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87.何かと戦ってるのだけ見える

 ※ガールズオンライン・夜22時※



 平日の夜中、この世界にやってきた。明日は休日なのでどの道ログインするでしょうけれど。


 広場を見渡すもあの子の姿はない。さすがにこの時間はログアウトしてるでしょうか。それを狙って遅めに来たのですが。


 きっと明日、フユユさんは攻略を開始するでしょう。ディープシーへ行くかは分かりませんが、ここから先のエリアはどこも難しく1つの油断が命取りとなります。ゲームに慣れてるフユユさんはともかく、私はどうでしょうか。絶対足手まといになります。


 デバッグモードがあるとはいえ、そんな力には頼りたくない。私の力であの子の隣に立っていたい。なので、こっそり秘密の特訓をしましょうか。


 場所は……ジュラシックにしましょう。



 ※ジュラシックワールド・部落の村※



 化石時代のような古い部落へとやってきました。プレイヤーは当然の如く誰もいません。現状ジュラシックまで解放してるプレイヤーはそこそこいるけれど、ジュラシックを攻略したプレイヤーは極僅かでしょう。下手したらフユユさんとナツキさんしかいないかもしれない。


 きっとそこまでやり込みたいって思う人が少ないんでしょうね。私だってそうだった。子供の頃はそれなりにプレイしていたけれど歳を重ねるうちにその熱が冷めていってしまった。でも今はほんの少しだけ、灯火が点いたようなそんな気がします。


 ゲームなんて好きでもなんでもないけれど、少しだけ頑張ってもいいと思えるようになった。この熱が冷めないようにそっと胸にしまっておこう。


 とりあえず、出発。荒地エリアを進んだ先にヴェロキラプトルの群れがいます。以前はフユユさんがいたので難なく越えられましたが私だけならどうでしょうか。当然テイムモンスターも連れてません。でも1人で越えられるくらいにならないときっと足を引っ張るだけ。


 モンスターと目が合った。全員走ってくる。さぁ、修行の時間です。



 ※1時間経過※



 部落から荒地エリアへと歩いていきます。何度死んだか分からない。数える必要もない。大事なのは強くなったか。


 荒地エリアに来る。歩いた先にヴェロキラプトルがいなかった。おかしいな。と思ったが突如、咆哮が響いた。視線の先にはダンジョンボスのティラノサウルス。どうやらここまで徘徊してきたようです。丁度いい。腕試しだ。


 ティラノサウルスと目が合った。開戦。


 相変わらず俊敏な動き。しかも1人なので注意を分散させることもできない。完全にハードモード。フユユさんが好きそうですね。別に勝てなくてもいい。とにかく己の鈍った体を少しでも早くする。


 ティラノの動きは早く、回避もぎりぎり。マジックアロー1発撃てたらいいほう。スキルを使えば多少マシになるけど、第二形態を考えたらここで使うのは愚策。回復するタイミングもきっとない。集中しろ、相手の一挙手一投足を見逃すな。



 どれくらい時間が過ぎただろうか。自分でも驚くくらい落ち着いてる。けれどティラノのHPは全然減っていない。マジックアローしか使ってないので当然か。

 ティラノが回転した。くっ、回避できなくて尻尾が腹に……。


 手痛いダメージ。次受けたら終わり。回復したいけどそんな時間をくれるほど優しいボスじゃない。相手は即座に飛びかかってきた。ステップを踏んで避ける。


 落ち着こう。フユユさんのアドバイスを思い出す。下手に攻撃せず回避に徹する。必ず隙があるから、そこでポーションを飲む。


 でも理想を語るは簡単。現実はティラノの攻撃が激しく難しい。ここら辺が潮時かな。半分も削れないなんて我ながら情けない。まぁ、いい修行にはなりました。


 ……?


 急にメニュー画面が勝手に開きます。


『フユユからパーティ申請が届きました』


 驚いた。が、考えてる暇はなさそう。素早く許可を押した。

 するとプテラノドンに掴まって、宝石獣を抱えてるその子が飛んで来ました。


「夜更かししてゲームって悪い大人だね」


「あなたに言われたくありませんよ」


 目も合わせなかったけれど、自然と笑みが零れた。心強い助っ人の登場です。ティラノの注意は彼女やテイムモンスターへと移る。今の内にポーションを……。いや違う。下手に回復すると私が狙われる。だから。


「フユユさん、回復お願いします。攻撃を続けます」


「……随分、練習してたんだね。その辺は任せて」


『ヒール』を受け取って、それでティラノの注意はフユユさんへと。でも彼女ならきっと対処する。惑星魔法を放て__



 ※協力して撃破※



 ティラノを倒して荒地エリアは静寂へと変わり、残された彼女と静かに手を叩きました。


「ミゥがこんな時間にゲームしてるなんて珍しいね。言ってくれたら付き合ったのに」


「それでは意味がないんですよ。あなたに置いていかれないように、強くなりたいんです」


 結局、助けてもらったのでこんな言葉に何の意味もありませんけれど。でも、フユユさんは静かに微笑んでいました。


「ミゥはもう十分強いよ。その気持ちだけで私はTKG10杯はいける」


「それは食べすぎです」


 私達は笑った。他愛なく、気遣う必要もない。でも今日はほんの少し前に進めた気がします。


「しかしフユユさんもログインしてたのですね」


 いつもは広場にいたのでログアウトしてると思っていました。

 するとフユユさんはメニュー画面から地図を広げます。


「うん。実は仕事終わってから隠しエリア探してたんだ。いくつか見つけたよ」


 本当、仕事が早すぎですよ。やはりゲームでは敵いませんね。


「ミゥはもうログアウトするの?」


「そのつもりでしたが、その気がなくなりましたね」


「夜更かしいけないって言ったのミゥなのに」


「私は悪い大人なんです。拒否権はありませんよ」


「もちろん。じゃあ行こ」


 1人で歩いた荒地もあなたが隣にいると少し安心できた。きっとあなたは知らないのでしょう。私がここまでゲームに熱くなったのって、実は初めてなんですよ。いつか、言えたらいいな。

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