おばあさんとまゆの六月の星の冠
むかしむかし、小さな村のはずれに、おばあさんと孫のまゆちゃんが住んでいました。
まゆちゃんは小学校二年生で、好奇心いっぱいの女の子。
おばあさんは優しくて、自然や昔話の知恵をたくさん持っていました。
六月の薄暮、雲間から星々が瞬く夕べ、おばあさんがまゆちゃんを呼びました。
「まゆ、今日は特別な夜だよ。六月の星の冠を編みに行くんだ」
まゆちゃんは目を輝かせ、「星の冠? 星を頭にのせるの?」と尋ねました。
おばあさんは神秘的に微笑み、「六月の風には、星々のささやきを紡ぐ魔法があるの。湖のほとりへ行こう」と答え、腰に下げた小さな布袋を手に持つ仕草を見せました。
「この中には、昔私が星の夜に集めた宝物が入ってるよ」と付け加えました。
二人はランタンを手に、村の外れの静かな湖へと向かいました。
六月のそよ風が水面を揺らし、星の光が鏡のように映っていました。
おばあさんはまゆちゃんに、星の冠に必要なものを囁きました。
「まず、月見草。夜にそっと開く花。これは『願い』の光」
まゆちゃんは湖畔の月見草を見つけ、淡い花びらがほのかに光るのを見て驚きました。
「これ、ほんとに星みたい!」とそっと手に取りました。
次に、おばあさんが湖畔の草むらを指さすと、蛍がふわりと舞い上がりました。
「これは『導き』の輝き。迷ったとき、進むべき道を教えてくれる」とおばあさん。
おばあさんは布袋から小さな透明な水晶を取り出し、「この水晶は、昔、蛍の光を浴びて輝くようになったの。まゆ、蛍のそばでこの水晶をかざしてみて」と言いました。
まゆちゃんが水晶を掲げると、蛍の光が水晶の中でキラキラと踊りました。
まゆちゃんは目を丸くして、「友達とケンカしちゃった…この光で仲直りできるかな?」とつぶやきました。
おばあさんは優しく、「まゆの心があれば、きっと大丈夫よ」と髪を撫でました。
最後に、二人は湖の水面に映る星々のきらめきを見ました。
「これは『無限』の欠片。どんな夢も、星のように果てしなく広がるの」とおばあさん。
おばあさんは布袋から細い銀の糸を取り出し、「この糸は、星の光を受けて輝くように編まれたもの。湖の星を映してごらん」と言いました。
まゆちゃんが糸を水面に近づけると、星の光が糸に絡みつき、銀色に輝きました。
まゆちゃんは興奮して、「絵本作家になって、みんなを星の世界に連れてく!」と叫びました。
星々が水面でキラリと応えるように瞬きました。
家に帰ると、二人は集めたもので星の冠を編みました。
月見草の花びら、蛍の光が宿る水晶、星の欠片を映した銀の糸が、夜空のように輝いていました。
冠はまるで湖の星々がそのまま形になったようでした。
おばあさんは冠をまゆちゃんの頭にそっと置き、「この星の冠は、まゆの心の宝物。願いと導きと無限を、いつも胸に抱いて」と囁きました。
その夜、まゆちゃんは冠を枕元に置いて眠りました。
夢の中で、月見草が銀河に咲き、蛍の光が道を織り、星々が歌うように響き合いました。
まゆちゃんは星の海を漂い、心が無限に広がるのを感じました。
朝、目を覚ましたまゆちゃんは、心が光で満ちていました。
それから、友達と素直に話し合って笑顔を取り戻し、絵本に星の物語を書き加えました。
おばあさんはそんなまゆちゃんを見て、星のような微笑みを浮かべました。
六月の星の冠は、まゆちゃんの心に、永遠に魔法をかけ続けたのでした。
おしまい。