赴いたのも、お国のため。敬愛する大統領閣下のご命令に従ってのことでございます!」
その瞬間、役人の表情が一変した。
「貴様、大統領閣下に罪をかぶせようとするか!?」
「いえ、滅相もございません」
「大統領閣下を愚弄する貴様の言動、万死に値する!首を垂れい、打ち首にしてくれる!」
両脇から肩を押され、額が地面に押し付けられた。
ああ、俺は死ぬのか・・・。
なんということだ。
一兵士として、敬愛する大統領閣下のため、全力を尽くしてきたつもりだったが、この命、ここまでか・・・。
額を地面に埋もれさせながら、俺は最後の質問を口にした。
「母と妹は・・・、健やかにしておりますでしょうか? 収容所をいつ出られましょうか?」
頭の上で、嘲笑うかのような声がした。
「健やかであるわけがなかろう。バカか、お前は? 収容所は過酷だ。お前の家族は死んでいるに違いない」
母と妹が死んだ・・・?
その瞬間、俺の中で、何かが切れた・・・。




