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第一話 "究導学園都市"

「はぁ……大分と気が重い。」


 バスに揺られ乗り物酔いではない吐き気を抱きつつ気晴らしに外の景色を眺める。

 深く息をつく、胸の奥に妙に重い感覚が沈み込むのを感じた。

背景に佇みそびえるのは、仰々しい巨大な学校の門。



そこは――究導学園、俺が本日受験する学校だった。



 石造りの巨大なアーチは、幾何学的に複雑な構造を描き、上部の文字列がわずかに光を反射している。光の角度によって、まるで文字そのものが生きているかのように揺らめいていた。

 門の両脇には守護像が立ち、微細な光を放つ瞳で訪問者を見つめているように思える。


「……なんでこんなことになったんだろうな」


 俺の名前は『基山きやま たすく』、ほんの少し異能がある程度の一般人である。

 かと言って別に何も珍しくはない『第十界』程度の異能力、希少性で言えば数百人に一人程度の確率で発現する少し珍しい程度の能力である。

 そんな俺がなぜだろうか……。


「……本当になんでなんだよ……。」


 門をくぐると、塔のようにそびえる校舎群が視界に広がる。空中に浮かぶ通路が交差し、下層の研究施設や居住区が半透明の床越しに見える。

 建物だけでなく、都市そのものが学園として設計されているのだ。


「ふぅ……しかし、改めてすげぇ場所だなここ……。」


 この都市――【究導学園都市】は、太平洋のほぼ中央、ハワイ諸島の南東、東京からおよそ7,800km沖に空中150mに浮かぶ、空中浮遊都市。陸路は完全とは断絶され、空路も海路も著しく制限された空の孤島である。面積はおよそ3,800万平方メートル、約一県ほどの規模。

 究導学園都市とは異能力特化の超エリート教育学校にして世界の0.001%の上澄みが住まう異能特区。

 外界とは完全に隔絶された、世界の国家や国際機関が異能教育特区として承認している

 ここに足を踏み入れた者は、世界の個人ではなく、学園都市の中で生きる者として独立して数えられることとなる。

 つまりは世界の治外法権の世界。法も価値もここは世界の一般的なものとは完全に異なる。


「全力でやっても……受かるわけねぇだろうに……」


 俺は実を言うと最初からこんなめんどくさい学校に入る気も実力もさらさらなかった。


「何事も普通が一番なんだよな……」


 なんて考えているうちに30分しないぐらいでバスは学園都市中心部の“第一試験場”に到着した。

目の前に広がる巨大荘厳な施設は、透明なドーム越しに空間いっぱいにそびえ立っていた。空中通路が立体的に交差し、光学装置が微かに光を放つ。床は半透明で、下層の設備や人の動きがぼんやりと見える。都市全体が試験のために設計された舞台のようだった。


 そこの高台にどう見ても近しい歳としか思えない少女が立っていた。

 少女が静かに手を上げると、その凛々しい佇まいと不思議なプレッシャーにより全員の視線が吸い寄せられた。


 すると、透明感のある声が会場に響き渡った。


「──皆様、本日はようこそお越しくださいました。私はこの第一試験を監督いたします、究導学園二年生徒会委員長のホーネット・リ・アストネインでございます」


 その声は落ち着き澄んでおり、上品で丁寧。

 容姿は絶世の美少女と言っていいほど整った顔立ち、均整の取れた体、淡い白銀の髪は風に流れるように束ねられ、瞳は氷のように澄んだ青。

 立ち姿、仕草、どれも完璧で、空間に自然に広がり、会場全体を包み込んだ。不思議と広がる圧迫とその威厳と洗練された存在感で、周囲の受験者たちは無意識に背筋を伸ばしていた。


──試験官って大人がやるんじゃないのか……。


 ホーネットが手を軽く動かすと光が微かに反応し、会場全体が試験の舞台へと変化した。

 俺の視界に映る受験者たちは、微妙に緊張を帯びた姿勢で、周囲の光や構造に目を配っている。だが、俺自身は動じることなく、淡々と周囲の光景を確認していた。


「この試験は、皆様ご自身の才能と限界を確認する場でございます。各自、全力で挑んでください。是非とも試験に合格し同じ学舎で切磋琢磨し合えることを……期待しております。」


 ゾワっと会場受験生全員の背筋が凍る。

 言葉は簡潔で上品だが、全身から醸し出される雰囲気は、周囲の受験者たちに自然と緊張を与えた。


「はぁ……。」


 深くため息を吐く。ホーネット・リ・アストネインの存在感が空間を支配する中、第一試験──ここで俺は、憂鬱ながら試験に挑むこととなった。

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― 新着の感想 ―
≫ハワイ諸島の南東、東京からおよそ7,800km沖に人工埋め立てで作られた孤島である。 水深何mか判りませんが、流石に太平洋上に「埋め立て」は無理でしょ。 しかも60km四方って。
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