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98.録音してループ再生したい

 平日・夜



 今日も仕事頑張った。しかも明日は念願のお休み。これは一杯しても怒られない。飲むぞー。冷蔵庫を開ける。お酒ストックなし。そういえば前にヤケ酒したの忘れてました。いつもは1日1缶って決めてるからなくて当たり前だ。これなら帰りにコンビニでも寄るべきでした。仕方ない、牛乳でも温めて飲もう。


 部屋に戻ると何やらスマホが鳴っています。フユユさんかな? 手に取ると相手はまさかのミネ。通話に出ます。


「こんばんは」


「こんばんはって姉さんまだ他人行儀なの?」


 う。だって仲直りしたとはいえまだ挨拶とかどうしていいか分からないし。


「通話なんて珍しいですね」


「待ってても姉さんかけてくれないし」


「あなただって今までそうだったじゃないですか」


「今回は私がかけたから次は姉さんの番」


 こんな軽口を叩き合ったのも久しぶりです。もう以前のような重りはなく自然と言葉が零れます。


「それで何か用ですか」


「姉さんって明日暇?」


「ミネ。用件を伝える前にそれを言うのは禁じ手ですよ」


「よし、暇なんだね。じゃあ攻略手伝ってよ。実は詰まってる所あって1人だと困ってるんだ」


 そしてまるで話を聞かずに勝手に話を進める。こういう強引にゲームを誘うのは昔から変わってませんね。


「あなたが苦戦するって珍しいですね」


「久しぶりに姉さんと遊びたくなっただけ。フユユも誘って一緒にしようよ」


 そんな風に言われたら断れませんね。私もしたかったから。


「分かりましたよ。明日は休みですから付き合います。フユユさんにもそう伝えます」


「さっすが姉さん。話が早くてできる女」


「はいはい。用はそれだけですね?」


「うん、それだけ。じゃお休み」


「お休みなさい」


 他愛のないただの会話だった。なのにそれが嬉しくて胸の奥が温かくなります。ずっとこういう何気ない会話をしたいって思ってたから。飲んでるのが牛乳でよかった。お酒だったらまた泣いてしまう所でした。


 少ししてまたスマホが鳴ります。ミネが何か忘れてたのでしょうか。


 スマホを見ると相手はフユユさんになってます。しかもなぜか通話履歴がいくつも並んでます。出ました。


「やっと繋がった」


 妙に黒い声に感じますが気のせいでしょうか。


「まだ遅くないのに電話なんて珍しいですね。ゲームしてないのですか?」


「そんなことより私の質問に答えて。誰と電話してたの? 男? 女?」


 タイミング悪かっただけなのにこの対応はいくらなんでも理不尽です。

 さっさと誤解を解いておきましょう。


「ミネから通話が来たものですから。明日攻略を手伝って欲しいそうで、それでフユユさんにも協力して欲しいそうです」


「いいよ。でも大丈夫かな」


「何がです? フユユさんは実力もありますし足を引っ張るなんてないと思いますが。それにミネはフユユさんに偏見を持ちませんよ。寧ろ仲良くしたいのではないでしょうか」


「ううん。ミネさんの前だとミゥとイチャイチャできないから我慢できるかなーって」


 そっちかー。言わんとすることは少し分かってしまいますが。いや、分かってどうするんですか。私は一体何を考えて……。


「攻略だけ、と言ってたのでそう長くはないと思います」


「キスできないし、ハグも控えないとだし、攻略よりも難しいかも……」


 そう言われると私も自信なくなってきました……。これは壮絶な縛りプレイになりそうです。


「それで、さっきの通話相手は誰?」


「ミネと言ったはずですが」


「それだけの内容であんなに時間かかるはずない。違う人だ」


 また愛が重いフユユさんモードが。軽くなったと思ったら重くなる。この子の感情は宇宙規模です。仕方ないので通話履歴をスクショして送ります。


「証拠提出。納得しましたか?」


「ミゥはそんな人じゃないって知ってたよ。ただの確認だからね」


 そしてこのありさまです。今更なので問い詰めませんけど。


「それでゲームせずに何をしてたんですか?」


「いつもの勉強。やる気なくなってミゥの声が聞きたくなっただけ」


 今日も仕事中に勉強していたので思った以上に頑張っているようですね。


「偉いですね。でも無理はしないでください」


「うん。ミゥの声を聞いたらやる気でてきた。ねぇ、このままASMRしてくれない? それなら集中できそう」


 なんと無理難題な。私はそういうの詳しくないのですけれど。


「がんばれ、がんばれ」


 ちょっと小声で囁いてみます。

 するとペンをカリカリ走らせる音がしました。この子の脳内構造は時々羨ましくなる。

 でもこれくらいでやる気になるなら私も手伝ってあげましょう。


「フユユお姉ちゃん、がんばって」


 すると今度は頭をぶつける音が。難問に直面しましたか。


「それは反則」


「やる気でると思ったので」


「というか前に私を妹にしようとしてたし、ミゥってやっぱりシスコン趣味あるよね。ミネさん見て合点がいった」


「な、なにを言うんですか。そんな趣味はありません」


「動揺しすぎー。私はシスコンなミゥでも愛すから安心して?」


 もはや何て返答すればいいのやら。恋人になって対等になれたと思ってもまだまだこの子には振り回されそうです。

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